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Psychic Rulers 〜能力者たちの語りき話譚より〜  作者: ぼんばん
最終章 彼らの物語は続く

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248.最終決戦 -開幕-

「トーキョー避難所全域に襲撃あり、各所本部同様、急いでまわせ!」

「今回の駒に使われてる【ネクロマンシー】、本体と敵対しているのは?!」

「ヴィリ監査局長らしいぞ!」

「……ヴィリが?」


 シュウゴは後方支援の詰所で武器を作り出していた。ともにいるのは、ヴィリ率いる監査局に所属している男性と後方支援に所属する青年である。


「【ネクロマンシー】使いと交戦している現場は?!」

「応援に向かったそうですが、いかんせん数が多くこちらが不利、武器も足りないそうです!」

「なら、その根城にオレが行った方がいいですかね。」

「……あの時の貫禄のある感じがイメージあるから指示仰がれると調子狂うな。」

「……それは失礼しました。」


 監査局の男は冗談だって、と笑う。

 しかし、すぐに冷静な表情になると、後方支援部に物資供給状況の確認を行い、同時に援軍はどうするか本部に問い合わせる。

 彼は能力はないが優れた判断力と身体能力、武器の扱いに長けており、頼りになる人物である。シュウゴは大人しく武器を作り出しながら待つ。



「よし、じゃあ後方支援からはオレとシュウゴで出よう。戦闘隊員は本部が派遣、現地集合だ。君許容量は?」

「許容量……? 何のですか?」

「いや、能力のだよ。」


 そう言えば使い過ぎると、リーンハルトやモニカが鼻血を出していたことを思い出す。恐らく脳に負担がかかる影響であろうが、シュウゴはそれ程に巨大な物を作ったことがなかった。


「大丈夫です。オレキャパオーバーしたことないので。」

「それは……凄いな。」

「凄いんですか? 自分のことなのでなんとなく分かります。」


 実戦経験はない筈にもかかわらず、この状況に動じることなく、自身の能力を過信しない程度に信頼している。

 たまげた青年だと男性は苦笑いを浮かべながら分かったと頷いた。


「なら何も心配要らないな。」

「オレも頼りになる方と一緒に行動できて心強いです。急ぎましょう。」


 彼の薄い微笑みに、加えて人たらしかと詳しくは知らないもピンク頭の青年を思い浮かべる。

 そして同時に自身が誰よりも頼りにしている監査局長の姿を重ねた。










「各地、負傷者多数!」

「重傷者はこちらに!」


 オリヴィアは怒号に近い指示を耳にしながら前線に近い場所で能力の行使を繰り返していた。事前に準備したい医療ホットラインが機能しており、今のところ死者は辛うじていないようだ。


 そして、治療を進めつつ、通信機に気を配る。

 彼女は前回戦争経験者ということで、何かあれば応援に向かう任務を単独で受けていた。どこに向かうかは、本人の判断で構わないと。

 彼女自身は恐らく、七賢人と直接対決となっている元ウルツ班またはその応援に向かっているリーンハルト班から来るのではないかと想定していた。

 しかし、戦いが始まって30分ほどで意外な人物から連絡がきたのだ。


「……どういうこと?」



 彼は七賢人とは相対しない、むしろかなり安全な場所にいるはずだ。だが、彼と一緒にいる人物のことを考えれば何もおかしいことはない。

 彼らはどこに向かっているのだろうか。

 しかし、彼の言葉を信じるしかない。


「すみません。少し向かいます。位置情報は送るようにするので5分以上動きがなければ報告してください。」

「分かりました! お気をつけて!」


 オリヴィアは医療パックを装備すると部屋から飛び出した。自分が抱く嫌な予感が当たらなければいいがと願いながら。











 一方で、ハーマンはとある場所に向かっていた。

 本来であれば、班長であるリーンハルトの元に向かいたかったが、自分はタバートと決して相性がいいわけではなく、向こうにはケイもいる筈であるため不要である。

 代わりに、リーンハルトから託されたある男の討伐に向かっていた。


 それはかつて自分がルークと戦った時、襲撃をしてきた男、【腐敗】を操るヤオ・ダオの元だ。

 これに関しては、リーンハルトとシュウゴからあるアドバイスを貰い、対策をしている。


 しかしながら、辿り着くまでが難儀である。敵が多すぎるのだ。

 モニカの元に応援する舞台は、【ネクロマンシー】で復活した傀儡達やキメラに苦戦して足止めを喰らっている。


「クッソ、モニカさんの場所までいけない!」

「落ち着け、慌てても向かえない。」

「……すみません!」


 悔しげに呟くのは現モニカ班の男だ。

 【紙】を生み出し、次々と包み込んで動きを封じる。しかし、時間に制限はあるらしく完全に制圧できるわけではない。

 さて、どうしたものか。

 ハーマンもまた【鋼糸】を振るいながらこの場を抜ける策を講じていた。












 一方で、ルイホァは全力で空中を移動していた。

 小隊に振り分けられなかったことにも事情がある。それは実兄・ズーハオのいわゆる我儘だ。


 ちなみにズーハオは一応パウル班に振り分けられているが、彼は、パウルがエーコを引き離したことを確認すると、その場の敵を8割方片付けたところで、「後は任せる。」と抜け出したことは現場の人間しか知らない。



「リーンハルト班とパウル班じゃなきゃこんな勝手許されないよ。」


 恐らく兄は自分より早く現場に着くのだろう。

 悔しいが、能力使用時の彼の移動速度は他の人物と比にならない。

 そして、彼の読み通り空中はよほど移動に邪魔が入ることはなかった。時折、鳥のキメラが浮遊しているくらいでルイホァは造作もなく討伐できていた。


 しかし、そのことはあまり喜ばしいとは言えない。

 ズーハオは自分に空路を勧めるときに他の誰にも伝えていないと言っていた。理由を問うと彼は淡々と当然のように言った。



『戦の時は味方も敵だと思え、父様はいつだって言っていただろう。』

『でも、支部の仲間だよ……?』

『先の戦争もアドルフという裏切り者に痛い目を見せられた。その経験を活かすべきだ。だからオレは未知の支部で唯一100%信頼できるお前にだけ言う。』


 突然の信頼にむず痒く思いながらもルイホァはにやけそうになる口を固く結ぶ。目の前の兄は不思議そうにしていたが。



『オレは、パウルさんを助けたい。手伝ってもらえないか。』

『……分かった。』


 ルイホァが即答すると、彼は珍しく動揺を見せた。


『頼んで言うのもなんだが、リーンハルトさんのことはいいのか。』

『うん。きっとケイが行くから大丈夫。』

『あぁ、なら大丈夫だろうな。』



 その時のズーハオがルイホァを見て何を思ったかは彼女は知らない。しかし、その次の瞬間には2人は特務隊員の表情に戻り作戦を確認し始めたのだが。


 そして、現状ズーハオから連絡がないということは彼もまた滞りなく移動ができているということ。つまりは、ワープホールによる移動路が読まれており、本部か情報局に裏切り者がいるということを裏付けている。

 エルナには、自分から連絡がなかった場合は裏切り者を探すように依頼してある。彼女はそれ以上追及することなく頷いた。


「お願い……みんな!」


 ルイホァは目の前に迫る決戦の元に向かうため、速度をさらに上げた。
















「やっぱりジパングに集めてきたか。僕が狙いだと言わんばかりの急襲だ。でも、世界各地で戦いは起きているみたいだね。」


 シノブの言った通り、モニターでは各地戦いが起きていた。場所によっては元七賢人や紋付が召喚されている場所もあるようだ。

 その勢力は想像以上に多く、再生する敵に苦戦を強いられているようであるが、【ネクロマンシー】を操るコウをヴィリが倒さねば戦況は変わらない。



「さて、僕たちも行こうか。」

「えっ、シノブさんは本部の中枢なんですからここにいないと。」

「それではマツモトくんを携えた意味がないよ。メルシエさんを呼ぶなら今のうちにね。恐らく、これから行く場所は連絡がつかなくなるから。」

「一体どこへ……?」


 隊服を着ていることも珍しかったが、何より彼は武器をこさえており本気であることが窺えた。ヒロタダはそれに倣って武器を腰にかける。

 シノブはその物分かりのいい反応に口角を上げつつ、あっさりと言ってのけた。



「今から行くのは大ボスも大ボス。『Dirty』の親玉の元だ。」



 ヒロタダは思わぬ言葉に動きを止めた。

 だが、シノブの目を見る限り本気だろう。


「もう先手は打ってある。先陣は切ってもらっているからね。」

「なら、なるべく人員を多く割いて行くべきでは……。」

「それだと一般市民を守れない。それにワイアットくんに聞いただろう、彼の能力は未知である上、数がいたって意味がない。」


 リーンハルトの回想を聞く限りではシノブの言うことは最もだ。ヒロタダは返す言葉もなく頷くより他なかった。

 物分かりの良さにシノブは満足げに頷くと、ただ、と付け加えるように言う。



「僕は彼を間近で見てきた。それは無駄にならないと思うけどね。」

「……どういうことなんですか? 『Dirty』の親玉って、もしかしてーー。」



 ヒロタダが口にした名にシノブは首肯する。

 俄には信じ難い。しかし、それが真実ならば。

 彼は自作自演を演じ続けて目的のためには手段を選ばず奪いたいものを奪ってきた。それをここで終わらせなければならない。

 それに彼の能力は恐らく、自分に都合が良い筈だ。


「わかりました。行きましょう。」

「……頼もしいね。」


 シノブは目を細めると呟いた。


「あの男は厄介だ。もしあの男を殺せるチャンスがあったら周りの犠牲は気にしないでね。僕も含めて。」

「……可能な限り、守ります。」

「機会を見失わなければ構わないよ。」



 どこか嬉しそうな彼を見つめながらヒロタダはシノブに倣って歩を進める。それと同時に、オリヴィアに連絡を入れつつ自分の予測は外れてほしいと願わざるを得なかった。

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