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024~静かに煌めくは星空のカーテン~

本日1話目の投稿です。

読み飛ばしにご注意ください。

 5階層で戦い始めてから3日が経過したけど、まだウルフリーダーとは戦えていない。アリスと出逢う前も1周間に一度戦えれば良い方だったので運が悪いとは思わない。それに挑む前に魔法に関して色々と試せるので焦る必要がないことは分かっているの。

 それでも、アリスの冷蔵箱に蜂蜜は貯まっていく。

 ウルフリーダーと出会えないわけではないのだけど、出会えたとしても他のパーティが戦っている。ボス級は稀に良いアイテムをドロップするから既に倒せるパーティでも狙うことは多く、ゲートの近くに出現するボス級は上層階に移動するパーティがついでに倒すことも多い。

 その点メイプル・ビークイーンはゲートを結ぶ最短距離には存在しない森だけに出現し、森自体もホークが出現するので好んで移動ルートに選ぶことは少ない。そのためメイプル・ビークイーンは戦う機会がとても多くなるのよね。

 それにビー系の魔物は毒が厄介であり、気づかれる前に魔法で大打撃を与えなければ強敵となる。その上アイテムのドロップが少ない傾向にあるから人気は無い。

 私とアリスは夜でなければホークやビーの相手でも問題無いから、人が多い草原ではなく森でウルフリーダーを探しているのだけど、結果は貯まっていく蜂蜜が示してくれているわね。まあ、美味しいからいいのだけど。

 

「それじゃあエルピス、明日からはゲートから少し離れた場所で探してみよう」

 

 そんな現状なので、夕食ついでにアリスの部屋で明日からの予定を再検討した。

 アリスが目的としていた"私の魔法が使えない理由を確定させること"は既に達成され、私がこの宿を訪れる理由は無いのだけど、アリスと一緒にティアさんのご飯を食べられるから最近はダンジョン帰りに毎日通っている。

 だって、1人よりも2人で食べたほうが美味しいもの。

 

「ええ、そうしましょう。そうなると、冒険魔法はお願いしてもいいかしら?」

 

「うん」

 

 冒険を継続するために必要な要素が詰め込まれた生命属性回復系統魔法――冒険魔法。風邪や毒などは治癒できないけど、急な腹痛も身体の汚れもこれ1つで解決するすぐれもの。

 ダンジョンが出現する以前でも長距離を移動する際はパーティメンバーの内1人は書き込んでいた魔法であり、魔法スロットが2つ以上ある人が担当することが多かったわね。

 この魔法が使えない私は往復で2日以上かかる可能性のある場所は避けていたのだけど、アリスとパーティを組んでいる今なら問題ない。

 

「それじゃあ明日の朝、迎えに来るわね」

 

「うん。明日しっかりと準備しておいてね」

 

 数日とはいえダンジョン内で過ごすのだから準備は大切よね。そういえば、ダンジョンではないけど魔物の奇襲で食料を燃やされた時は現地調達をしたわね。気をつけましょう。

 

「ええ。おやすみなさい、アリス」

 

「おやすみ、エルピス」

 

 手を振るアリスに手を振り返し、部屋から出て自分の宿へと向かう。

 宿への道中でふと空を見上げてみると、そこでは星が煌めき明日が晴れだと予感させてくれた。まあ、ダンジョン内と外では天気が違うのでアリスを迎えに来る移動の時だけしか影響しないのだけど。

 さて、宿に戻ったら無理がないように色々と試してみましょう。

 

 

 

 5階層の<<ゲート>>から離れた安全地帯に到着した頃には空が赤く染まっており、今日中に街に戻ることが難しいことを示していた。でも、今日は街に帰らないことを前提に移動しているので問題はない

 冒険魔法が使えない私が初めて訪れた、いつもと違う安全地帯は<<ゲート>>から遠いこともあり、他に人はいない。

 

「エルピス、日が落ちるまでに移動できてよかったね」

 

「ええ。それじゃあ、日が落ちるまで近くを探してみましょう」

 

「うん」

 

 移動を優先すればお昼までには到着できていたと思うけど、あくまで目的はウルフリーダーを見つけて倒すことであり移動ではない。

 それでも移動ルートには人が少ない森を優先して魔物を倒しつつ陽が落ちるまでに到着できたのだから上出来ね。

 さて、夜まで頑張って探しましょうか。滞在予定は3日だから焦る必要はないけど、早く見つかるに越したことはないもの。

 

 

 

 完全に陽が落ちて月が微笑む中、携帯食料でお腹を満たす。

 近くの草原や森には多くの魔物がいたのだけど、結局ウルフリーダーは見つからなかった。蜂蜜は少しだけ溜まったのだけどね。

 

「アリス、夜は交代で眠りましょう。どちらが先に眠るかしら?」

 

「私が最初に警戒しておくから、エルピスからお願いしてもいい?」

 

「ええ、問題ないわ」

 

 安全地帯は魔物が出現することはないのだけど、魔物が進入できないわけではない。なのでパーティメンバーの内、誰か1人は起きている必要があるのだけど、ソロだった私は復活後の24時間は眠れなかったわね。稀に優しいパーティが警戒をしてくれると提案してくれるのだけど、ソロで潜っている以上は甘えられない。そこで甘えられるのなら、ソロで潜っていない。

 集めておいた小枝に火をつけたアリスの横に敷物を広げて寝転がり、夜空を賑わす星達を黒いカーテンで隠す。

 ……誰かが次の階層へ繋がる<<ゲート>>を通過すれば出現する安全地帯。その中央には石柱が存在し、どの安全地帯も石柱を中心とした一定範囲に魔物が出現しないことから石柱が特別な力をもっていると考えられているけど、それは予想であり何も分かっていないみたい。そもそも神々がいないこの世界で誰が設置しているのかしらね。

 まあ、最も早く攻略している人達よりも早くその階層にいるのだから、ダンジョンを設置したあの声の主なのでしょうね。そうなると安全地帯は階層突破のご褒美、といったところかしら。

 ……私もいずれは安全地帯の無い階層を攻略してご褒美をもらいたいものね。でも、まずは再び魔法を使えるようになってからね。

 さあ、しっかりと眠って起きてからも頑張りましょう。

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