第二話
・お酒は二十歳になってから。
・お酒は節度を持って楽しみましょう。
・最近飲んだお酒:Inadayz beer SAMPLE.1: SUNKI Pickles (クラフトビール)
翌日、明海は国王に呼び出されていた。昨晩深酒をし、夜遅くに城に帰ってきたことを言われるのではないかひやひやしていたが、ノーマンとリーシュもいるということでホッとしていた。
「諸君、先日のイブシー市でのゲコゲコ団鎮圧は大義であった。これを名目にもっと飲んでいたいところではあったが、一部を鎮圧させただけにすぎないため、今後の奴らの動きに注視していきたいところである」
国王がひとしきりしゃべり終わったところで、側近が国王から書簡らしきものを受け取った。
「この親書をバーレル島にいるモル家当主へ届けてほしい」
受け取った書簡をそのままノーマンに渡すと、違う家臣が出てきて事の説明をし始めた。
「最近はモル家と商品のやりとり以外で顔を合わせることがなかったこともあり、当主であるシングル・モルに会い、近況について報告を受けなさい。それが終わったらまた国王まで報告に上がるように」
言っている言葉面だけを見ると、ただの伝令のように思えるが、昨日シュミットが言っていたことから勘案すると、モル家が怪しいから監視をして来いというようにも思えた。実際、その家臣だけでなく、いいとは言えない表情を浮かべている者もいた。
「バーレル島は馬車でギョショー市に行きそこから船に乗って一日で着くだろうが、メルロー家までご令嬢をお送りして代金と注文書を渡さねばならないから、先方とは明日に面会する約束を取ってある」
家臣がひととおり説明し終わったあと、リーシュが恐縮しながら尋ねた。
「あの、私も勇者様達と同行させていただけないでしょうか」
「別に構わんが、近くとは言えついて行くのは大変だと思うぞ」
国王が心配そうに尋ねるとリーシュは笑顔で首を振った。
「回復の役回りもできますし、それに何より勇者様にお仕えをしたいのです」
「それならよいのじゃが」
不思議そうな表情を浮かべながらも国王からリーシュの同行の許可を得られた。明海にとっても一緒に連れ添ってくれる同性の仲間が増えるのはありがたいことでもある。
「明海さん、よろしくお願いします」
「いいえ、こちらこそ」
◇
城から馬車で出発し、メルロー葡萄園までの道中。
馬車は思ったよりも広く、座席もふかふかでお尻を痛めることはなさそうだが、道のでこぼこで揺れるのは防げない。こういった経験もめったにないと思いながら、明海は元々いた世界の自動車に乗っているようにくつろいでいた。
明海の対面に座っているノーマンと目が合ったので、今回向かうことになったモル家のことについて聞くことにした。
「そういえば、シュミットさんから聞いたんだけど、モル家って腫れ物扱いにされているって」
「いやいや、評価が二分に分かれているんだって。その言葉も近からず遠からず当たっているかもしれないが……。明海も分かっていたかもしれないが、今回の旅程について伝えていた家臣はモル家に対してあまり良くないと考えている派閥の一人だな。まあ、今回はその派閥にとってはモル家に変な動きをしないよう牽制する意味合いもあるが、父上を始めとしたモル家と距離を縮めたい派閥としては勇者をダシにして友好を図りたいというところだろう。まあ父上と母上はモルブランドのウイスキーを飲みたいだけかもしれないが」
自分のことを上手く利用していることに納得のいかない気持ちになったが、国王、女王と同じようにおいしいお酒が飲めればそれでいいと明海は気持ちを切り替えた。
馬車を走らせること二時間程、アルコー王国の外れのギョショー市に近い地域へやってきた。
「この丘を越えれば、私の実家に着きますよ」
リーシュの言う通り、丘を越えるとぶどうの木々が丘一面に広がっていた。
「すごいね、これだけの広い土地にぶどうの木があると収穫も大変でしょう」
「そうですね。収穫の時期になると近隣の方々総出で収穫をしますよ。そこからワインを作ったり、ぶどうジュースも作ったりと大忙しです」
ここ三日間は明海とリーシュがゆっくりと会話できる時間がなかったからか、心なしかリーシュは嬉しそうに自身の実家についてしゃべっていた。
そうこうしているうちに、メルロー家の葡萄園に到着した。




