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Psychic Rulers 〜能力者たちの語りき話譚より〜  作者: ぼんばん
12章 無効化

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242.覚悟

本章最終話です!

次回12/9より最終章始動です!

「以上がオレが経験してきたこと、戦争のまぁ……大まかではあるが内容だ。」



 そう告げたリーンハルトは目の前で涙するエルナと、ぐっと堪えるルイホァ、悲しげに眉を顰めるシュウゴ、そして何か考え込むようなケイを見やる。

 ハーマンとオリヴィアはどこか懐かしむような表情をしており、ヒロタダはどうも驚きを隠せないといった様子だった。

 エルナもまた泣きつつも、自分がリーンハルトと既知であったことには少なからず驚いているらしく涙を拭いながら不満を零した。


「アンタ……会ってたなら言いなさいよ。」

「そ、そうだ! 僕だって……確かにそんな事件あったけど、まさかあの時の特務隊員がリーンだったなんて。」

「気づかない方もどうかと。」


 シュウゴならばあり得ない状況、彼は甚だ疑問だったらしく間髪入れずに呟いた。



「で、ここからが本題だ。」



 声のトーンが低くなったリーンハルトに7人は目を向けた。


「戦争は、今日こうやって笑いあってた人が不意に亡くなる。それが現実だ。お前らは兼任もあるし、縁があったとは言え完全にオレのエゴで巻き込んだ。改めて聞きたい、この事実を知っても戦争に参加できるのか、ってな。」


 腕組みした彼は決して止めるつもりはないらしく、仕方なさそうに笑みを浮かべながは続けた。


「別に不参加でも咎めることはない。幸い開戦までには時間があるから、ちゃんと寝て頭を整理してから自分で考えて家族に相談して決めてほしい。

 任務ならまだしも、分散されるのが当たり前な戦場で、オレはみんなのところにすぐ行ける保証はできねぇ。」


 エメリッヒの件で間に合わなかった、彼はよくその事実を理解していた。


「……決まったら個別でオレのところに報告に来てくれ。たぶん今は話聞いて纏まらないだろうから、明日以降な。話はそれだけだ。」


 リーンハルトはどんな顔で笑っているのか、自覚はないのだろう。

 そこからは流れ解散となった。普段通りの雑談を交えつつも、何となく皆気はそぞろであった。



「ヒロタダくん。」

「はい?」


 帰り間際、見送るリーンハルトの目を盗んでオリヴィアが小さく囁いた。


「今度、ーーー。」


 その瞳は何かを決意したような目。

 決して以前までの彼女には見られなかったものだ。ヒロタダが首肯すると、彼女は満足げに頷くといつもの笑みを繕って出て行った。

 リーンハルトに見送られた他の班員に追いつくと、また手を振って去っていく。


「何だってオリヴィア?」

「何でもないよ。」

「あんだよ、仲間外れか。」


 そう言いながらも薄々彼女の言葉は予想できているのだろう。

 その場ではヒロタダは何も言わなかった。それを追及することなくリーンハルトもまた何も言わずに含み笑いを貼り付けるだけであった。
















 翌日、再度元ウルツ班の面々はシノブの前に集められた。シノブはいつもの相貌を変えることなく見守るだけである。

 ため息を漏らすのはパウルだった。


「ったく……。まさか早々に辞退されるとはなぁ。」

「なぁに、アンタのとこ辞退者が出たの?」

「そ、元々戦いは苦手な奴だったんだけどよ。後方支援部に引きたいって。」

「まぁ、お世辞にも私たちの戦争の経験は易々と受け入れられるものではないですからね。私の班でも出ましたよ。前線には出たくないって人。たぶん、私たちの覚悟も、客観的に見ればきっと重すぎるんでしょうね。」


 残念そうな、期待外れと言わんばかりの言葉であった。

 そして、モニカが言及した覚悟について、それが何を意味するか具体的に示す者はいない。



「アタシんとこは幸い全員参加してくれるって。でも実力者はアンタらのとこほどではないから、正直七賢人クラス……いえ、紋付相手でも厳しいものはあるわ。リーンハルトのとこは?」

「まだ返事はもらってねぇ。てか戦争について話したのも昨日だし。」


「「「は?!」」」


「まぁ、僕もそんな急いで返事をするようにって言ってないからねぇ。」


 シノブは予想通りと言わんばかりにからりと笑った。リーンハルトもまた心強い味方を得た思い頷いている。



「ただ君の班は全員参加するって言ってくると思うけどね。それを踏まえて配置割はしちゃったけど。」

「なん……つうか配置割って班単位で動くんじゃないんすか。」

「そうもいかない。リーンハルトもよく理解しているだろう。」


 ずっと黙っていたウルツが放った言葉にリーンハルトは押し黙る。


「能力の相性や制圧力を考えた結果だ。悪く思うなよ。」

「……思ってねぇよ。アイツらは大丈夫だ。」


 リーンハルトが強めの言葉で告げると、ウルツは目を瞬かせたものの、そうかと小さく呟き話を続けた。

 その含まれた感情の機微はシノブのみが気づけたが、彼もまた何も言わない。



「ただ、せっかく培ってきた班同士の連携を無碍にするのもいただけない。だから、イチヨウに言ってあるものの開発を進めていた。……これだよ。」

「これって……。」

「小規模ワープホール。1回切りの簡易的なもの、半径2m内にいるものを飛ばすことができる。座標点を登録しておけば特定の人物の元にも飛べるよ。」


 いつどこで誰の元に飛ぶか、よく考えるといいと彼は告げた。

 そして今後の配置について、ウルツが引き継ぐようにして説明を始めた。リーンハルトはそれを聞きながらも、あることについて思案していた。










 一通り説明を聞くと、すぐに解散となった。

 リーンハルトは1人でぶつぶつと何かを呟きながらすぐに部屋から出ようとすると、扉の外側でうわ、と驚いた声がした。

 不意に顔を上げると、ヒロタダが立ち尽くしていた。


「おっ、ヒロタダじゃねーか。どうした?」

「何か用だったかしら?」

「皆さんお揃いですか。すみません、重要なことを話してたんですよね。ヴィリさんが通してくれたんで部屋の前まで来てしまいました……。」

「ああ、マツモトくんは構わないよ。」


 へらりと笑うシノブにヒロタダは恐縮そうに肩を縮こまらせる。相変わらずの憧れなんだなとリーンハルトが微笑ましく思っていると、突然ヒロタダはこちらを向いた。



「リーン、昨日の話なんだけど! 僕はリーンが嫌だって言っても参加するからな!」



 ふー、と鼻息荒く吐き捨てるヒロタダにリーンハルトは目を丸くした。

 しかし、彼の瞳の奥に揺らめく強い覚悟を感じ取ったリーンハルトは真剣な表情に変わった。


「戦争は優しくない、お前にかけられる期待も決して小さくはない。いいのか。」

「いい、僕が決めた。リーンが僕のことを親友って言っただろ。なら、僕にも背負わせてくれ。」


 リーンハルトは下唇を強く噛む。



 正直なところ、話して引かれるのではないかと思った。情けない、自分のエゴで選んだと呆れられるのではないかと。

 それを一瞬でも疑ったことが恥ずかしい。


「……なら、頼むぞ。」

「もちろんだ。」


 ヒロタダは笑顔で頷く。

 その笑顔を見たリーンハルトは先ほどまできつく結んでいた口元を緩め、微笑みを浮かべた。

【こぼれ話】

 パウル班の諜報員はアマーリが襲来した時にカジェタノと組んでいた青年と同一人物です。元より戦闘は苦手でその頃から恐怖は抱いていました。

 ちなみに同期のミゾレは元気です。

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