第33話 東の森へ!ヒカルの両親につながる謎の紋章!
「東の森へ行くぞ!」
町を出るなり、レオンは地図を広げた。
「その前に飯じゃ!」
ゴウエンが即座に叫ぶ。
「じいさん、さっき食べただろ!」
「朝飯は朝飯! 昼飯は昼飯じゃ!」
「まだ昼前だよ!」
「腹時計では昼じゃ!」
「その時計、壊れてるだろ!」
イグニスが呆れた顔で笑った。
ヒカルは、掲示板から持ってきた古い紙を大事そうに握っていた。
そこには、光る瞳の子供を探すという言葉と、不思議な紋章が描かれている。
「レオン、このマーク……ぼくと関係あるのかな?」
「まだ分からない。でも、調べる価値はあるよ」
レオンは紋章をじっと見つめた。
その形は、どこか自分の手の甲にある金色の印に似ていた。
「おい、レオン」
イグニスが小声で言った。
「その紋章から、妙な気配がする」
「分かるのか?」
「ああ。古い魔力の残り香だ。普通の人間が描いたものではない」
「ますます気になるな……」
そのとき、ゴウエンが突然立ち止まった。
「待て!」
「今度は何?」
「飯の匂いじゃ!」
「またか!」
ゴウエンの鼻は、妙なところでよく働く。
道の脇に、小さな屋台が出ていた。
看板には『焼きまんじゅう』と書かれている。
「おおお! 食べ物屋じゃ!」
「じいさん、さっきチャーハンを食べたいって言ってなかった?」
「別腹じゃ!」
「そんな別腹があるか!」
レオンは屋台をのぞき込んだ。
焼きまんじゅうは、底がこんがりときつね色に焼け、上半分は蒸し焼きにされている。
「これはうまそうだな」
店主が笑顔で説明した。
「皮の底を焼いてから水を入れ、蓋をして蒸し焼きにするんだ。最後に水分を飛ばせば、底はパリッと、中はふっくらさ」
「なるほど。焼きと蒸しの両方を使うんですね」
レオンは感心した。
ゴウエンはすでに3個目を頬張っている。
「うむ! これはうまい! あと二十個!」
「じいさん、まだ食べるの!?」
「旅の体力をつけるためじゃ!」
「その体力、全部食欲に使ってない?」
ヒカルも一つ食べた。
「おいしい!」
「そうだろう!」
ゴウエンはなぜか自分の手柄のように胸を張った。
イグニスも一つ口に入れる。
「……悪くない」
「悪くないじゃと!? もっと素直にうまいと言わんか!」
「うまいものはうまい。騒ぐな」
「竜のくせに味が分かるようになったのう!」
「お前に言われたくない!」
一行は焼きまんじゅうを食べ終え、再び東の森へ向かった。
森に入ると、空気が急に冷たくなった。
木々は高く、枝が複雑に絡み合っている。
鳥の声も聞こえない。
「静かすぎるな……」
レオンが周囲を警戒する。
ヒカルは立ち止まり、森の奥を見つめた。
「……あっち」
「何か見えるのか?」
レオンが尋ねる。
「うん。光る線がある」
ヒカルの瞳が淡く輝いた。
「前にも見た、あの不思議な線か?」
「うん。でも、今回はたくさんある。一本だけ、すごく強く光ってる」
イグニスが低く唸った。
「その先に何かいる」
ゴウエンも構えを取った。
「油断するな。森の気配が妙じゃ」
一行が光る線を追って進むと、古びた石碑が現れた。
石碑には、掲示板の紙に描かれていたものと同じ紋章が刻まれている。
ヒカルがそっと手を伸ばした。
「ヒカル、待って!」
レオンが止めるより早く、ヒカルの指が石碑に触れた。
その瞬間――。
パアアアッ!
石碑が金色に輝いた。
森の中に、子供の声が響く。
『ヒカル……』
「えっ?」
ヒカルの顔から血の気が引いた。
『見つけた……』
「だれ? ぼくを知ってるの?」
しかし声は、そこで途切れた。
石碑の表面に、ぼんやりと人影が浮かび上がる。
一人は男性。
もう一人は女性。
二人とも、ヒカルに似た光る瞳をしていた。
「お父さん……お母さん……?」
ヒカルの声が震えた。
レオンはヒカルの肩に手を置いた。
「大丈夫。きっと手がかりになる」
そのとき、石碑の後ろから黒い影が飛び出した。
「そこまでだ」
黒い外套の人物だった。
イグニスが一歩前に出る。
「またお前か」
「その子供を渡してもらおう」
「断る!」
レオンが即座に答えた。
黒い人物は、レオンの手の甲を見て笑った。
「料理人よ。お前もまだ、自分の役目を理解していないようだな」
「役目?」
「その金色の印は、すべての始まりだ」
レオンの印が熱を帯びた。
ヒナが翼を広げ、金色の角を光らせる。
イグニスの瞳が赤く輝いた。
「これ以上、仲間に手を出すな」
黒い人物は一歩下がった。
「いいだろう。今日は退こう。だが、ヒカルの両親について知りたければ、次の満月までに北の遺跡へ来ることだ」
「待て! お前は誰だ!」
レオンが叫ぶ。
しかし、黒い影は煙のように消えてしまった。
森には再び静けさが戻った。
ヒカルは石碑の前で、じっと立ち尽くしていた。
「ぼく……本当に、お父さんとお母さんに会えるのかな」
レオンはしゃがみ込み、ヒカルと目線を合わせた。
「会えるよ。必ず手がかりを見つけよう」
イグニスも頷いた。
「俺たちがついている」
ゴウエンは腕を組んだ。
「もちろんじゃ! ただし、北の遺跡へ行く前に飯を食うぞ!」
「じいさん!」
「何じゃ! 大事な話じゃぞ! 腹が減っては戦もできん!」
ヒカルは涙をぬぐい、小さく笑った。
「うん。ぼくも一緒に行く」
そのとき、ヒナの角が再び輝いた。
石碑の紋章と同じ光だった。
そして、石碑の裏側に、新たな文字が浮かび上がる。
『三つの光がそろうとき、失われた記憶の扉が開く』
レオンはその文字を見つめた。
三つの光。
ヒカルの瞳。
自分の金色の印。
そして、ヒナの角。
「……まさか、俺たちのことなのか?」
遠くの森の奥で、何かがゆっくりと目を覚ました。
北の遺跡。
そこには、ヒカルの過去だけではなく、レオンの一族とイグニスの呪いにもつながる秘密が眠っていた。




