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Psychic Rulers 〜能力者たちの語りき話譚より〜  作者: ぼんばん
最終章 彼らの物語は続く

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249.最終決戦 -少女達の役割

 いつだってあたしは守られていた。

 能力の関係上、仕方ないと誰だって言うだろうし、あたし自身も前線に行くのは愚行だと思う。

 でも、守りたかった。

 手の隙間から溢れ出た大切なものは数え切れないほどあった。


 フェベに幸せになれるって言ったのに何もできなかった。

 目の前で紋付のルリの命が奪われた時何もできなかった。

 モモが『Dirty』に堕ちていくのを止められず余計に怖い思いをさせた。


 少しでも彼の生きる理由になりたかった。だから何か言葉を探したけど絞り出せたのは独りよがりな好意を告げる言葉だった。

 後悔しかない、後悔しかなかった。


 だから、あたしはやることをやる。何かで役に立つ。あたしの任務は何だ。贖罪はあたしが裏切り者を見つけて戦争を終えるための一手を打つことだ。それで無茶したアイツに言ってやるんだ。


 ーーーーって。


 みんなのためにあたしはちょっとだけ無茶をする。

 だから、お願いよ。

 みんなも生きて戻ってきてね。















「どう?」

『ダメ、いない。』


 本部から離れた薄暗い部屋で2人は作業していた。2人がこの場所にいることを知るのは監査局副局長とシノブ、ゴーシ、ヴィリだけだ。

 ドロシーは有線で本部に入る映像を次々と解析している。

 過去の犯罪者リストと映像に映る人物達の顔認証を行なっているのだ。


『エルナの方は?』

「そもそも本部に人が多すぎるし、さっきの襲撃で敵味方入り混じってるから、あたしの【共感】じゃ歯が立たないわよ。」

『でも裏切り者は確実にいる。』



 ドロシーが言うことに間違いはなかった。

 避難経路や後方支援部の経路流出、本部人員数など、元ウルツ班など少数精鋭の襲撃以外はほとんどリークされていた。

 加えて能力相性の悪い面々が戦わされているように感じた。

 ドロシーは状況から、監査局または情報局に裏切り者がいると推測した。

 後方支援部では隊員達の能力に関する情報は手に入らない。個人から必要な武器などについて要請されれば話は別だが、それにした所で把握されている人数が多すぎる。



『必ず見つける。待っていて。』


 エルナは頷きながらも下唇を噛んだ。

 悔しい、自分には何もできないのか。

 しかし、彼女はそこであきらめるような人物ではなかった。調査をする人間としては素人ではあるが、人の顔や演技、仕草を見極めることは素人ではない。そして、彼女はヒロタダやハーマンに技術を習い、シュウゴやオリヴィアに思考の過程を何度も見せつけられていた。


 彼らならどう考えるか。



「……ドロシー、監査局と情報局の、いや特務隊全体の能力の一覧って見られる?」

『見られるけど……。』

「出してみて!」


 ドロシーは訝しげにしながらもリストを出した。

 そこですぐに彼女はエルナの言わんとしていることに気がついた。


『なるほどね。木を隠すなら森の中、能力者を隠すなら能力者の中、ってこと。』

「そうよ、できる?」

『朝飯前。』


 多いのは、水、風、炎、テレポート、念力、植物、土、雷。汎用性や威力は様々であるも系統でざっくりと記載されているのみだ。

 しかし、ドロシーもエルナも、考えることは同じだった。



「目立たない能力、念力とテレポートに絞ろう!」

『その2つ、どちらかを持つ隊員でかつ監査局、情報局に所属する人物。5人に絞れたね。カメラ越しにサーモグラフィー、通信機越しバイタルチェックをかけてみる。』


 それはいわゆるハッキングなのであるが、エルナはそれには気づいていなかったため特に言及することはなかった。モニカやヴィリがいれば止めることもしたのだろうが。

 ドロシーはまもなく情報を手に入れるとすぐにエルナに相談した。


『この人だけ、バイタルも体温も安定してる。候補から外す?』

「……待って。」



 エルナは思案顔でドロシーの提案を止めた。

 普通ならばそうだ、安定している人物は候補から除外すべきだ。

 しかし、今の状況はどうだ?

 トーキョー支部にとってはあまり経験したことのない戦果の中心地、普通ならば動揺することが当たり前ではないのか?



「ドロシー、その人の情報は?」

『ジャン・アップソン、34歳。能力は【念力(サイコキネシス)】。24歳で入隊、28歳で情報局へ移動。独身。特に今まで目立った功績も、失敗もない。平々凡々な男性だよ。』

「……。」


 エルナは男性をじっと見つめる。

 その男の1つ1つの仕草、表情、目線。

 彼女はすぐに確信した。


「……多分、あの人だと思う。」

『根拠は? 間違ったら警戒されるよ。』

「あの人は、よく他人の目が見えているのよ。自分がどう見られているか、どうすれば不審に見られないか。演技ではそれをコントロールするのが求められる。それに遍歴も平々凡々なら嘘をつきやすいの。」


 エルナが淡々と告げる要素は、ドロシーにとって理解できるものであるがいずれも不確定要素だ。

 さすがの彼女も困ったように眉を下げる。


『バレずに確認する方法があればいいけど。』

「あるわ。その人が、もし裏切り者であるならあたしは触ることができれば分かる。」

『触れるだけで?』

「うん……信じて、ついてきてくれる?」



 エルナがあまりにも自信ありげにいうものだから、ドロシーは言い返すのも時間の無駄だと判断した。


『分かった、任せる。どうにか1人にすればいい?』

「できるの?」

『うん。情報局には、秘密のメッセージがあるからね。』


 ドロシーがそう言うとエルナは小さく微笑み礼を述べた。














 エルナがこの方法を知ったのは、実はここ1ヶ月の話である。

 訓練場にいたリーンハルトにふと尋ねたのだ。その様子を見たケイは少しばかり落ち着かなそうであったが、2人は仕事とプライベートを切り替えることが上手かった。


「リーンハルト。」

「どうした?」

「アンタ、あたしが初めて能力(エンパシー)を見せた時、弾いたでしょ? アレって本当にあたしの制御力不足のせい?」

「あー、あん時か。」

「そんなことできるんだ?」


 ケイと戦闘訓練をしていたシュウゴが興味深そうに尋ねてきた。

 リーンハルトは答えに難渋しているようで、なかなか口を割らなかった。


「確か、あの時は記憶を見るようにって言ってきたわよね?」

「そ、それも関係ある。あの時のオレはまだ付き合いが浅かったし、意地でもエルナにオレの過去を知られたくなかったからな。ざっくり言ってしまえば強い拒否によるものだ。」

「精神に影響する能力とは言え、そんなことは可能なんすか?」

「今は無理だ。オレ、かなりエルナに気を許しちまってるし、……お前らもな。ある種の信頼が前提の能力だからよ。」


 確かに、台本から作り手の心情を読んでしまう時に感じることは書き手側が受け取ってほしい、感じてほしいと願う内容ばかりである。

 ふむ、と話を聞いていると勢いよく扉が開き、パウルとその後ろにルイホァの兄・ズーハオがいた。



「あ、いたいた! シュウゴ、今いいか?」

「はい。」

「すまない、用があるのはオレなんだ。」


 相変わらずの不遜な態度で話しかけてくるズーハオを見てシュウゴがエルナをチラリと見る。リーンハルトがそれを見て勝手に納得する。


「エルナ、今ズーハオにやってみろよ。」

「えっ、いいの?」

「待ってください、何の話ですか。」

「握手してくれって話。」


 リーンハルトがそれを言うとズーハオが疑わしげにしつつも渋々手を差し出した。

 なぜか緊張感を帯びる場で、エルナはリーンハルトの後押しもあり、能力を使う。



 しかし、弾かれたように彼の記憶は見られない。それと同時にズーハオが明らかに不快な表情をして手を振り払った。


「オイどーしたよ。」

「リーンハルトさん、貴方は何をさせるつもりだったんですか。」

「何、能力の試し打ち。ズーハオならエルナのこと、警戒してんだろ? だから、信頼関係のない場合、絶対記憶は見られないってことを証明したくてな。」

「……。」


 ズーハオは警戒しながらも本来の用件を済ませるため、シュウゴの方へ寄って行った。そんな彼を放置したパウルは興味深そうにその様子を見ていた。


「確かに、オレだったら見られちまうかもしれねーなぁ?」

「オレもっすね。」

「ま、余程気持ちのコントロールが上手い奴は弾けるかもしれないけどな。」

「それなら尚更あの小僧(ズーハオ)は適任だ。」


 リーンハルトの言葉にパウルとケイは笑う。ズーハオは既に無視を決め込んでいるらしく、淡々とシュウゴに相談内容を伝えていた。













 エルナはあの時の感覚を覚えていた。

 元『Dirty』の幹部のモモやセルゲイの記憶を見た時、彼らは寝ていた。リーンハルトに記憶を見ることを拒否された時はエルナに能力を使われることを予見しており既に準備ができている状態だった。ズーハオの記憶が見られなかった時、彼は起きていたが身構えはできていなかった。シンプルに見せたくない、信用できる関係性ではない、その要素が【共感】の使えなかった理由だ。

 ならば、方法は1つだ。


 ドロシーが呼び出したジャンは約束通り、廊下に出て人通りのない場所に抜け出した。

 そこはすでにドロシーのトラップが敷かれている。


 気づかれない程度の超音波と低周波が流れている。

 この空間においては、どんな気配も感じにくい。


 本当に至れり尽くせりだと思いながらエルナは最大まで気配を消し、近づいた。最速で、ハーマンやルイホァのように。



 何てことのない。人肌。

 普通の人と同じ、温かみを帯びた。


 だが、冷たい。能力を使っただけで心の芯から冷えてしまう。



 目の前の男は今さっきまで味方の顔をしていた。

 しかし、能力を弾かれるということは相手にも察されるということと同義、男は今この瞬間から。



「あぁ……バレた?」



 敵になった。

【こぼれ話】


 エルナの能力、【共感】の成功率は相手との信頼関係、シンプルにエルナ個人との関係性に依存します。

 ただ、エルナの能力が【共感】であるという事実を認識して信じた時点で前提は達することができるためほぼこの制限は意味を成しません。

 記憶に関してはリーンハルトのように強く蓋をしたり、ズーハオのようにエルナとの信頼関係培われていない場合は見ることが難しいです。

 モモやセルゲイの記憶を覗けたのは彼が眠っていたという要因が大きいのです。


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