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021~2人でダンジョンへ03~

どうやらジャンルの再編で冒険が消えるようなので、ファンタジーに変更しておこうと思います。

「エルピス、回復魔法は必要?」

 

「いえ、大丈夫よ」

 

 苦い……毒消しをいくつ飲んだことか。アリスがいなければ街に帰っていたかもしれないわね。まあ、挑み続けていたでしょうけど。

 

「エルピス、そろそろ街に帰ろう。もうすぐ夜になるよ」

 

「そうね、帰りましょう」

 

 既に空は赤く染まっている。

 もうそんな時間とは、ちょっとムキになっていたかもしれない。

 元は古文書に記載されていたらしい架空の物語に存在していた"街に戻れる特別な羽"みたいな道具があればもう少しだけ挑戦できるけど、あれは架空の世界にしか存在しない。

 ……ダンジョンの各階層を繋ぐ特別な場所である<<ゲート>>が既に架空の道具に思えるので、"街に戻れる特別な羽"もいつかはできるのかしら……いえ、誰が使えるのかは知らないけど、空間属性移動系統空間跳躍魔法のエリアジャンプですら街に戻れなかったと噂で聞いたから難しいかしら。

 そもそも<<ゲート>>自体が大型であり、ダンジョンに初めから設置されていたらしいから、"街に戻れる特別な羽"よりも<<ゲート>>の解明と小型化が先かしらね。

 ……エリアジャンプ、か。私では世界から使用許可が得られなかった上級魔法の1つであり、"彼"は使用していた魔法。判明している魔力条件は私も満たしていたはずだから、足りないのはそれ以外の何か。私は他に優先していることが多かったし、授業も少なく実際に使用できるようになった人も少なかったから後回しにしてたけど、いずれは挑戦はしたいものね。

 さて、口の中が苦いからどこかで甘いものを食べて帰りましょう。

 歩き始めたアリスの横に並び、<<ゲート>>へ向けて移動を開始する。

 

 

 

 ***********

 

 

 

 5階層に存在する森の1箇所、そこではウルフ達を従えているはずのウルフリーダーが単独で森の1箇所を見つめていた。

 夜の闇に次々と鳴り響く同種の遠吠え。そのすべては危険を知らせるものであり、普段ならば気にせず眠っているウルフリーダーもその遠吠えが2つ、3つと響く中では興味を抱かずにはいられなかったのかもしれない。

 遠吠えはこのウルフリーダーとは関係のないウルフ達のものであり、危険を叫ぶ以上は近寄るべきではない。それでもウルフリーダーは何かを感じ取ったのか、まるで興味が示すままに遠吠えを追って1体で移動を開始する。

 しばらく遠吠えを追いかけていたウルフリーダーだが、遠吠えは途中で途切れて聞こえなくなってしまった。危険であると、罠であると感じたのか一瞬だけ足を止めたウルフリーダーだったが、その足はすぐに動き出す。

 最後に遠吠えが聞こえた地点へ向けて。

 

 

 

 紫が散りばめられたその場所には興味を抱くようなものは何も存在していなかった。慎重に移動し、周囲も探索を終えている今、既に興味の対象は移動し終えていると考えたのかウルフリーダーは来た方向へと足を向けようとして、その足を止めた。

 木々の隙間から月が優しく微笑む中、まるで何かを探すように鼻をひくつかせるウルフリーダーはその場を動かず、静かな時が過ぎていく。

 

 

 

 少しの時間が過ぎた時、ウルフリーダーは迷いない様子で1箇所へ向けて移動を開始した。

 移動した先は何の変哲もなく見える木の根元。そこでウルフリーダーは足を折り、腹を地面につけると居心地良さそうに目を瞑る。そして他の魔物が寄りつかぬその場所で、白き狼は夜を照らし始めた太陽を迎える。

 

 

 

 **********

 

 

 

 アリスとパーティを組んで数日、アリスの支援に私が慣れてきたので今日からはボス級が出現する5階層へ挑戦することになった。

 4階層で使用した毒消しは数知れず、5階層では蜂系のボス級も出現することがあるので期待したい。いえ、頑張りたい。

 そう、蜂系のボス級であるメイプル・ビークイーンの近くには甘い蜂蜜が採取できる巣があるらしいから、期待するのはしかたないことよね。

 

「今日はメイプル・ビークインにも期待したい」

 

「ええ、そうね」

 

 武器の修復は問題なく、回復薬や傷薬、毒消しなどのアイテムも揃えてある。メイルプ・ビークイーンには期待したいけど、一番の目的はウルフリーダーを倒すこと。

 いえ、違うわね。私が一番の目的とすることは再び魔法を使えるようになること……だよね。

 

「行きましょう、アリス」

 

「うん」

 

 

 

 2から4階層と比べて5階層はとても広い。ダッキさんの話では、どうやらボス級が出現するエリアは広い傾向にあるみたい。ダンジョンに潜り始めてすぐの頃、他の階層と比べてとても狭いとされる1階層でエリアの端とされる黒い海が広がる場所を見に行ったこともあるけど、魔物を倒しながら移動して数日を必要とした。1階層でそれなのだから、5階層はどこまで広いのかしらね。

 それにしても、アリスが蜂蜜専用の瓶を持ってきているとは思わなかったわ。私はその場で少し舐める程度で我慢しようと考えていたのだけど、今度からは持ってきておくべきかしら。

 

「エルピス、お待たせ。蜂蜜は"すべて"採取できた」

 

 おそらく、言葉通りすべてなのでしょうね。今まで使用していなかった風属性や水属性の魔法まで使用して採取していたもの。

 それにしても、少し前は勝てなかったボス級のメイプル・ビークイーン相手でもアリスと一緒なら少しの余裕をもって勝つことができた。それも最初に私が群れに突入して、私がメイプル・ビークイーンを単独で倒して。

 慢心するつもりはないけど、アリスと一緒なら近いうちにウルフリーダーを倒すことができると思う。とうぜん私が主となって。

 さて、次のメイプル・ビークイーン……じゃなくてウルフリーダーを探しに行きましょうか。

次の投稿は(間に合えば)2日後の土曜日となります。

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