第39話 金色の少女に大変身!? スケベじいさん、まさかの溺愛!
黄金の祭壇に、静かな光が満ちていた。
『継承者を守る者は、すでにこの中にいる』
古びた本に書かれた言葉を、レオンたちは見つめていた。
「結局、誰のことなんだ?」
レオンが首をひねる。
ゴウエンは胸を張った。
「決まっておる! わしじゃ!」
「どうしてそうなるんだよ」
「若い頃から、守るべきものを守る男と言われておった!」
「誰に?」
「自分にじゃ!」
「自分で言うな!」
そのとき、金色の小さな生き物がふわりと宙に浮いた。
二本の小さな角が、まばゆい光を放ち始める。
「キュウ……?」
ヒカルが目を丸くした。
「光ってるよ!」
次の瞬間、金色の光が祭壇いっぱいに広がった。
「うわっ!」
レオンたちが目を覆う。
光が消えると、そこには一人の小さな女の子が立っていた。
金色の長い髪に、透き通るような瞳。頭には二本の小さな角、背中には金色の羽が生えている。
女の子は自分の手を不思議そうに眺めた。
「あれ……?」
そして、レオンたちを見上げた。
「こんにちは!」
「しゃ、しゃべった!」
レオンが驚く。
ヒカルは嬉しそうに駆け寄った。
「かわいい!」
女の子はにっこり笑う。
「あなたも、かわいいね!」
「えへへ!」
その様子を見ていたゴウエンが、ぴたりと固まった。
「……な、なんと!」
目を輝かせ、女の子の前にしゃがみ込む。
「お嬢ちゃん! お名前は?」
女の子は首をかしげた。
「名前……わからない」
「そうかそうか! では、わしが抱っこしてあげよう!」
両手を広げたゴウエン。
女の子は迷わず飛び込んだ。
「抱っこ!」
「おおおおおっ!」
ゴウエンは感動で震えた。
「なんという幸せ! 人生で最高の日じゃ!」
レオンは呆れた顔をする。
「じいさん、さっきまで守護者がどうとか言ってなかったか?」
「今はそれどころではない!」
「いや、そこ大事だろ!」
ゴウエンは女の子を大切そうに抱き上げ、頬をゆるませた。
「よしよし。怖いものはないぞ。おじいちゃんが守ってあげるからな」
「おじいちゃん?」
「そうじゃ! 今日からわしがおじいちゃんじゃ!」
「勝手に決めるな!」
イグニスが腕を組んで冷ややかに言う。
「ずいぶん調子がいいな。さっきまで自分を若者と言っていたくせに」
「この子の前では、わしは立派なおじいちゃんじゃ!」
「都合がいい竜より厄介な老人だな……」
「誰が老人じゃ!」
女の子がゴウエンの顔をのぞき込む。
「おじいちゃん、おなかすいた」
ゴウエンの表情が一変した。
「な、なんじゃと!? お腹がすいたのか! レオン! 食事じゃ! この子に最高のものを!」
「はいはい。料理人は俺ですから」
「柔らかくて、おいしくて、甘いものも頼むぞ!」
「注文が多いな!」
レオンは食材を取り出し、卵のお粥を作ることにした。
鍋に米と水を入れて弱火で煮込み、米が柔らかくなったところで溶き卵を流し入れる。ふんわり固まったら、少しだけ塩で味を整える。
「できたぞ。熱いから気をつけてな」
女の子は一口食べた。
「おいしい!」
「そうかそうか! もっと食べなさい!」
ゴウエンは自分の分を差し出そうとする。
「じいさん、それは自分の分だぞ」
「わしはこの子が食べてくれれば満足じゃ!」
「さっきまで三人前食べるって言ってただろ!」
「過去のことは忘れた!」
イグニスが呆れたように息を吐く。
「お前、完全に甘やかしているぞ」
「何が悪い! かわいいものはかわいいんじゃ!」
女の子はゴウエンの頬を小さな手で触った。
「おじいちゃん、だいすき!」
「ぐはっ!」
ゴウエンは胸を押さえた。
「わしは……わしは今、人生で一番幸せじゃ……!」
「大げさだろ!」
レオンが笑う。
しかし、その瞬間だった。
女の子の背中の羽が大きく広がり、金色の角が強く光った。
レオンの手の甲にある紋章も、それに呼応するように輝き出す。
祭壇の壁に、古い文字が浮かび上がった。
『黄金の守護者、目覚める』
「黄金の守護者……?」
レオンがつぶやく。
イグニスは女の子を見つめた。
「まさか、この小さな者が……」
女の子はゴウエンの腕の中で、静かにつぶやいた。
「わたし……ずっと、あなたを守るって約束したの」
「誰との約束じゃ?」
ゴウエンが優しく尋ねる。
「わからない。でも、レオンの光を守らなきゃって……」
全員の視線がレオンの手に集まった。
その黒い染みが、一瞬だけ動いた。
ゴウエンの表情から笑みが消える。
「……この子を狙う者がおるのか」
「まだわからない。でも、俺の紋章とこの子には何か関係があるみたいだ」
ゴウエンは女の子をそっと抱きしめた。
「心配するな。おじいちゃんが守ってやるからな」
「うん!」
イグニスが小さく笑った。
「その調子で、いつまで甘やかせるかな」
「何を言う! わしはこの子のためなら何でもする!」
「では、今晩の食事は?」
「レオンに頼む!」
「自分で作れ!」
そのとき、祭壇の奥から低い声が響いた。
『黄金の守護者が目覚めたか……ならば、封印の鍵もそろった』
壁に巨大な黒い紋章が浮かび上がる。
次の満月まで、あとわずか。
そして、女の子の瞳の奥に、一瞬だけ見知らぬ景色が映った。
そこには、若き日のレオンの祖父と、一頭の巨大な竜がいた。
ゴウエンは女の子を抱きしめたまま、静かに言った。
「何があっても、この子はわしが守る」
その声には、いつものふざけた調子はなかった。




