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どうやら魔王の娘を拾ったようです。〜コンビニ店長(39)のほのぼの奮闘記〜  作者: 彩月鳴


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☆67かいめ☆ 戦端開かれし週末の攻城戦

――週末。よく晴れた休日の朝。


部屋のカーペットの上で、ラビリスはウサギウスを抱き抱えながら、真剣な眼差しで『マジプリ』の鑑賞会を開いていた。


「……おのれ、モノクロームレギオンめ。次から次へと新たな刺客を差し向けおって……。こやつらの兵力は一体どうなっておるのじゃ?敵ながら見事な管理体制を敷いておると見える」


毎話のように襲い来る敵組織の『人材の豊富さ』にある種の感心を抱いていると、ベランダから空の洗濯カゴを抱えた大地がリビングに戻ってきた。



「……お前なぁ。テレビばっか見てっと体によくねぇぞ?……よし。今日は天気もいいし、どっか出かけるか」


呆れ混じりに大地が提案したその一言に。

テレビに夢中だったラビリスが、ウサギウスを抱えたまま振り返った。


「……む?出かけるとは、どこへじゃ?」


「そうだな……」


大地はテーブルに置いてあったスマホを手に取り、慣れた手つきで検索を始める。


「映画……だと、結局テレビ見てるのと変わんねぇか。う~ん……」



数分後、画面をスクロールして忙しなく動いていた大地の指が、ピタリと止まった。



「おっ!こことかどうだ?なんか少し都心の方に、最近でけぇ公園ができたらしい。アスレチックとか色々あるみたいだぞ」


そう言って、大地はスマホの画面をラビリスへと向けた。

そこに映っていたのは、広大なグラウンドと、巨大な複合遊具の写真。


それを見た瞬間。

彼女の真紅の瞳が、カッと見開かれた。


(なっ……!?こ、これは、以前この『黒い板(テレビ)』で見た……王都のエリート兵士を育成するための『中央訓練所』ではないか!!)


まさか、あの憧れ(?)の軍事施設へ赴く日がこんなにも早く訪れようとは。



「どうだ?天気もいいし、体動かすにはちょうど良さそう――」


「行くぞ大地!!余の真の力を見せつける時が来たのじゃ!!」


大地が言い終わるよりも早く、ラビリスはウサギウスをベッドの枕元に鎮座させ、タタタッと勢いよくハンガーラックへと走っていった。


「おお?なんでそんなに食いついて……って、お前、なんでその服出してんだよ」


大地が彼女に視線を向けると、そこには一番奥に掛けられていた『漆黒のゴシックドレス』を引っ張り出そうとしている魔王の娘の姿があった。


「ふはは!初の中央訓練所への視察じゃ!魔王の娘としての威厳を示すため、この正装で――」


「あほか、ダメに決まってんだろ」


大地は呆れた顔で近づき、ドレスをラックへ戻した。



「な、なんじゃ!?何をする!!」


「あのな、体を動かして遊ぶって言ってんだろ?こんなヒラヒラの服じゃあちこち引っ掛かって危ねぇよ。……あとほら、何がとは言わんが、高いとこ登った時に丸見えだぞ?」


「!!?」


大地の言葉の意味を瞬時に理解したラビリスは、ボンッと音を立てて顔を真っ赤にした。


「な、なななっ……!そ、そのような破廉恥なこと、よくも軽々しく口に!」


「んん?俺は『何が』とは言ってないが?」


「ぐぬぬ……」


からかうような大地のニヤケ顔を睨みつけると、ラビリスは真っ赤な顔を誤魔化すように、バタバタと自らタンスを漁り始めた。


「た、確かに訓練所に行くのであれば動きやすい装束がよいわ。……えーっと」



そして「こ、これならば文句あるまい!」と引っ張り出してきたのは、動きやすいグレーのパーカーとデニムのショートパンツだった。


「お、それならよさそうだ」


大地のあっさりとした許可をもらい、ラビリスはそそくさと着替えを済ませる。

いざ着替えて鏡の前に立つと、彼女の表情はすぐに明るくなった。


(ふむ……。装飾を削ぎ落とし、機動力を極限まで高めた……いわば『実戦用の戦闘装備』ということじゃな……!悪くない、悪くないぞ!)


持ち前のポジティブな脳内補完ですっかりテンションを回復させたラビリスは、パーカーのポケットに配下の『玉子侍』をねじ込んだ。



「パパよ、装備の換装は完了したぞ!いざ、中央訓練所へ出陣じゃ!」


「や、訓練所じゃなくて公園な?……ま、いっか。しかし、なんか知らんが、すげぇ気合入ってんな……」


元気いっぱいに玄関を飛び出していく小さな背中を、大地は車の鍵を手に苦笑しながら追いかけるのだった。




――そして、車に揺られること数十分。




「おし、到着っと。ほら、着いたぞ、起きろ」


「……んが?」


行きの車内ですでにひとしきりはしゃぎ、うたた寝をしていたラビリスは、間抜けな声を漏らして目を覚ました。

駐車場に車を停め、大地と共に外へと降り立つ。



パタンとドアを閉め、公園の入り口ゲートをくぐった瞬間――。

ラビリスの視界に、広大なグラウンドと、その中央にそびえ立つ巨大な複合アスレチック遊具が飛び込んできた。


チューブ型の巨大なスライダー。

複雑に入り組んだネットの吊り橋。

そして、ワイヤーで滑空するターザンロープ。

そのすべてが、色鮮やかな赤や青の塗装で太陽の光を反射して輝いている。



「ふおおぉぉ……ッ!!」


その圧倒的なスケールを前に、ラビリスは感嘆の声を漏らし、ぷるぷると震え始めた。


「見よ、パパ!あの巨大な鋼鉄の砦を……!しかも、そこにもあそこにも、将来この国を担う人間の戦士ども(子供)がひしめき合っておるわ!」


「……まぁ、あながち間違ってもないか?」


妙に納得しつつ大地は苦笑した。



週末ということもあり、アスレチックの周りには無数の小学生や幼児たちが奇声を上げながら群がり、凄まじい熱気を放っていた。


「見事じゃ……!やはり近所の小規模修練場とは、規模も、兵士たちの練度も段違いじゃな……!」


「だからなんでそんな物騒な話になってんだ?……まぁいいや。ほら、どれから遊んでみるんだ?」


大地の言葉に、ラビリスはゴクリと喉を鳴らした。

彼女の鋭い(?)視線が、巨大な複合遊具の構造をぐるりと観察する。



「ふむ……。中央にそびえる砦は最後に落とすのが戦の定石。まずはあそこから攻めるぞ!」


ラビリスがビシッと指差したのは、アスレチックの外周に設置されている、少し小さめのチューブスライダーだった。


「ふははは!魔王の娘として、人間どもの修練、とくと味わってくれるわ!!」


ラビリスはフンス!と鼻息を荒くすると、巨大なアスレチックという名の『戦場』へと、勇猛果敢に突撃していくのだった。

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