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Psychic Rulers 〜能力者たちの語りき話譚より〜  作者: ぼんばん
最終章 彼らの物語は続く

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247.特務隊は無能ではない

 ついに戦いが始まります!

 ここからは残酷な描写も増えますのでご注意ください。

 運命の日。

 この一夜でたくさんの命も、環境も、全てが大きく傷つき、失われることになる。


 ただ、この日の夜明けをオレは一生忘れないだろう。








 4月30日。

 日中より警戒態勢が敷かれる。

 事務室に集合時間前からリーンハルト班はなぜか集まっていた。


「誰が呼び出したわけじゃないのにな。」

「オレ最後に入ってきて何かすっぽかしたかと思ったわ。」

「僕もだ。」


 ハーマンの言葉に最後に入ってきたリーンハルトとヒロタダは焦りが滲んだコメントを零した。

 それぞれはもう既に着替えており、準備は万端だ。黙々と武器の名前を手書きするシュウゴの作業を見つめていたルイホァが顔を上げた。


「何となくだけどさ、顔見ると安心するから来ちゃったんじゃない? 私はそう!」

「オレも! それすげー分かる!」

「能天気ねぇ。あたしいつもより早く起きちゃっただけよ。」

「私も柄になく早起きしちゃったわ。」


 ふふ、と笑うオリヴィアはどこか楽しそうだ。

 するとルイホァが唐突に立ち上がり、横にいたケイとエルナを引っ張る。



「ねぇ、円陣組もう! 私やってみたかったんだよね、仲間って感じの!」

「円陣?」

「……いいんじゃないの。」


 ここでやっとシュウゴが顔を上げた。加えて先ほどまで眠そうにしていたエルナがにやりと笑ったものだからルイホァは気を良くして、大人達を集め始めた。



「じゃ、班長! 何かいい感じの掛け声!」

「えぇ、オレ?」

「当たり前だろ。」


 ヒロタダがルイホァの提案に更に追い討ちをかけるとリーンハルトは悩みながらも口を開いた。



「絶対、この任務成功させるぞ。」



 静かだが、強い意志の篭った言葉。

 7人とも頷くと揃って了解を示す。

 これだけで嬉しいのだから、自らを重症とリーンハルトは思ってしまう。


 数分もするとそれぞれ同じ配置の面々に並んで向かっていく。

 リーンハルトもまたケイと同じ待機場所であるため揃って向かった。それにしても皆大抜擢だなと他人事のように思いつつもその時を静かに待った。



















『汚れと称されてきた先駆者達よ。』



 タバートをはじめとした七賢人、そして『Dirty』の一員達は来る時、ボスの言葉に耳を傾ける。



『今こそ革命の時だ。付け焼き刃の対処など我々の前には無に等しい。約束の刻、メーデーがすぐそこだ!

 行くぞ!』


「【生命の血樹】。」

「【ネクロマンシー】。」

「【百花繚乱】。」

「【億万蜂】。」

「【腐敗】。」



 時計のてっぺんに2つの針が並ぶ。

 静けさに包まれた街に次々と爆音や悲鳴が響き渡る。避難命令は届いており、街には人が殆どいなかったが、避難経路となる場所には人の姿が見えた。組織員達は街を破壊し、幹部達はエリア:ジパングで暴れ始める。

 【ネクロマンシー】で復活した死者は街を闊歩し、一般市民や隊員達に手をかける。


 しかし、支部長のシノブはその報告を受けて口角を上げた。全て予想通り、まさにその言葉がぴったりだったからだ。


「何て安直。

 こちらの偽装(ちょうはつ)にまんまと乗る浅はかな奴らよ。だが、彼等のプライドはエベレストに匹敵する。この日でなければ革命は起こらないと信じ切った固い思考。

 そんな思考を読むのは僕たちにとっては朝飯前だ。」


 シノブはヒロタダを傍らにつかせていた。

 ヒロタダは緊張した面持ちで本部から指示を出すシノブを見つめた。先程、シノブはヒロタダに驚くべき内容を告げた。宣戦布告として流された動画、それはシノブとウルツが偽装した映像なのだと。

 市民や隊員の危機意識を育て準備を整える、加えて『Dirty』に対する挑発が狙いである。


 お前らの狙いは分かっている、正々堂々と来い、という意味の開戦宣言だ。



「第一作戦、成功。第二作戦に移る。」



 シノブのその言葉と同時に七賢人の前には元ウルツ班や精鋭達が飛び込む。

 その速さは一般人では到底追いつけない、剛速。











 ある避難所前では人々を人喰い花が襲う。

 かつて元ウルツ班のゾエとパウルの弟のフィリップを食い漁った凶悪な技である。


 なぜこんなにも的確に避難場所を襲えるのか、自分達がこのバケモノのような範囲の、威力の、速さの人間を相手取らねばならないのかと、誘導した隊員は冷汗が止まらなかった。

 しかし、その花の侵食はすぐに収まる。


「【針地獄】!」


 その花を縫い付けるような攻撃が地面を這う。

 目の前の状況に僅かにエーコが眉を顰め、すぐに不気味に微笑んだ。


「……へぇ、見覚えのある。」

(フィリップ)仲間(ゾエ)の仇、とらせてもらうからな!」


 花を操るエーコの目の前にはパウルが飛び込む。

 周りにいる『Dirty』の組織員達はパウル班が制圧していく。




 同じ刻、支援物資の供給所の1つに【ネクロマンシー】により召喚された傀儡と【腐敗】を操るヤンが現れた。

 ハーマンがルークと戦った時に2人を襲来した七賢人である。触れるものを腐らせて、腐食する気を放つこともできる厄介な男である。

 猛毒とも言える空気が広がる中、狭い空間を一閃するように【雷】が落ち、場の空気の流れが変わる。


「貴方の相手は私です!」

「雷神か……。」


 辺りを腐らせていくヤオの前にはモニカが轟音を立てながら立ち塞がり、一気に距離を詰めた。



「「小規模ワープホール発動!」」



 その2人はほぼ同時にワープホールを発動した。

 避難先の市民を傷つけないため、2人はそれぞれ郊外に飛んだのだ。元ウルツ班をはじめとした実力者は雑魚の制圧でなく、あくまでも七賢人を一般市民から遠ざけることを優先し、討伐には隊員が応援に向かう。その形をとるように命じられていた。

 そのため一部の人間には、班の誰かの元にとぶワープホールに加え、ある僻地にとぶ小規模ワープホールの2つを渡されているのだ。











「アンタの相手はアタシよ!」

「自分にあてがわれたのは目立つ能力もない雑魚ですか。拍子抜けです。」


 【ネクロマンシー】を操るユーハンはヤンの攻撃を冷静に避けた。

 ユーハンは感染症センターでオリヴィアの婚約者であったシモンを復活させ襲撃させた人物であり、確かな実力者だ。小規模ワープホールの範囲外、奇襲でなければそこまで接近するのは容易くない。

 ここは高層マンション近くの広場、このまま戦えば付近の避難所に被害を及ぼす可能性がある。


 ヤンが苦虫を噛んだような表情を浮かべそうになった時だった。


「ならアンタの人形ごと潰すような派手な能力、かましてあげるよ。」

「……ッ、キメラ!」


 ヴィリが上空から急降下してきてそのままコウの肩に日本刀を突き刺した。


「小規模ワープホール発動。」

「ヴィリ、アンタ……!」


「ごめんなさいヤンさん。」


 自分が命令権を持つ人間だと、本部にいなければいけない人間だと自覚はしていたのだ。

 だが、彼は小さく今までにない強い瞳で睨みながら呟いた。



「村のみんなの、兄さんの仇は僕が討つ。」



 身近にいたのは自分のはずなのにこの青年の憎しみに全く気づかなかった。ヤンの後悔など露知らず、ヴィリはそのままユーハンとともに別の場所に飛んだ。










「タバートさん! どんどんやっちゃおうよ!」

「おおよ。」


「何でここに七賢人が2人も!」


 本部を襲撃したのはタバートと蜂使いのハズナであった。タバートは知っての通り、リーンハルトの父親であり、彼の母、フェベ、親友のエメリッヒの仇である。ハズナはケイがインハイ大会後に紋付と戦った際に、遺構を奪いに現れた青年だ。


 七賢人は分かれて旧人類の避難場所を中心に攻めると踏んでいたが、本部に2人も乗り込んできた。

 だが、それも想定済み、その場に素早くリーンハルトとケイが飛び込む。


「待っていたぞリーンハルト!」

「こんのクソ親父、年貢の納め時だ!」


「あれあれあれ、ハンフリーに苦戦してた雑魚じゃん!」

「あん時と比べたら後悔すんぞ!」


 新人類として進化した2人の速度は七賢人に追いつくには十分な速さであり、容易に発動範囲に入った。

 2人同時に小規模ワープホールを発動させようとした時であった。



「【黒炎】。」



 リーンハルトとタバートの間に【黒炎】が割り込む。

 しかし、ケイは能力を発動していない。その場にいた4人全員が一瞬動きを止めた。驚くべきことにリーンハルトの前に飛び込んできたのはニヨウだった。


「「ニヨウ!」」

「人造人間……!」


 ニヨウはタバートを鷲掴むとそのままワープホールを発動して消えてしまう。

 突如標的を失ったリーンハルトは、苛立ちと動揺のためか露骨に舌打ちをかました。


「んっだよ!」

「ほぅら、そっちばかり気を取られてると死ぬよ!」

「リーンハルトさん!」


 その隙を七賢人が見逃すわけがない。

 しかし、そのハズナが放った毒針は炎により焦がれ、ケイはその好機を逃さずに腕をとった。すかさず、彼は小規模ワープホールを発動した。


「ケイ!」

「行ってください!」



 リーンハルトはケイのワープホールに飛び込もうとしたが、ケイの鋭い言葉に一瞬だけ足を止めてしまった。

 そうなってしまえば手遅れで。

 ケイは口角をわずかに上げてリーンハルトに頷くと、確かにリーンハルトもまた頷いた。リーンハルトには、ケイの表情が七賢人を軽く凌駕した時のエメリッヒの表情に重なって見えたのだ。それに嫌な予感がしていた。

 タバートの方に行かなければいけない、と。


「リーンハルトさん、行ってください!」

「ここはオレ達が応戦する!」

「……ッ、ありがとうございます!」


 2人が引き連れてきた敵やキメラの一部と残りの隊員が引き取ってくれた。

 リーンハルトは振り切るように首を横に振り前を向くと、照準を2人が飛んだ先に変更し、足早に目的地に向かった。



 戦は開戦された。


 各地で戦火が上がる。

 先に語った通り、戦争は長く続かない。

 終結まで数時間。

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