第35話「遺跡の奥に眠る秘密!
巨大な扉の向こうには、長い石造りの通路が続いていた。
壁には金色の紋章がいくつも刻まれている。
レオンは自分の手の甲を見つめた。
「やっぱり、この紋章……俺の一族と関係があるのか?」
イグニスが壁を見上げる。
「それだけではない。ここには古い竜の気配も残っている」
「竜の気配って、どんな感じなんだ?」
「非常に不愉快だ」
「説明が雑だな!」
そのとき、ヒカルが通路の奥を指さした。
「ねえ、あそこ……光ってるよ」
奥の壁に、小さな金色の光が浮かんでいた。
ヒカルが近づこうとすると、ゴウエンが慌てて止める。
「待て待て! こういう場所には罠がある。まずはワシが確認してやろう!」
ゴウエンは胸を張って一歩踏み出した。
カチッ。
足元から嫌な音がした。
「……ん?」
次の瞬間、天井から大量の石の玉が転がり落ちてきた。
「うおおおおっ! 罠じゃあああ!」
「自分で踏んだんだろ!」
レオンたちは横へ飛びのいた。
ゴウエンは走りながら叫ぶ。
「ワシのせいではない! 遺跡がワシに嫉妬しておる!」
「何に嫉妬するんだよ!」
なんとか石の玉をかわした一行は、奥の部屋へたどり着いた。
そこには大きな祭壇があり、中央に三つのくぼみが並んでいた。
一つ目には、レオンの手の甲と同じ紋章。
二つ目には、ヒカルの瞳に似た模様。
三つ目には、金色の小さな角の形。
「これ……俺たちのことか?」
レオンがつぶやく。
その瞬間、金色の小さな生き物がふわりと浮かび、三つ目のくぼみに近づいた。
ピカッ!
祭壇全体が光り始めた。
「おおっ! この小さいの、やるではないか!」
ゴウエンが喜ぶ。
だが、イグニスの表情は険しかった。
「待て。何かが目覚めるぞ」
ズズズ……。
祭壇の奥の壁が開き、そこから一つの映像が浮かび上がった。
映っていたのは、ヒカルによく似た瞳を持つ男女だった。
女性がこちらに向かって手を伸ばす。
『あなたを探していたのよ……』
「え……?」
ヒカルが一歩前に出た。
隣に立つ男性も、優しく微笑んでいる。
『必ず迎えに行く。だから、どうか無事でいてくれ』
映像の女性は涙を浮かべていた。
『私たちの大切な子……』
映像が消えた。
ヒカルは小さな手をぎゅっと握った。
「レオン……あの人たち、ぼくのお父さんとお母さんなの?」
レオンはすぐには答えられなかった。
イグニスも静かに映像が消えた壁を見つめている。
「まだ断言はできない。だが、お前と深い関係があるのは間違いない」
レオンはヒカルの肩に手を置いた。
「一緒に探そう。必ず真実を見つける」
「うん!」
その瞬間だった。
祭壇の下から黒い煙が噴き出した。
ゴゴゴゴ……!
壁に刻まれた紋章が次々と黒く染まっていく。
イグニスが低くうなる。
「この気配……俺の呪いと同じだ」
黒い煙の中から、巨大な目が開いた。
『三つの光がそろったか……』
低く、不気味な声が響く。
『継承者よ。竜よ。そして光の子よ。よくぞ来た』
レオンの手の甲が熱くなる。
ヒカルの瞳も金色に輝いた。
金色の小さな生き物は、イグニスの前に飛び出し、小さな翼を広げた。
ゴウエンは思わず後ずさる。
「お、おい……今度の敵は、石像より大きそうじゃぞ」
「見れば分かる!」
黒い目がレオンを見つめた。
『お前の一族が封じたものを、今こそ解き放つ』
「俺の一族が……?」
『そして、その竜の呪いも完成する』
イグニスの体に黒い紋様が浮かび上がった。
「ぐっ……!」
レオンが駆け寄ろうとしたとき、祭壇の床が真っ二つに割れた。
その下から巨大な黒い腕が伸びてくる。
「全員、下がれ!」
レオンが叫ぶ。
だが、黒い腕はヒカルに向かって一直線に伸びた。
「ヒカル!」
イグニスが飛び出す。
ゴウエンも杖を構えた。
「弟子をさらわせるわけにはいかん!」
レオンの手の甲が、まばゆい金色の光を放つ。
その光に反応するように、黒い腕が動きを止めた。
そして闇の奥から声が響く。
『次に会うときは、すべてを思い出させてやろう』
黒い腕はゆっくりと床の下へ消えていった。
静寂が戻る。
ヒカルはレオンの服をぎゅっと握った。
「レオン……ぼく、あの人たちに会いたい」
「ああ。必ず会わせてやる」
イグニスは祭壇を見つめたまま言った。
「だが、急がねばならない。あの闇は俺の呪いを知っている」
ゴウエンが深刻な顔でうなずく。
「つまり、次はもっと強い敵が出てくるということじゃな」
「そうだ」
「ならば、その前に飯じゃ!」
「今その話をする!?」
ゴウエンのお腹が、遺跡中に響き渡った。
そのとき、金色の小さな生き物が祭壇の上に降り立った。
小さな角が、レオンの手の甲と同じように輝いている。
祭壇には新たな文字が浮かび上がった。
『北の最深部へ。記憶の扉は、まだ開かれていない』
レオンは文字を見つめた。
ヒカルの両親。 自分の一族。 イグニスの呪い。 そして、金色の小さな生き物。
すべてが、この遺跡につながっている。
「行こう。北の最深部へ」
レオンが言うと、イグニスは静かにうなずいた。
ヒカルも力強くうなずく。
「ぼくも行く!」
「もちろんだ。もう一人で置いていったりしない」
ゴウエンだけは、祭壇の裏側をのぞき込んでいた。
「おおっ! これは何じゃ?」
「何か見つけたのか?」
「いや、食堂がないか探しておる」
「遺跡を食堂扱いするなあああ!」
こうして一行は、さらに深い謎が待ち受ける北の最深部へと進むことになった。




