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028~VS希少個体『銀狼』4

 本日5話目の投稿です。

 読み飛ばしにご注意ください。

 大体15分が経過したので戦闘を行いつつも第3魔法スロットへ魔力を流し、3度目の『アクセル』の使用準備を完了させる。

 以前ならば30分は継続して効力を発揮していたが、堕神後の変化があった今は20分しか継続しないかもしれない。しかし、自己強化魔法を僅かでも途切れさせたら敗北に繋がる今の状況で継続限界時間を確認することはできず、さらに長時間の戦闘を考えるなら間隔の短い上書きで魔力を無駄に消費することはできない。

 なので子供の頃に初めて成功した際の継続時間である20分から余裕をみた15分で上書きする。さすがに今の能力が子供の頃よりも低いとは思えないし、銀狼との戦闘からその程度は維持できなければ勝ち目はないと考えての時間。

 

「アクセル!」

 

 そして魔力を流し終えた今、2度目に魔力を流した際に感じた違和感の正体が見えてきた。

 戦闘中にあまり余計なことを考えるべきではないが、これは次に繋がるもの。勝利に繋がる可能性を秘めた内容。

 1度目に魔力を流した際は魔力を操作しても、その多くが零れてしまった。

 2度目に魔力を流した際は同じように魔力を操作したのに、零れてしまった量が激減した。

 そして今、3度目に魔力を流した際は同じように魔力を操作したのに、まったく零れていない。

 この短時間で私の魔力操作能力が大幅に上昇したのなら嬉しいけど、操作した感覚から違うと分かるの。それなら思いつく理由は1つであり、それは諦めたと思っていた私が心の奥底で望み続けていた出来事。アリスが引き上げてくれた願い。

 それは魔力回路の修復。

 この短時間に私の身体に何が起こったのかは分からない。もしかしたらスキルが発現したのかもしれない。でも、今の私が知りたいのは理由じゃない。

 

「ヒール!」

 

 銀狼の体当たりをギリギリで避け、今回は反撃を行わずに第2スロットへ魔力を流しつつキーワードを唱える。

 それはすぐに応えられ、胸に当てた手から放たれた癒しの力が身体を包み込み、顔の痛みを治めた。おそらく全身の小さな傷も治ったはず。

 痛みが治まった身体で銀狼の飛びかかりを避けつつ掠るように剣を合わせるが、銀狼に致命打は与えられない。僅かなダメージすらも与えられていないように思える。

 でも、既に道は見えている。

 第2スロットへ魔力を流した際、私は魔力を"操作していない"。それでも、一滴すら零れずに魔力は第2スロットへ流れ込み、ヒールは問題なく発動した。

 確認のために問題なく発動したことが確認できていたヒールを使ったけど、これで確信できた。

 そう、私の魔法回路は修復されている。

 そして、それならば第1スロットに書き込まれた魔法を使用できる。それは多くの魔力が零れるような最初の状態では1度の発動すら期待できなかった魔法であり、本来ランク1の状態では使用許可が得られない魔法。

 雷属性支援系統付与魔法ライトニング・クラッド。

 上位属性である雷属性に分類される付与魔法であり、自らに"雷の力"を纏わせるもの。その効力は素早さおよび反応速度の大幅な向上に加えて、魔力をうまく操作することによって接触点から魔力爆発を起こすことが可能となる。さらにその状態で装備に魔力を纏わせれば魔力装備ではない普通の装備ですらも同じ力を付与できる。

 

「ライトニング・クラッド!」

 

 第1魔法スロットに魔力を注ぎ終え、銀狼の攻撃を避けたところでキーワードを唱える。魔力回路が消失する前に書き込んだ魔法であり、もしかしたらうまく発動しないかもしれない。それどころか魔法式の欠損により暴発し、私が戦闘不能に陥ってしまえばアリスが危ない。

 それでも、このままの状態が続けば結果は同じなの。

 それなら私は、アリスを助けられる可能性がある方を選びたい。たとえ私の魔法回路が再び壊れてしまう可能性があるとしても。

 震えぬ身体に応えるのは第1魔法スロットから放たれた強き力。私の身体を包み込んだそれは、まるで進もうとする私の背中を後押しするように感じられる。

 跳びかかってきた銀狼が目の前に着地し、私の僅か横に向けて跳ぼうとしている様子がはっきりと見えたので反対側へ僅かに避け、雷を纏った剣を銀狼に接触する位置へと移動させる。

 斬りつける必要はない。接触さえすればいい。

 掠る程度の位置に移動した剣が銀狼に接触しようとした瞬間、魔力を操作して接触点で魔力爆発を起こさせる。

 その白き衝撃は銀狼"だけ"を強烈に襲い銀狼を大きく吹き飛ばしたが、今の私には見えている。銀狼は剣が接触する直前に身体を捩り、魔力爆発の直撃に避けていた。爆発の方向性を操作して対象を絞り、魔力の消費を抑えつつも威力を向上させる技術だったのだけど、うまく当てられないければ効果は激減ね。

 でも、これで銀狼が緊急回避を行うほどの攻撃であると証明された。直撃さえすれば銀狼に致命打まではいかなくても、確実に大きなダメージを与えられる。

 さて、ここからは時間との勝負。この魔法は強力だけど、魔力の消費も多いからステータスの低い今の私では魔力回復薬を使用してもあと2回程度しか使用できないと思う。それまでに倒せなければ私は銀狼を足止めする手段すら失い、アリスを救えない。

 大丈夫、今の私ならきっと倒せる。

 だって、そうしなければアリスを救えないのだから。

 吹き飛んで木に衝突した銀狼は地面に落下せず、木の側面を足場に跳びかかって来ようとしているのが見える。すぐに吹き飛ばした方向へ移動していたのだけど、下で待ち構えるのは無理なようね。それなら、迎え撃ちましょう。

 さあ、私の全力を見せてあげるわ。

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