8 アンティック・ディスポジション 5
「・・・はて?余の身に覚え無き、碧眼の邪魅なる残留思念が遠ざかってゆくが・・・まあ良いか」
【ルーミィ】のブリッジでは、簀巻き状態から解放されて蟀谷に人差し指を翳す何とも滑稽な姿をしたリトルが、明利のシートで独り寛ぎながら遠く飛ばされて行く強襲突撃艦【鳥嶺汪】の軌跡を見送りポソりと呟いていた。
《相克の結界》と《多階層胎蔵界結界》による呪力統制空間振動干渉力場が生んだ、結界干渉嵐とも言える決壊励起振動波の影響は、【ルーミィ】が生成していた防御呪壁で中和されていた為、艦内へと到達する事無くその干渉影響を殆ど生じさせてはいなかった。
一方で、防護呪壁も無いまま結界干渉嵐に巻き込まれる事となった《ヘルヴァ》隊の各機は、滝壺に放り込まれた木の葉の様に有りとあらゆる方向に引っ掻き回されていた。
「だっあ!あぁ、ぁぁ、ぁ!痛ったぁーぁーぁース!だからぁ、くそっ、くそっ用法容量を守れぇって、くっそぉおお、使用方法を見てねぇ~ってあッレ程言ったのにぃ~!」
スカルメール・VF404ヘルヴァ隊長機のコックピットでは、パイロットシートに確りと固定されていたマミラリアが、激痛に晒され得も言われぬような酷い形相で操縦スティックを握り締めていた。
《多階層胎蔵界結界》振動波が生じさせた副産物である、全身に奔る電撃ショックで突き刺されるような強烈な激痛が体中を縫う様に波状に襲い掛かり、彼女はその不条理に齎された痛みを必死に耐える。
これがNAT社の技術顧問を務めるイケメン君の言っていた副作用なのか。
「ダハーっァァァ、不聡明でお利口でないアホバカ部下達ばっかなんだよ、悪かったわな!!いて、いて、いってぇ!!痛いぞこれはぁ!!くそ英玲奈がぁ!ううううううぅぅううううぅぅ、後でお前は問責懲戒処分上申じゃああ!!痛って、てて、ててぇ、てててぇぐほっ!」
意識そのものが何処か遠くへと持って行かれる程に体中を突き刺す激痛の嵐は、急速に遠ざかっていく宰華帝国強襲突撃艦【鳥嶺汪】と共に、ゆっくりとではあったが徐々に鎮まり始める。
「えへぇっ、英玲奈でへっす。でへぇ、でへぇへぇ、へぇ~、ぶっ跳んでっ゛だぁー。宰華の艦を何どがじだんだじょー。隊長ーでもって、身体全ー身痛ったァ~い。ぐしゅん、ぐしゅん。ぐっしゅ~ん。へぁ?鼻血、で、ででででで、出てたぁ、でへへへ濡れてるぅ!!!」
英玲奈のコンバットヘルメットの下では、美貌を誇る彼女の端正な形の鼻腔から、一筋の血露が華麗に滴っていた。
「ジュリアーだぁぁぁあああ!!隊長それ好い!痛ってーのなんのって。痛っ、英玲奈!バカだお前は!!てめー、痛ったーぁ!ぜってー収容所送りにしたる!!!くぉぉぉお!まぁだ、おっ、お、ぉ痛ってぇぇぇぇえ?!ホントだにゃ、は・は・鼻ぢにゃ??ひっどぃにゃぁぁぁあーん、あん、あん、あーんお顔面が濡れてるぅーにゃ~」
ジュリアのJKアバターが、鼻を覆って悶絶しながら英玲奈を罵倒する強烈な悪態混じった絶叫を響かせる中、今度は反対側の北東天から接近して来るもう一隻の強襲突撃艦【鳥海汪】を目掛けて、北東天を守護していたリーザ機《チューブラ・ベルズ》が勢い猛然と突進し始めた。
「リーザ怒った、こんちくショー!!鼻ぢ出たぁー!喰い千切ったるぅ!!がるるるるぅぅぅ。思い知れ!思い知れ!思い知れぇい!愚か者めがぁ!!」
先ほどの【鳥嶺汪】を撃退した時に生じた、多階層胎蔵界結界振動波の余波を受け、こちらも鼻腔部から大量出血状態になっていたリーザは、【星銀小玉龍】を拿捕する為【鳥海汪】が艦首から中央部へと大きく開いていたセンター・ウェル・ドック目掛けて、これまた至近距離にて《MIRV-TZQr2》弾頭を豪快に叩き込む。
「マミラリアよぉお。ああァっ!!お願いよぉぉぉリーザちゃんも、落ち着いてぇちょい待て、待って~ぇ!だぁーかぁらー!!待てちゅーとンのが・分らんのかぁぁあああー!!!!!」
大きなバクダンフィギアを抱え、萌える目をしたリーザのロリポップバージョンアバターが、マミラリアの制止も聞かず彼女の眼前を飛び抜けて行った。
「思い知れ!思い知れ!!思い知れ!!!」
「お・ね・・が・・・い・・・・クッソォ!リーザァてめーが愚か者じゃぁ!!マミラリアだぁぁ、総員思い知るぞぉ対ショック姿勢!っても如何にも為らんが!!顔面濡らしたこのバカ共がぁ、生き残れよぉ!!!!」
マミラリアの絶叫と共に【鳥海汪】が大きく開いていたセンター・ウェル・ドックを砕き落として、再び積層爆裂する白亜の《多層胎蔵界結界》が発した、結界干渉嵐の決壊励起振動波に巻き込まれる彼女達の機体は、又もや激しく弾かれ波間に漂う笹葉船の様にクルクルと舞い踊る。
やがてマミラリアのコンバットヘルメットの内装ディスプレイには、大きな血飛沫がふわふわと舞い始め、噴き出した鼻腔部の出血が彼女の頬を伝い耳朶の下あたりへと続き、ゆっくりと流れ伝う不気味な生温い感触をマジマジと感じていた。
「マッ、マミラリア・・・だぁ!顔面濡れ゛だ・・・鼻゛ぢでだぁ゛う゛ぇ゛え゛え゛え゛。あだダ、ダ、ダ、ダ。痛っ、痛っ、痛ってぇ、痛いじゃないか!リーザっ!皆は無事かぁ?!」
「リッ、リリリーザぁはぉ~ぅ、ケロケ~ロぉ無事じゃなーいよぉボハわぅううう!デロデロォ~で、出た、出てしもたぁあぁ。痛ったぁーい!さっきより痛ったぁーい!!」
何かの水解物なのだろうが、酷く飛び散る音がする。
「マミラリアだぁぁぁぁあこれも、うぉぉぉすっごく痛いぞ!!・・・と、と取説を良く読んでぇ~って・・・ああぁ、くっそぉ~リーザは取説自体が読めなかったんだっけぇ?リ゛ーザぁ゛、て゛め゛え゛も゛問責懲戒処分上申決定じゃー!゛!゛」
「ジュリアげほぅ。たぃチョ~・・・それ・・・ぐぽっ!!」
続けてこれも何かの水解物なのだろうが、酷く下品に飛び散る音がした。
「え、え、英・玲・奈・でぇ・す。皆のために祈りま・・・しょう・・・合掌ー」
「桃凜っす。隊チョー、興~奮して鼻血噴き出してる場合じゃありませんよっす。イイから早いとこさっさと婿殿を押さえに掛かるっす」
古代地球連邦の民族衣装を纏った桃凛のチャイニーズアバターが、大胆に切れ込んだサイドスリットから短い太腿を露わにして、偉そうにマミラリアを指差している。
その遥か前方では、艦腹に開いたセンター・ウェルの舷側ぎりぎりに展開された多層胎蔵界結界により、一瞬で弾き跳ばされた【鳥海汪】の巨大な艦体が、無残にも捥ぎ取られた破片をまき散らして激しく旋回を始めると、先程の【鳥嶺汪】と同じ運命を辿って襲撃軌道から急速に逸れていった。
「マ・マミラリ・アだ。 桃・凜か?何故・お前は・鼻血出んのだ?・・・くっ、おっ前丈夫だなぁ、一遍死んでみぃ?一遍!なぁ、死んでみぃ?全身の血、全力鼻血で噴き出してぇ!スッとするぉお?」
マミラリア隊長の般若アバターが発した声に、一瞬、桃凛のアバターはハッとして辺りを窺う。
目の前には、血潮吹き出す顔面を押えながら悶反り返って足をバタつかせるジュリアのJKアバターと、その周りをリーザのゴスロリアバターが血みどろのゾンビバージョンで這い摺っており、温かな挙身光に包まれた英玲奈の女神様アバターでさえも、その白き聖衣を鮮血に染め上げて二人のアバターの後ろに呆然と佇み何かに祈りを捧げていた。
惨状を晒してのた打ち回る、他メンバーのアバター達に気が付いた桃凛のアバターは、さも跋の悪そうな表情をしてモジモジし始める。
「・・・桃凛っす。お、おお、おおっす。隊長、自分不感症っす、いや、躰丈夫っす。・・・うんんっと、あっ!痛いかなー、なんて。わぁお痛い、わー痛い~わよーっす。みんなー大丈夫かっす!」
「貴っ様ぁワザとらしいわぃ!今から吹き出せ、そーぜつに吹き出せぃ!!ぶっしゅ~」
マミラリアは怒り心頭バイザーを開き、桃凛のアバターに向かって禁じ手の必殺《鼻血飛沫》を吹きかけて八つ当たりする。
【ルーミィ】の近接防空宙域には、《相克の結界》と《多重胎蔵界結界》による激烈な呪力統制空間振動干渉で満ち、その余波で再び派生した結界干渉嵐が吹き荒れ狂う中を、《ヘルヴァ》隊の一行は玩具の様に一層揉みくちゃに掻き回され続けていた。
だが、この彼女らの捨て身の活躍により、宰華帝国強襲の脅威は確実に去ったのである。
「おおぉ、何と!何と実に見事ではないか!!何だ?あ奴らのあの闘い方は?少しヒリヒリするが、ちと乱暴過ぎはしないか?クッ、ククーくくくくく!あーっははははははー!!余は、気に入った!気に入ったぞぉ!!」
「如何したリトル、宰華艦からの神経攻性侵入にでもヤラレタか?何が可笑しい、一体何が起こっているのだ?」
冷たい目をしてティアスが発した疑念の声に、然も勝ち誇ったかのようにリトルが笑いながら振り向く。
「案ずるでないティアよ。喰われたら喰われたでな、バリアブル・フィンで宰華の艦を内部から切り刻んでやろうと思っておったのだが、不要であったわ。あの者共が見事にやりおったぞ、宰華の艦を殴り倒しおったわ!」
当然の事ながら、通常空間から隔離され防御呪壁に護られた【ルーミィ】には、呪力統制空間振動干渉力場の発する結界干渉嵐の影響は直接及んでおらず、リトルは独り大層ご満悦の至りで実に楽しそうに笑い転げていた。
「何なのよゥー全天走査まっ白だよゥー、なーンにも探知不能ゥー、通常空間から完全隔離されてるから、これじゃ外の様子が判んないよゥー」
「何なのよゥーこりゃリトルゥー、何時までも転げまわって笑ってないで、この変な呪術的閉鎖空間を早いとこ《何とかの術》で開封してよゥー」
「そうだぜ、《スカルメール》の連中、如何なっちまったんだろう?迦楼羅姉さんは無事なのかな?」
周囲の状況や、何が起こっているのかさえも判らないまま困り果てたテミア達の声に、笑い転げていたリトルはひょいと立ち上がると、実に和やかな雰囲気で頬を紅潮させながら素直にラミアの注文に応じた。
「安心せい、もう既に戦闘は終わっておるわ。ああ良かろう、この程度の積層犎程式の解犎などちょちょいのチョイだ。余に任せるが良い」
「な~らやれ、直ぐにやれ!勿体ぶって、宰華の艦の腹の中だったりしたら承知しないからね!」
ティアスの文句に一瞬ムッとした表情を見せたリトルだったが、複雑に絡まり複合練成された二つの人造結界結合を解き放つべく、高密度圧縮高速解除呪符をご機嫌に詠唱し始め、やがて彼女の発する詠唱の音韻旋律は多重音階を呈し、所々人間の可聴領域をはるかに凌駕して奏でられながらゆっくりと共鳴していった。
そのさも楽しそうな詠唱の声色に載せて、白磁色をした多層胎蔵界結界の複合結界群が舞踊る様に解犎開闢を始めると、そのタイミングを見計らって結界空間の外側に待機していた、迦楼羅少佐率いる《スカルメール・センター3》の残り2隊が姿を現していた。
「ローゼンバルトだ。聞こえるか?宰華突撃艇の残存掃討は全て終了した。敵護衛空母も撤退したぞ。当宙域の制宙権を完全掌握し、目下貴艦は我々の絶対防空圏内にある。聞こえるか?SID専属艦ルーミィの諸君、《VF404ヘルヴァ》隊は無事か?」
「マミラリア・ルエッティー准尉であります。SID専属艦ルーミィ及び《VF404ヘルヴァ》隊全機無事であります。大隊長!し、少佐あぁ!!がんばりましたあ~ぁ」
白い髑髏を染め抜いた勇壮な《海賊旗》を掲げる迦楼羅のアバターと、力強い気迫の籠った声を聴き、マミラリアは、ヘッドスクリーンの彼方此方に凝着したベトベトの血糊を気にも留めず、大きな安堵の溜息を吐いていた。
そして同時に、清浄循環器のクリーン・エアコンディショナーでも分解できない程の血生臭い空気に思わず嫌気が射したのか、誇らしくも不甲斐ない部下達に沸々と怒りが込み上げて来るのを感じていた。
「ローゼンバルトだ。凄い戦いだった様だな諸君。宰華の突撃艦が二隻、ボロボロになってフっ飛ばされていったぞ。ハハッ!いいぞ、良くやったなマミラリア准尉!ヘルヴァ隊の諸君。褒めてやるぞ!!」
「マミラリア准尉であります。ハッ!光栄であります」
「ローゼンバルトだ。それにしても凄惨な有様だな、大丈夫なのか?貴官らのアバターは鮮血に染まっているぞ?」
「「「「だぁ、大丈夫。大隊長殿ぉーやたですー!」たよ!」にゃ!」っす!」
そこへ割り込む様に、何処からともなく聞きなれない幼い少女の声が、マミラリア達に向けて燥ぎながら語り掛けて来た。
「やれやれ、凄いどころか随分と見応えある八面六臂の戦いであったぞ?実に天晴であった!貴官、その方、名は何と申すのだ?余に聞かせよ《ぁあっ、こいつぅ勝手に何やってんだよゥー》」
何時の間にやら、ローゼンバルト少佐のアバターである《海賊旗》の後ろには、これまた全身白銀色に輝く見知らぬ《シルヴァードラゴン》のアバターが、マミラリアを真直ぐに見据えて出現していた。
「???・・・マミラリア・ルエッティー准尉だが・・・?」
マミラリアは、その厳ついアバターから発せられる幼い声と、余ほど似遣わしくない傲岸な物言いに訝しむ。
「其方等の闘い《あっ、そっちへ逃げたぞゥー》余も甚く感動した。《早く取り押さえろゥー》」
その幼い少女が発する声の合間には、バックグラウンドのドタバタと煩い様子が混じり合って聞こえており、どうやらSID専属艦のブリッジから発せられた通信を、ジョイント・インサートで乗っ取りダイレクトリンクしている通信なのであろう。
「此度の戦闘《くぉらまてぃ、くそチビぃー》誠に天晴であった。《いらん事を喋るなぁー》」
「実に痛快であったぞ《オフれ、オフれ》<ブォン!>《くっそぉ》<ブォン!>《ちょこまかと逃げくさってからにぃ》<ガッチャン!!>《ちぃ、外したかぁ》」
尊大に構えた《シルヴァードラゴン》のアバターが発する喧ましいやり取りの背景では、何かを狙った機材が飛び交う音がして、惜しくも外れたのか、ガチャガチャと激しく何処かに衝突する音が聞こえていた。
「フフン、貴公らに一言礼を言いたくてな。おはっ!!うぎゅうぅぅこら離さんかぁ!《ええい、良し!つっかまえたよゥー》」
「くっ、邪魔立てするでないぞぉ!!ガぷっ《げっ!!咬まれたぞゥー!》<ドカッ、ガシャン>ガぷっ、ガぷっ《こいつゥー、また咬まれたぞゥー、咬みやがったぁよぅぅぅゥーぎゃあァァ!》」
「ぶはっ!・・・《いゃぁ!いやだぁよゥー!!》<コロコロコロコロ・・・>《ひっひいいいぃぃゾ、ゾンビㇽぞゥー!》」
「フフフこの礼は何れするでな、何時か何処かでまた逢おうぞ!!《どきなっ!!あたしが仕留めてやるぜぇ!このくそチビぃ!喰らいやがれえぇぇぇい!》」
「あッはははは<ドン!>ははは<ドン!>はは<ドカン!>は・・<ブッツ!!!>」
そして、これまた唐突に生じた鈍い破壊音と共に《シルヴァードラゴン》のアバターに載せた少女の甲高い高尚な笑い声が途絶えると、新たなフォロ・ビジョンの画像がリンク・インし、丁寧にお辞儀をする淑やかな指揮官らしい女性の姿が、マミラリアにニッコリと微笑みかけながら映し出された。
「あらまぁ~御免なさいね~ぇ。私、SIDSC606室長を拝命しておりますティアス・マッコードと申しますぅ~おホホホほほ、本~ントご迷惑お掛けしてしましたわぁ。この度はお騒がせちゃって~もぉ御免なさいねぇ~。迦楼羅・ローゼンバルト少佐さま並びマミラリア・ルエッティー准尉さま及びスカルメール御一同さま、助けてくれて有難う。心より感謝申し上げますわぁ、では、当方少々先を急いでおりますので、お礼はの・ち・ほ・ど、じゃ~ねぇ~」
一方的に捲し立て、一頻りお礼らしき言葉を述べたティアス・マッコード室長と名乗る女性は、優雅な仕草でひらひらと手を振ると、あっという間にフォロヴィジョンから搔き消えリンク・オフして行った。
「はぁぁ?何じゃそりゃ?・・・これじゃあまるで、馬〇殿様コミックショーではないか?フ・フフフフフ、何の事無い、何処も同じ様なものだと言う事なのか?フフフ・・・」
ただ茫然と呆気に取られたまま、一方的にお礼を捲くし立てられただけのマミラリアは、つい先程まで緊迫した命の遣り取りを繰り広げていた激烈な戦闘シーンを思い出し、それが何故だかとても可笑しくて、本当にバカバカしいまでに可笑しくて堪らなくなって来た。
「我々は、こんな奴らを守っていたのか?真剣バカじゃなぃ?あっははははは、ひーっひゃははははは!こいつはいいやぁ、あっははははははははは!!」
心底ゲラゲラと笑い続けながら、彼女の目に映った白く蒼星銀色に輝くSID専属艦【ルーミィ】の姿は、色取り取りに煌めく銀河の星々に映えてとても綺麗に、そして一際優雅に思えてしょうがなかった。
「だが、守り通したぜ。はははは・・・あっ。いかんっ!いかーんぞぉ!!それ処じゃ無いわ、殿下とやらを略奪し損ねちまったぞ!」
マミラリアの呟きを聞き付けたのか、コクピットに全隊員のアバターが一斉に表示されると、彼女に向かって各々勝手気ままに喋くり始める。
「「「「隊ぁいチョー!」!」!」!」
「桃凛っす。とても遺憾っす!でもって、強行突入っすか?これから白兵戦っすか?」
「ジュリィアーだょ。残念ミスにゃん!そうだ、行けぃタイチョーにゃん」
「エ、英玲奈です。し、仕事しました。恨み~ます!罰です、鋳薔薇の鞭が撓りま~す」
「リービャの鼻ぢー!出たぉ、止ひゃららい!ひゃやくぅ拭いてへ、ひゅいて~へぇ!!びぇーーーん!」
それでもマミラリアは、当面の危機を脱した比類なき強運の部下達と共に、命ある事の大切さに感謝の念を送っていた。
「マミラリアだ。それにしても・・・お前ら・・・静かにせぇい、喧しいわ!」
暫くの後、彼女達《VF404ヘルヴァ》隊は、スカルメール・センター3独立ユニット《戦闘淑女~鮮血のヘルヴァ五芒星》と伝承され、少しばかり美化されたその活躍が、後々まで伝説となって語り継がれて行く事となるのであった。




