第41話 プリンは食いしん坊!?
翌朝。
「プリンちゃん、髪が乱れておるぞ。じいちゃんが整えてやろう!」
ゴウエンは、プリンの後ろに座り、せっせと金色の髪をとかしていた。
「じいちゃん、くすぐったい!」
「おお! すまんすまん! かわいい孫の髪だからな。丁寧にせねば!」
「誰が孫だ」
イグニスが冷たく突っ込む。
「わしじゃ!」
「そういう意味ではない!」
レオンは朝食の準備をしながら、苦笑した。
「ゴウエンさん、昨日からずっとプリンに付きっきりですね」
「当然じゃ! わしの心は十七歳! 今こそ孫をかわいがる青春なのじゃ!」
「顔は七十八歳だけどな」
「イグニス! 朝から失礼じゃぞ!」
そのとき、プリンのお腹が鳴った。
ぐうううう。
「おなかすいた!」
「おおお! プリンちゃんが空腹じゃ! レオン、早く飯を!」
「はいはい。今作りますよ」
レオンは小麦粉をこね、豚肉に刻んだネギ、生姜、調味料を混ぜていく。
「今日は肉まんにします」
「肉まん!」
プリンの目が輝いた。
「中身は豚肉とネギ。生姜を加えると香りがよくなります。皮はふっくら仕上げますよ」
レオンは生地で具を包み、蒸し器に並べた。
しばらくすると、湯気とともに食欲をそそる香りが広がる。
「できました!」
「待っておったぞ!」
ゴウエンが真っ先に手を伸ばす。
「じいちゃん、あついよ!」
「おお、そうじゃった! ふうふうしてから食べるんじゃぞ」
ゴウエンは自分の肉まんを後回しにして、プリンの肉まんを冷ましてやる。
「はい、プリンちゃん。じいちゃんが食べやすくしてやったぞ」
「ありがとう!」
プリンは大きな口でかぶりついた。
「おいしい!」
その笑顔に、ゴウエンの目がうるむ。
「なんという幸せ……。わしにも、ついに孫が……」
「勝手に孫にするな」
イグニスが肉まんを食べながら言った。
「お前も食べておるではないか!」
「うまいものは別だ」
「そこは否定せんのか!」
プリンが二個目に手を伸ばした。
その瞬間、イグニスが横から半分かじる。
「あっ! わたしの!」
「半分くらい問題ないだろう」
「じいちゃんのをあげる!」
「おお! なんと優しい子じゃ!」
ゴウエンは感激して、プリンを抱き上げた。
「よしよし! 今日はじいちゃんが何でも買ってやるぞ!」
「本当?」
「もちろんじゃ!」
「じゃあ、お菓子!」
「任せておけ!」
「ゴウエンさん、財布の中身を確認してからにしてくださいね」
レオンの一言に、ゴウエンの動きが止まった。
「……じいちゃん、実は今、金欠なんじゃ」
「じいちゃん、お金ないの?」
「いや! 愛情なら無限にあるぞ!」
イグニスが吹き出した。
食事が終わり、レオンが片付けをしていると、プリンがそっと近づいてきた。
「レオン」
「どうしました?」
プリンはレオンの手を見つめた。
そこには、以前から残っている黒い染みがある。
「これ、痛いの?」
「少しだけね。でも大丈夫ですよ」
プリンは小さな手で、レオンの手を包んだ。
「痛いの、なくなれって思ったの」
その瞬間、プリンの角が金色に輝いた。
レオンの手の黒い染みが、わずかに縮んでいく。
「これは……!」
イグニスが目を見開いた。
「プリンの力か?」
ゴウエンも、いつものふざけた顔を引き締める。
「この子は、ただの黄金の守護者ではないのかもしれん」
プリンは不思議そうに自分の手を見た。
「わたし、レオンを助けられた?」
「ありがとう。少し楽になりましたよ」
レオンが微笑むと、プリンも嬉しそうに笑った。
しかし、イグニスは険しい表情を崩さなかった。
「その力を無理に使わせるな。何が起こるか分からない」
「分かっておる」
ゴウエンはプリンを優しく抱き寄せた。
「この子を危険な目には遭わせん」
そのときだった。
「……あっ」
ヒカルが窓の外を見つめた。
「どうした、ヒカル?」
「森の方から、黒い線が伸びてる……」
レオンたちも外へ出る。
遠くの森の上空に、黒い光がゆっくりと脈打っていた。
プリンの角が、かすかに黒く染まる。
「プリン?」
レオンが声をかけると、プリンは不安そうに森を見つめた。
「夢で見たの……」
「夢?」
「うん。あそこに行っちゃだめって……」
ゴウエンはすぐにプリンを抱きしめた。
「よし! 行かん! プリンちゃんが嫌なら、じいちゃんは絶対に行かんぞ!」
「でも、何かが起きているのは確かです」
レオンが森を見つめる。
「調べる必要があります。ただし、プリンを危険にさらすわけにはいきません」
イグニスが静かにうなずいた。
「黒い気配は、以前より強くなっている。満月が近いせいかもしれん」
ゴウエンはプリンを抱いたまま、森を睨んだ。
「何が現れようと、わしが守る」
いつものふざけた声ではなかった。
そのころ、森の奥。
黒い光が地面から立ち上り、古い石碑に黒い紋章を浮かび上がらせていた。
そして、誰にも聞こえない声が響く。
『黄金の守護者……目覚めた力を、こちらへ渡してもらおう』
黒い光が、ゆっくりと脈打つ。
プリンの角に、一瞬だけ黒い紋様が浮かんだ。




