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第三話

・お酒は二十歳になってから。

・お酒は節度を持って楽しみましょう。

・最近飲んだお酒:箱根街道 (日本酒)

「お父様、お母様、ただいま戻りました」


 リーシュの声が聞こえるや否や、父親らしき人が飛び出すかのように出てきた。


「リーシュ!無事だったか。危ない目に遭わせてすまなかったよ。今度は私が……こほん、こちらの方々は」


 最初はリーシュしか目に入っていなかったようだったが、明海とノーマンに気づくと気まずそうにしていた。


「お父様、こちらの男性が、アルコー王国第一王子のノーマン・アルコー様でございます。そして、こちらが私を助けてくださった、アルコー王国が召喚した勇者の酒田明海様でございます」


 身分が高い相手だったからなのか、それとも愛娘であるリーシュを助けた人だからなのか、リーシュの母親がやってきて止めるまで涙を流しながら何度も何度も感謝をしていた。


「お父様、この前のイブシー市に納品した時の代金と、王室からの注文書です」


「おお、ノーマン王子。この度は重ねて感謝を申し上げたい」


「いいえ。私の母であるアテナ女王がメルロー家の葡萄酒をいたく気に入っており、直接注文する運びとなりました。王国に持ち帰る分については後日となりますが、いくつかは今すぐ用意できますか」


 アテナ女王が気に入っているという言葉は、リーシュの母親の方に響いていたようで顔をほころばせていた。どうやら、女性からのアテナ女王への人気が高いのかもしれない。


「王子、注文のとおり用意できますが、この量はどのようにして」


「一部はこれから会いに行く先方への手土産になりますが、その他は勇者のための補給物資といいますか……」


 言っても信じられないだろうと思いながらもノーマンが告げると、一瞬目をぱちくりと瞬かせたリーシュの父親だったが、「やはり召喚された勇者様ぐらいであれば当然ですよね」と硬い笑みを浮かべながら注文品の荷造りに向かっていった。冗談だろうと喉まで出かかっていたものの、王子と勇者の前でそんなことを言えず笑うしかなかったようだ。


「明海さん、ノーマンさん、荷造りをしている間に、どうぞこちらを」


 ノーマンに出されたのは瓶、明海には樽が用意されていた。


「いや、私はお酒は……」


「ノーマンさんにはぶどうジュースです。明海さんのは葡萄酒です」


「やった」


 心配しているノーマンをよそに、明海は大喜びで樽につけられた栓を外し、コップに注ぎ始めた。


「やっぱり、リーシュのおうちのワインはおいしいね」


「明海さんありがとうございます。ささ、どうぞどうぞ」


 リーシュから明海への接待のようなやりとりについて、ノーマンは特に触れないようにしてぶどうジュースをちびちびと飲むことにした。


 そして、荷造りが終わってリーシュの両親が戻ってきたころには、樽の中身はなくなっており、リーシュの父親の目が飛び出そうなくらいに驚いていたことについては明海も飲み過ぎちゃったかなと少し反省をした。


 それからギョショー市へ向けて積み荷を乗せた馬車に乗り、出発をしようとしていた。


「勇者様にノーマン王子、リーシュのわがままをお許しいただきありがとうございます。ギョショー市で

はどのような方に葡萄酒をお渡しになられるのでしょうか」


「ああ、バーレル島のシングル・モルに渡す予定です」


「そうですか、あの陰湿野郎、態度は気に入らないですが、酒に対する姿勢は確かだからそこは嫌いにならないでください」


 ノーマンがモル家に渡すと聞いた瞬間にリーシュの父は表情をピクリとさせたが、古い付き合いのようで、シングル・モルへの毒舌交じりに明海達を送り出してくれた。

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