第五章
ヴェイルとの話は、すぐには始まらなかった。
彼は衛兵を通して正式に呼びつけたりはしなかった。ただ内側の回廊の一つで彼を捕まえ、脇の小部屋の方へ短く顎をしゃくって、それから彼自身が来るか来ないかを決めるのを待った。それがいかにもヴェイルらしかった。中身の方がどうせ重いと分かっているところで、形で押しつけてこない。
部屋はほとんど空だった。机、椅子が二つ、水差し。取り調べの場所でも、懺悔の場所でもない。ただ、余計な物にも、余計な耳にも隠れられないだけの空間だった。
ヴェイルは最初、座らなかった。窓際まで歩き、しばらく外を見た。本当に中庭の様子を見ているようでいて、実際にはこれから口にすることの重さを自分の中で測っているのが分かった。やがて彼は振り向いた。
「エドランとはもう話したな」
そう言った。
問いではなかった。
「話した」
ヴェイルは頷いた。
「で、案の定、お前はお前にしかできない返し方をした」
彼は何も言わなかった。
ヴェイルは口元だけで笑った。
「真っ直ぐで、粗くて、正直だ。反論したくなるのに、切り捨てにくいやつだ」
ようやく彼は腰を下ろした。
「エドランと同じことを繰り返す気はない」
ヴェイルは言った。
「国家のこと、危険のこと、大使がただの女じゃないこと――そのあたりはもう十分言われたはずだし、お前だって分かってる。俺が話したいのは、別のことだ」
彼は黙っていた。
ヴェイルは静かに、少し疲れたような目で彼を見ていた。
「俺は、あの二人と違って、ひとつの真実の中で長く生きすぎた」
彼は言った。
「男が女を、便利さでも家の一部でもなく、本当に“自分のもの”として受け入れると、全部が変わる。寝床だけじゃない。家だけでもない。判断の順番も、優先順位も、危険の見え方も、全部だ」
彼は少し黙った。
「だから、お前のことは分かる」
その一言は、責められるより重かった。
「だが俺は、国の側に立ちすぎた人間でもある。そこで“分かる”だけで止まれるほど甘くない」
ヴェイルは続けた。
「理解は、結果を消さない。ただ、結果をもっと痛くするだけだ」
彼は水を一口飲み、器を机に戻した。その動作まで妙に正確だった。会話そのものが、そういう精度を要求しているようだった。
「お前は家に、ただ一人の女を入れたわけじゃない」
ヴェイルは言った。
「お前はそこへ、他国の意思の線を引き込んだ。別の国の。別の秩序の。本人の中でそれがもう終わっていようが、お前にとってそれがもう意味を失っていようが、外から見れば意味を持ち続ける。これからもだ」
彼は何か言おうとしたが、ヴェイルが手を上げて止めた。
「いや。最後まで言わせろ。責めてるわけじゃない。エドラン自身が、たぶんまだ本気では聞きたくないことを、言葉にしてるだけだ」
それは興味深かった。ヴェイルが、王に対してそこまでの含みを持たせること自体が珍しかったからだ。
彼もそれに気づいたし、ヴェイルも気づかれたことを理解した。
「そうだ」
ヴェイルは言った。
「エドランは変わってきてる」
間が落ちた。
「統治者としてじゃない。男としてだ」
今度は、彼の方がじっと見返した。
ヴェイルは乾いた笑みを浮かべた。
「見えてないふりをするな。俺は長く近くにいすぎた。女のうちの一人が、ただ“そばにいる女”でなくなって、その男自身の一部みたいになっていくとき、人間がどう変わるかくらい分かる」
そこには噂話の軽さはなかった。ただ観察だけがあった。
「エドランはこれからも統治者として振る舞う。必要なら切るし、必要なら捨てる。そこは変わらない」
ヴェイルは言った。
「だが内側には、前より強いものができてる。あるいは、前より深いところから表に上がってきてる。だからこそ、お前にあの件であれだけ強く当たる。お前が厄介なことをしたからだけじゃない。なぜお前がそうしたかを、自分でも分かりすぎるくらい分かってるからだ」
部屋は数秒、静まり返った。
嫌な知識だった。
醜聞ではない。
もっと悪い。正確な知識だった。
「放っておくと思うか?」
彼は訊いた。
ヴェイルは首を振った。
「思わない。だが、家に踏み込むという意味じゃない。もうそういうことを、前とは違う目で見るようになったってことだ。実際、もう見方が変わってる。厄介なのは、お前たちだけじゃない。あいつ自身にとっても危うい変化だ」
彼は少し身を乗り出した。
「一つだけ分かっておけ。あいつみたいな規模の男が、たった一人の女に対してでも見方を変えると、それは私生活だけの問題じゃ済まない。周囲の権力配置そのものが変わる。人間は何が起きたか正確に分からなくても、ズレは嗅ぎ取る。貴族は特にな。相手の構造の弱いところに鼻が利く連中ほどな」
「家を狙ってくる、と言いたいわけか」
「当然だ」
ヴェイルは落ち着いて言った。
「来るか来ないかじゃない。いつ、どんな形で来るか、それだけだ」
それ以上は付け足さなかった。
それだけで十分だった。
「なら、はっきり言え」
彼は言った。
「俺に何をしろと言いたい」
ヴェイルは正面から彼を見た。
「自分の家を、政治から切り離された場所だと思うのをやめろ」
彼は言った。
「もうそんな段階は終わってる。お前の家には継承者がいる。力の配置を変える女たちがいる。他国の大使がいる。昔なら同じ屋根の下にいることすら想像できなかった人間と存在が混ざっている。そしてお前自身が、その新しい配置の中心になっている。もう血を流さずには元に戻せない構図の中心にな」
彼は椅子の背にもたれた。
「しかも、その上で俺はまだお前を理解してる。そこが、この状況の一番厄介なところだ」
話はすぐには終わらなかった。
二人はかなり長く、同じところを何度も回った。家のこと。親密さが判断をどう変えるか。自分に嘘をつかないことの代償。国家が、生きたものをなぜあそこまで嫌うのか――生きたものは、都合のいい形に収まるのを拒むからだ、ということ。ヴェイルは一度も説教臭くならなかった。彼は、私と国家のあいだに長く挟まれすぎて、簡単な線引きなんかもう信じていない人間として喋っていた。
部屋を出たとき、彼の中に残っていたのは整理でも答えでもなかった。
不安だった。
重く、粘つくような不安。
そして、そのままそれを抱えて家に戻った。
家は、熱で迎えた。
安らぎというより、熱だった。
生きた、身体のある、多層の熱。
どこかで聞こえる子供の声。食べ物の匂い。カイラの低い笑い声。動き方がすでに変わり始めているリラの、慎重な重さ。そして低い台のそばで床に座っているネリッサ。まるで本当に、昔からそこにいたみたいに自然に。
彼は彼女たちを見て、理解した。
今の自分には、理性的にも、政治的にも、内面的にも、整った顔はできない。
彼には、彼女たちの中に沈むことが必要だった。
快楽のためですらなかった。
ヴェイルの部屋から持ち帰ったあの不安と、一人きりで向き合わずに済むためだった。
彼女たちは、それをすぐに感じ取った。
最初に顔を上げたのはリラだった。ただ見た。問いもなく。それだけで胸の中が少し軽くなり、同時にもっと重くもなった。カイラは彼が完全に中へ入る前から、もう口元を曲げていた。アヤノは特に真剣に見ていた。表情ではなく、その顔に残っている会話の痕跡そのものを読もうとするみたいに。サレットはカイラの息子を抱いて、何か小さな声で話しかけていた。その姿には、もうあまりにも自然な“祖母”の権利があった。まるで他の役割なんて最初からなかったみたいに。
そしてネリッサだけは、何もしなかった。
ただ床に座ったまま、下から彼を見ていた。真っ直ぐに。静かに。猫娘らしい、あの動物的に正直な目で。
それが、彼をいちばん早く彼女たちの方へ崩した。
そこからの数日も、また一つにつながっていった。
ただ今度は、重さが増していた。
飢えが濃くなっていた。
遊びが減っていた。
彼が彼女たちの中に求めたのは、ただの身体ではなかった。外の世界がもう家のどこを刺せば壊れるか探し始めている、その気配の中で、それでもここが崩れないのだと確かめることだった。
それぞれの受け止め方は違った。
リラは、やわらかく、ほとんど憐れむように彼を受け止めた。彼が欲しているというより、何かから逃げ込んでいるのだと分かっているみたいに。言葉で宥めたりはしない。ただ、彼の中の緊張を受け取り、そのあともそばにいて、胸に手を置き、何も要求しない。そのやり方の方が、慰めよりよほど深く効いた。
カイラは逆に、彼がどこまで張り詰めているかをすぐに見抜き、その張り詰め方を、ほとんどからかうように壊していった。彼が親密さまで重苦しい戦いに変えようとすると、すぐそこを引っかき回す。黙って一人で沈んでいけると思わせてくれなかった。
アヤノは、いちばん大きく変わっていた。
彼女の中で新しい命が始まってから、彼女には独特の柔らかさと、逆に強くなった確信とが同時に宿っていた。空っぽでない女だけが持つ、あの重く、温かい充実感。けれど、それが本当に決定的な形を取ったのは、彼女自身がそれに気づいた瞬間だった。
それは朝だった。
ほとんど普通の朝だった。
アヤノは他の誰より少し遅く目を覚まし、しばらく動かなかった。部屋を見ているのではなく、自分の中を聴いているみたいに静かに。やがて彼女は、急に彼を見た。怯えでも喜びでもなく、もっと集中した目で。身体の中で何かの軸が、ふいにずれたのを感じ取った人間の目だった。
「待って」
彼女は言った。
その声音だけで、皆が止まった。
アヤノはゆっくり身体を起こした。手を下腹に当てる。その仕草は芝居じみたものではなかった。もっと自然で、もっと生々しかった。そこにようやく現れた何かを、まだ壊さないように確かめるような手つきだった。
彼は見ていて、もう分かっていた。
彼女が口にする前に。
顔つきが変わっていた。表情ではない。沈黙の構造そのものが変わっていた。長く彼女を空洞にしていた飢えが、突然もう飢えではなくなって、初めて形を持った、その顔だった。
「ある」
彼女はほとんど声にならない声で言った。
「……いる」
その言葉の直後に、ようやく震えが来た。
怖さからではない。
本当に、それが起きたのだと理解したからだ。
リラは口元を手で押さえた。カイラは短く鋭く息を吐いた。まるでこの数日、アヤノと一緒にずっと息を止めていたみたいに。サレットは、声の質が変わっただけで何かを察してすぐに現れた。子供を抱いたまま、いつでも何にでも対応するつもりの顔で。そしてネリッサは何も言わなかった。ただアヤノを見た。その視線には、言葉にしない確認があった。――そう、お前はそこまで辿り着いた、と。
アヤノは彼の方を向いた。
その目にあったのは勝ち誇った喜びでも、感謝に溶ける涙でもなかった。
ただ、呆然とするほど澄んだ現実感だった。
なぜなら二人とも、そこへ至るまでに、どれだけの飢えと、どれだけの執念と、どれだけの意図を重ねてきたかを、知りすぎるほど知っていたからだ。
彼は、あの数日間、いちばん深くネリッサへ向かっていた。
それは、アヤノを軽く見ていたからではない。ネリッサの身体が、彼に別種の真実を要求したからだ。彼女といるとき、半端ではいられなかった。柔らかく整った、人間らしい加減のままではいられなかった。ネリッサは、彼の欲望の最も濃い部分、最も獣じみた部分、最も躊躇のない深さに対して、全身で応えてきた。耳、尾、反応の速さ、快感とその告白のあいだにほとんど隙間のないあの正直さ――それらすべてが、彼を理性の外側まで引っ張っていった。
彼は知っていた。
ネリッサの身体は、優しく曖昧にされることを望んでいない。
もっと深く、もっと貪欲に、もっと率直に欲しがられることを求めている。
そして彼は、それを彼女に与えていた。
だが、最後の最後――結果が単なる飢えや渇きではなく、未来に関わるものになるその瞬間だけは、彼はアヤノのところへ戻っていた。
偶然ではない。
流れでもない。
意志だった。
ほとんど残酷と呼べるくらい、はっきりした意図だった。
なぜなら、彼は結果を残したかったのだ。
アヤノの中に。
そしてアヤノも、そのことを知っていた。
それは侮辱ではなかった。
悔しさですらなかった。
むしろ、この家のひどく独特な真実の一つだった。
ネリッサが、彼のいちばん貪欲で、いちばん深く、いちばん獣じみた欲望を受け取る。
そしてアヤノのところに、欲望のあとに残るべきものを運ぶ。
そのことが、二人のあいだの親密さを軽くするどころか、逆にもっと重く、もっと意味のあるものにしていた。
自分の中に本当に子が宿ったと理解したアヤノは、すぐには泣かなかった。
まずただ座っていた。まだ下腹に手を当てたまま。動くことすらためらうように。今ここで身体を少しでも乱暴に動かせば、この奇跡がまだあまりにも新しすぎて、壊れてしまいそうだったからだ。
それから、ようやく泣いた。
静かに。
崩れるようにではなく。
それが、かえって強かった。
なぜなら彼女が泣いていたのは、単純な幸福に対してではなく、そこへ至るまでの、自分の飢えも、恥も、惨めさも、願いも、焦燥も、全部がようやく過去になったことに対してだったからだ。
彼は最初に彼女へ近づいた。
アヤノは顔を上げた。涙で濡れていた。あまりにも開かれた顔だった。
「あなた、分かってたでしょう」
彼女は言った。
「願っていた」
彼女は首を振った。
「違う。あなた、自分が何をしてるか、分かった上でやってた」
彼は否定しなかった。
それもまた、真実だった。
それでもなお、ネリッサは彼にとって、いちばん鋭い身体の経験であり続けていた。
アヤノが身籠ったあと、彼の中では、切迫した目的意識は少し薄れ、そのぶん、ネリッサに向かう純粋な、ほとんど暗い飢えが強くなった。彼女の身体が彼に返してくるものを、もっと素直に求めるようになった。ネリッサもそれを感じていた。彼女の反応には、もう照れも少なかった。隠そうとする気配も薄れた。生きた猫の耳みたいに敏感で、触れられた瞬間にすべてをばらしてしまう耳。根元を掴まれると、もう全身に波が走る尾。毛並みのやわらかさ。獣の熱。人とは少し違う、身体そのものの論理。そういうものを彼は、いまや頭ではなく、手と身体の記憶として知っていた。
そしてネリッサは、まさにそれを望んでいた。
他の誰かの代わりではなく。
“その中の一人”ではなく。
彼女そのものとして、最後まで欲しがられることを。
ときどき、それは少し怖いほどだった。
彼の欲望のあの深さが、ネリッサにはあまりにもよく合ってしまうことが。
しかも他の女たちが、それをただ許すだけではなく、この家全体の呼吸の中に組み込んでしまっていることが。
リラは、それをもう何も言わず理解していた。
カイラは意地の悪い笑みを浮かべながらも、本気で排除する気配はなかった。
アヤノは、もう競う相手としてではなく、これがなければいまの家は成立しない一部として、ネリッサを見ていた。
おそらく、すべてはもう少しそのまま続いていたかもしれない。
重く、熱く、欲望と不安が絡んだままで。
だが、その家へ向けた一撃が来た。
昼だった。
夜ではない。
影でもない。
むしろ、あまりにも日常に近い時間だったからこそ、なおさら怖かった。
カイラの息子は、例によってサレットが抱いていた。ここ数週間、ますますそういう時間が増えていた。リラはもう、明らかに重いものを持つと動きに無理が出るようになっていた。腹はさらに重くなっていて、それが娘であることを、もはや誰も口に出して確認する必要はなかった。家の中には、言葉より先に分かることがある。
サレットが中庭のあたりで男の子をあやしていたときだった。
ある名門の一つ――エドランが丸ごと粛清するには価値がありすぎるが、彼の示した新しい秩序を受け入れるには頑固すぎる一族――その一門に属する男が、まるで自分にここへ入る権利があるかのような顔で入り込んできた。
そいつは、ほとんど届くところまで来た。
ほとんど、だった。
最初に反応したのはネリッサだった。
あとになっても、誰もどうやって彼女があれを誰より先に察知したのか説明できなかった。匂いか。足音か。あるいは、どれだけ家の中へ入り込んでも鈍らなかったあの獣じみた勘か。ただ、一瞬前まで彼女は壁際にいたのに、次の瞬間にはもうその男に飛びかかっていた。
それは美しくなかった。
洗練もなかった。
捕食だった。
原始的だった。
あまりにも速くて、男は手を上げ切ることすらできなかった。ネリッサは全身でぶつかり、そのまま、自分のものを守る獣だけが持つ、あの直線的な殺意で相手を潰した。ようやく皆が見た。ネリッサの“獣らしさ”が、寝床の中ではなく、守る瞬間にどういう意味を持つのかを。血は驚くほど多かった。骨の音もした。彼女は訓練された護衛みたいに動いたわけではない。任務として殺したわけでもない。ただ、子に手を伸ばした相手の喉を、迷いなく裂く捕食者そのものだった。
それは、すべてを変えた。
ネリッサの位置づけを変えたわけではない。
それはもうとっくに決まっていた。
変わったのは、皆の“感じ方”だった。
そこではっきりした。ネリッサはただ欲するだけの女でも、家の結び目の一部でもない。彼女はこの家を巣のように守っている。象徴としてではなく。美談としてでもなく。肉を裂き、喉を噛み切るところまで含めて。
その後、カイラはしばらくネリッサを黙って見ていた。
怯えでもなかった。
単純な感謝でもない。
もっと別の、はっきりした承認だった。
一瞬で、自分たちの一人であることを証明してしまった相手を見る目だった。
サレットはそのあともしばらく、男の子を胸に押しつけるように抱いていた。二度と離す気がないみたいに。そしてその日から、彼女の“祖母”としての位置は完全に揺るがないものになった。日常的な役目としてではなく、本物として。カイラの息子の世話は、ますます自然にサレットへ寄っていき、誰もそれを止めようとはしなかった。
リラはそれ以降、さらに静かになった。
だが、弱くなったわけではない。
妊娠の後半にある女だけが持つ、あの慎重な遅さが、彼女の動きに加わっただけだった。女としての生の中心が、より深く内側へ移っていく、その種の遅さだ。
家はもう、娘の誕生を待つ空気の中に入っていた。
アヤノは、身籠ったことをはっきり知ったことで、また一段変わった。
空虚さは減り、代わりに、重くて温かい充足が彼女の中に根を下ろし始めていた。
恐れの質も変わっていた。
もう“駄目だったらどうしよう”ではない。
“いまここにあるものをどう守るか”という恐れだった。
そしてネリッサは、血のついたあの中庭のあと、皆にとってさらに近くなった。
穏やかになったのではない。
静かになったわけでもない。
ただ、もっと近くなった。
欲望から保護へ。
猫娘らしい無邪気な正直さから、家を守る獣の殺意へ。
その間に一切の断絶がないことが、皆の中ではっきりしたからだ。
おそらく、 именноそれが今の彼にとって、彼女をほとんど耐えがたく必要なものにしていた。
外の世界は、彼が持ち込もうとしている新しい秩序をますます拒み始めていた。
その一方で、家の内側はますます深く、一つに癒着していった。
もう昔みたいな境界線には戻せない形で。
そして彼は、はっきり分かっていた。
もう、何一つ後戻りはしない。




