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022~降り注ぐはひかりの言葉、包み込むは暖かさ~

 結局ウルフリーダーは見つからなかったけど、メイプル・ビークイーンを3体も倒したから今日はホクホクね。

 それにアリスの部屋に行く前、ティアさんの店で夜ご飯を食べ終えた際に特別メニューとして出してもらえたホットケーキが美味しかった。ティアさんの腕がいいのはもちろんだけど、自分で採取してきた蜂蜜をかけて食べるのはいいものね。

 

「それじゃあエルピス、今日もお願いね」

 

「ええ」

 

 アリスとの約束であり、毎日行っていること。私が魔法の書き込みと使用を試みて、それをアリスが観察する。

 アリスが何をどうやって観察しているかはわからないけど、いつも数分の準備時間と終了後に20分近い時間を必要としている。

 20分といえば希少種を倒したあとと、あの魔法を見せてくれたあとにアリスが必要とした時間と一致するのだけど……今の私が気にすることではないのでしょうね。

 さあ、今日も頑張りましょう。

 

「ワールドコール、ライトマジックデータ、『アクセル』」

 

 いつも通り椅子に座りアリスが手に触れたのを確認してから集中を開始する。そして集中を終えたところで世界へ魔法の情報を求めてイメージは得られたのだけど、やはり3つすべての魔法スロットへ干渉できない。

 干渉できない以上、書き込むことはできない。

 紙と絵の具は用意されていて書き込む風景も見えているのに、書くために必要な筆が存在しない。まるでそんな気分ね。

 

「それじゃあアリス、次はヒールを使うわね」

 

「……ちょっと待ってほしい。1分でいい」

 

「ええ」

 

 待ってほしいと言ったアリスの様子はいつもと変わらない。集中するために目を瞑ったりするわけでもなく、椅子に座るでもなく、姿勢を変えたりするわけでもなく、ただただ立ったままで私を見つめている。

 いつもなら連続で観察しているのに、珍しいわね。まあ、それなら私も集中を深めておきましょう。

 

 

 

「……エルピス、お待たせ。いつも通り私にヒールを使ってみて」

 

 約1分後、用事が完了したようでアリスが声をかけてきた。

 

「分かったわ。ヒール」

 

 いつも通りキーワードを先に唱えておき、深く集中して魔法スロットへ魔力を流し込もうと試みるのだけど……やはり魔力が零れ落ちてしまう。

 干渉できないことを考えると、魔力スロットの入り口が塞がっているのかしら。いえ、それなら魔力が衝突する感覚があるはずよね。まあ、体験したことはないのだけど。

 零れ落ちる魔力を最後まで感じ終え、集中を終えてアリスの様子を窺おうとしたところで視界が暖かく染まった。

 あら、アリスが抱きしめてくれるなんてどうしたのかしら。

 

「エルピス、もう1度お願い。大丈夫、あなたは再び魔法が使えるようになる」

 

「ええ」

 

 ……即答できるなんて、私もなかなかね。自分でも少し驚いているわ。

 

「ヒール」

 

 キーワードを唱えて魔力スロットを使用可能状態へ。そして、アリスの腕に包まれた中で再び深く集中して魔力スロットへ魔力を流し込む。

 ……その魔力は僅かも零れること無く魔力スロットへ流れていった。

 その感覚に心が同様していても魔力は止まらず、"魔法として"魔法スロットの外へ出てアリスを包むのが感じられた。

 

「エルピス、泣いてはダメ。これは陽炎であり、あなたはまだ魔法を使えない」

 

 頬を伝う熱を、優しく包み込むアリスが否定する。

 どう……いえ、そうなのね。

 

「アリスが何かしてくれたの?」

 

「私は確認しただけ」

 

「確認?」

 

 アリスの目的に関することかしら。

 

「エルピス、あなたが魔法を使えない原因は魔法スロットへ繋がる回路、魔力の通り道が一部分だけ完全に消失していることだと確定した」

 

 今の私に、普段と変わらぬ様子で説明するアリスの表情は見えない。

 

「通常は消失すること無く破損するだけであり、その場合は時間経過で修復される。そして破損状態であっても、破損前と変わらぬ方法で魔法の使用は可能」

 

 これは合わない魔法道具を使用した人が一定期間だけ魔法を使用する際に魔力消費量が上昇することに関して、かしら。

 でもね、私も同様に合わない魔法道具の使用によって魔法が使えなくなったのよ……。その説明では納得できないわ。

 

「あなたの場合は回路の消失。たとえば一定以上の技術で作成された魔法道具により魔法回路を破損した場合、付加された特性しだいでは回路自体が消し飛び、それが正常とされて修復は行われない。適切な処置をせず、残ってしまった傷をイメージしてほしい」

 

 想像できる、想像できてしまう。

 理解できる、理解できてしまう。

 

「それでは……私の回路は治らない、の?」

 

 さっきとは別の熱が何度も、何度も頬を伝うのを感じる。

 何で、何でアリスは何も言ってくれないの……。

 あの時みたいに慰めてほしいのに、あの時みたいに光の言葉と優しい抱擁で……私は何を考えているのかしら。

 優しい抱擁は今、私を包み込んでいるじゃない。光の言葉は既に伝えられたじゃない。

 そして何よりも、"アリスはあの時に私を慰めていた"なんて考えが間違っているのよ。

 あの言葉を慰めとしていたのは私であり、あの言葉を光の言葉としたのは私なのよ。

 そう、アリスは私に求めてくれた。期待してくれた。

 留まれなんて言っていない、進めると言ってくれた。

 

「アリス、私は頑張るわよ」

 

「うん、あなたが輝くのを期待してる」

 

 私に降り注いだのは嬉しそうな声と光の言葉。包み込むのは暖かい身体と心。

 今の一歩すら、アリスは期待してくれていたのかもしれない。いえ、きっとそうね。

 だって、こんなにも頑張れる気がするもの。

 日付変更ギリギリになってしまい申し訳ありません。


 次回投稿は2日後の月曜、その次はさらに2日後の水曜を予定しています。

 少し先まで確認はできているのですが、山場なので一気に投稿したいのです。水曜までに確認が終わるように頑張りますね……。

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