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026~VS希少個体『銀狼』2

 本日3話目の投稿です。

 読み飛ばしにご注意ください。

**********

 

 

 

 銀狼と少女は何度も交差するが、どちらの武器も相手に傷を与えることはできずに互いを見送る。

 地面だけでなく木々も足場に、その牙や爪をアイリスに届かせようとする銀狼は戦闘開始時にエルピスに迫り攻撃を行った時とは段違いに速く、早い。

 アイリスとすれ違った銀狼は身を翻し、前方に存在していた木を足場に再びアイリスへと跳びかかる。まるで速度に任せて、アイリスが今いる位置を狙っているかのように。

 対するアイリスも地面だけでなく木々、そして時には枝まで利用して銀狼の攻撃を避け、反撃も試みているが、銀狼と比べて遥かに遅いアイリスの攻撃が当たることはなかった。

 銀狼とすれ違ったアイリスは地面へ着地し、僅かに横に動きつつも左手を伸ばして槍を水平に構えながら銀狼が跳び去った方向を振り向く。

 再び交差する銀狼と少女。

 直前までアイリスがいた位置を銀狼が通過する瞬間に、アイリスが持つ槍の先端が銀狼の後頭部を掠る。体勢を崩すことも、大きなダメージとなることもないその一撃。しかし、銀狼とアイリスが戦闘を開始してから初めて発生したダメージ。

 

「あなたはこの程度?」

 

 振り向く勢いそのままに1回転したアイリスは地面を滑りながらも、アイリスへ正面を向けた銀狼へ問いかける。

 その言葉を理解しているのか、銀狼はアイリスに向かって大きく吠えた。耳をつんざく轟音にアイリスは手に持つ槍を離し、耳を塞ぐ。

 その瞬間を好機と捉えたのか銀狼はすぐにアイリスへと飛びかるが、地面に身体を擦り付けるように足から前方に飛びだしたアイリスは、すれ違う銀狼の腹を両足で蹴り上げた。

 蹴り上げられたことで僅かに押し上げられた銀狼を待ち構えるのは、地面ではなく木。蹴り上げられた際に軌道が僅かに横に逸らされ、木が無かったはずの軌道上に木が差し込まれた。それも数回前に交差した時にアイリスが軌道修正で折った枝がちょうど刺さる位置に存在している。

 蹴り上げられて僅かに速度が落ちたとはいっても、この速度で刺さってしまえば大きなダメージになると判断したのか銀狼は身を捩り何とか折れた枝を避けたが、さきほどまでの綺麗な着地はできず、その身体を木に打ちつけた。

 木を伝い下に落ちた銀狼に迫るのは、槍を構えて跳びかかるアイリス。

 銀狼は立ち上がろうとしたのか僅かに足を動かすが、さきほどのダメージからか動きが鈍い。立ち上がることを諦めたのかすぐに足の動きは止まり、アイリスに視線を注いだ状態で待ち構えるだけの銀狼。

 アイリスを見つめるその瞳からは諦めは感じられない。

 待ち構える銀狼にアイリスが構える槍の先端が届き、そのまま突き刺さることなく動きを止めた。

 槍の先端を捉えるのは銀狼の屈強な牙であり、顎。銀狼はアイリスの勢いを乗せた攻撃を、体勢を崩した状態で受け止めて見せた。

 槍が止まった直後、アイリスは槍の柄先に足を乗せて思い切り踏みしめ、後ろへ跳んで銀狼から離れる。予備の短剣を抜き放ったアイリスと警戒した様子を見せながらも立ち上がり、口に咥えた槍を捨てつつ体勢を整えた銀狼。

 アイリスが銀狼に向かって緩やかに駆け始める。歩くよりは速く、全力には程遠いその速度に銀狼は飛び退り距離を取るが、アイリスは同じ速度で銀狼へと歩を進める。

 途中でアイリスが槍を拾うが、銀狼は警戒しているのか一定の距離を保ちつつ近づくことはない。

 拾った槍を左手に、短剣を右手に持ったアイリスは先ほどよりも僅かに速く駆け始め、その様子を観察している銀狼は距離を保つことをやめたのか、その場に留まっている。

 アイリスと銀狼の距離が近づき、あと少しで槍の攻撃範囲となりそうなところでアイリスは前進をやめて流れるように身体を1回転し、槍を投げ放つが銀狼は前進して槍を前足で踏みつけ、地面に縫い付けた。

 槍を投げたアイリスは左手に短剣を持ち替えつつ再び前進し、槍を踏みつけた銀狼と距離を詰めるがあと2歩で短剣の攻撃範囲であり、銀狼の爪や牙が届く位置まで近づいたところで僅かに後ろへ跳ぶ。

 僅かに腕を持ち上げていた銀狼はその動作をやめて再び地に足をつけるが、次の瞬間には銀狼の目の前にアイリスが存在していた。

 緩い移動からの僅かな後退、そして直後に全力で跳びかかる。アイリスの動作に警戒しすぎていた様子の銀狼は顔を逸してアイリスの左手による攻撃を避けるが、その手には持っていたはずの短剣が握られていない。

 即座に後方へ跳ぼうとした銀狼の目前では上空から落下してきた短剣がアイリスの後方へ落下していた。

 後方へ跳んだ銀狼の前方では魔力を纏った短剣が直前まで銀狼がいた位置を通り過ぎる。

 そして、着地した銀狼の足には槍が僅かに刺さる。貫通どころか深く刺さってすらおらず、浅く刺さっただけの槍。それは銀狼が踏みつけていた槍であり、アイリスが右手で掴んだ短剣で斬りつけつつも、一歩前進して蹴り放っていた槍。

 槍を蹴り放ったアイリスはその足で地面を強く踏みしめ、続く一歩で銀狼との距離を一気に詰める。

 足に刺さった槍に注意を引かれたのか行動が遅れた銀狼はアイリスの接近を許し、その手に持つ短剣が牙を通過した。

 宙に浮かぶ牙が落下を始める頃、アイリスの回し蹴りが銀狼に迫る。しかし、斬られる直前に避けられないと悟ったのか銀狼は地面を踏みしており、回し蹴りを受けつつもアイリスへ体当たりを行った。

 その瞬間、まるで急に力が抜けたようにアイリスの足から勢いが消え、アイリスが僅かに微笑んだ。それは遠目では見え難い僅かな微笑みであり、少し離れた場所で1人と1体の様子を見ていた少女に気づいた様子はなかった。

 

 

 

**********

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