第十一話
・お酒は二十歳になってから。
・お酒は節度を持って楽しみましょう。
・最近飲んだお酒:「上善如水 純米吟醸」セルフ2BY(日本酒) ※上善如水を自宅で2年間寝かせていたものです
イブシー市にある酒が全てなくなるのではないかというほど主に明海が酒を飲み尽くした次の日、旅団は王国へ戻ることとなった。
勝利を収めた翌日で、兵士の皆は晴れやかな表情をして帰ることだろうと思いきや、ほとんどの兵士はこみあげてくる吐き気と、頭を叩きつけるような頭痛で苦悶の表情を浮かべていた。
それも無理もない。明海に対して調子に乗った兵士たちが何人も束になって酒をどれだけ飲めるか勝負を挑んだものの、皆返り討ちに遭った。イブシー市に向かう初日の夜で反省をしていないようだ。
晴れやかな表情をしているのは、その勝負に参加しなかったノーマンとリーシュを含めた面々と明海だけだった。
「みんなあれだけしか飲んでいないのに、元気ないわね」
「あれだけではなく、あんなに飲んだからこんなことになっているんだ」
そのやりとりをリーシュは苦笑いをしながら見ていた。
「ああ、そうだ、リーシュも一緒に王国に戻ることとなった」
「そうなんだ。お酒代の請求?」
「ノーマン様のご提案で今回の戦いの件を一緒にご報告に上がることになりました。提供したお酒代の請求ももちろんありますが」
今回の戦いでメルロー家にとってはいい稼ぎになったに違いない。
旅団一行がアルコー王国に戻る頃には積み込んでいた酒は全てなくなっていた。
兵士たちは帰りの旅路ではあまり飲んでいなかったが、戦いや旅だけでなくこの数日でだいぶ肝臓に負担をかけたせいか、疲労困憊といったようだった。この世界がロールプレイングゲームであれば体力を意味するヒットポイント(HP)、残存魔力を意味するマジックポイント(MP)のほかに、肝臓の耐久力を意味するレバーポイント(LP)も勘案しながら戦闘を進めなくてはならないだろう。
◇
「勇者明海率いるイブシー市救援旅団、ただいま戻りました」
アルコー王国の謁見の間、その国の作法を知らない明海にとってもそのほうがいいということで、ノーマンが明海の代わりにストロング国王に報告のために口を開いた。
「して、その様子だと無事だったようだが」
「勇者明海の活躍もあり、イブシー市を襲撃した集団を撃退しました。敵は……ぷっ」
「どうした」
「い、いえ失礼しました。イブシー市にいた頭はナイ・ヨッテという名の幹部でした。敵はアルコールに対して憎悪を抱いているようでして、アルコー王国の近郊都市を壊滅させることでアルコールをなくそうという考えがあるようです」
「それはけしからん。……にしてもゲコゲコ団の幹部の名前もダサいな」
国王周辺の大臣たちも笑いをこらえるので精いっぱいのようで、みんなが両肩を震わせていた。
「倒したのが幹部ということは、残った幹部によって今回と同様に他の周辺都市も狙われる可能性があるということか」
「そういうことになります」
「それは困ったものだ。そのことは追々考えていくとして、そちらの娘は」
「私は、リーシュ・メルローと申します」
「ほほう、メルロー家のご息女か」
「イブシー市に向かう途中で、行商隊が盗賊に襲われていたのを我々が助けまして、ただ、補給部隊が運んでいた酒がだいぶ消耗していたため、ちょうどリーシュがイブシー市に納品する予定だった葡萄酒を買い取らせてもらうとともに、戦闘の回復役としても手伝ってもらいました」
「それは感謝痛み入る」
「こちらこそ、アルコー王国だけでなく勇者様に献上できて大変光栄です」
国王からの感謝の言葉に対して、リーシュはだいぶ恐縮していた。
「妻のアテナもメルロー家の葡萄酒は気に入っておってな、父上によろしく伝えておいてくれ」
「ありがとうございます」
「して明海よ、大活躍であったようだが、この国の危機を救う働きに対してアルコー王国国王として、深く感謝をする」
「いえ、危機を救ったといってもまだまだ敵の一部を倒しただけですから。それに」
「それに?」
「いえ、なんでもないです」
(それに、本当は早く元の世界に戻りたいけれど、この世界にいれば酒は飲めないけどかっこいい王子様と一緒に旅をしながらお酒をずっと飲んでいられるだなんて、こんな場所では言えないかな)
「そういえば、国王。アレはどこで作られているのでしょうか」
「アレか、ふむ、いろんなところで作られているが、そのアレだと、モル家が作っているものが有名かの」
アレというのは、明海が王国を出る時にそっと忍ばせるように国王から渡されていたウイスキーということでお互い合点がいったのだろう。明海とストロングだけが悪だくみをするかのような笑みを浮かべていた。
戦いの休養の間にその蒸留酒の醸造元に行こうと明海は心に誓ったのだった。
「報告ご苦労であった。しばらくは体を休めるように。しかし、兵の皆はだいぶ疲れているようだが、激闘であったようだな。どれ、戦いは終わっておらんが、祝宴を挙げようではないか」
「わざわざ祝宴を挙げてくださるなんて、ありがとうございます。私もう喉がカラカラで。旅団の皆さんは昨晩はお酒を召し上がっていなかったようですし、ぜひみんなで一緒に飲みましょう」
一部の兵士が一緒に謁見の間についてきて控えていたが、明海が笑顔で振り返ると兵士は皆々顔面蒼白になって震えていた。
「「「とほほ、酒はもうコリゴリだよ~」」」
酒に呑まれた兵士の悲鳴でイブシー市救援作戦は終わるのだった。
「呑んべえ女子、異世界勇者に 一杯目」が終わりまして、次からは「おかわり」になります。投稿するタイミングはまた改めて活動報告にてお知らせします




