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第32話 新しい町へ出発!

「よし! 次の町へ行こう!」

朝から元気いっぱいのゴウエンが、宿屋の前で叫んだ。

「じいさん、声が大きいよ。まだ朝だぞ」

レオンは荷物をまとめながら苦笑した。

「旅は早起きが基本じゃ! それに次の町には、うまい飯があるかもしれん!」

「結局、それが目的かよ」

イグニスが呆れた顔をする。

「当然じゃ! 旅の楽しみは飯と美女じゃからな!」

「美女は探さなくていい!」

レオンのツッコミが飛んだ。

そんな騒ぎの中、ヒカルは少し離れた場所で町の門を見つめていた。

「ヒカル?」

レオンが声をかける。

「……ぼくのお父さんとお母さん、どこにいるのかな」

その言葉に、みんなの表情が少し変わった。

ヒカルは森で見つかったとき、自分の事は、ほとんど何も覚えていなかった。

両親の顔も、住んでいた場所も分からない。

「この町にも、手がかりはなかったね」

レオンが優しく言った。

「うん。でも、次の町なら何か分かるかもしれない」

ヒカルは小さくうなずいた。

「もちろん探すぞ!」

イグニスが胸を張った。

「俺は鼻が利く。親の匂いくらい探せるかもしれん!」

「竜の鼻って、人間の親探しにも使えるの?」

レオンが尋ねる。

「知らん!」

「知らないのかよ!」

ゴウエンが腕を組んだ。

「わしの人脈を使えば、すぐに見つかるかもしれんぞ」

「じいさん、人脈なんてあるの?」

「ある!」

「どこに?」

「……」

「それ、人脈じゃなくて予定だよ!」

ヒカルが思わず笑った。

レオンはその笑顔を見て、少し安心した。

「大丈夫。焦らず探そう。町に着いたら、まずは人に聞いてみよう」

「うん!」

こうして一行は、新しい町を目指して出発した。

金色の小さなヒナも、レオンの肩にちょこんと乗っている。

「そういえば、こいつの名前はまだ決まっていないのか?」

イグニスが尋ねた。

「そうなんだよ。じいさんが料理の名前ばかり提案するから」

「チャーハンは名案じゃろう!」

「まだ言ってるのか!」

ヒナはゴウエンの顔を見ると、ぷいっと横を向いた。

「嫌われておる……」

「自業自得だな」

イグニスが笑った。

しばらく歩くと、遠くに大きな城壁が見えてきた。

「あれが次の町か!」

ヒカルの目が輝く。

町の入り口には、たくさんの商人や旅人が行き交っていた。

壁には大きな掲示板があり、迷子や行方不明者の情報も貼られている。

「まずは、あの掲示板を見てみよう」

レオンが提案した。

ヒカルは一枚ずつ、真剣に張り紙を見つめた。

しかし、両親らしい情報は見つからない。

「やっぱり、ないね……」

ヒカルの肩が少し落ちた。

そのとき、掲示板の前にいた年配の女性がヒカルを見て、驚いたように目を見開いた。

「あら……あなた、その瞳……」

「え?」

女性はヒカルの顔をじっと見つめた。

「昔、よく似た子を探している人がいたわ」

レオンたちの表情が変わった。

「その人は、どこにいるんですか?」

レオンが尋ねる。

「確か、東の森の向こうにある小さな村を訪ねていたはずよ。子供を探していると言っていたわ」

「子供を……?」

ヒカルが一歩前に出た。

「その人、ぼくのお父さんかもしれない?」

女性は困ったように首を横に振った。

「そこまでは分からないわ。でも、あなたの瞳を見て思い出したの」

ヒカルは胸元をぎゅっと握った。

「行きたい。そこに行ってみたい!」

「もちろんだ」

レオンはヒカルの頭に手を置いた。

「東の森の向こうか。よし、次の目的地はそこだ!」

「待てい!」

ゴウエンが突然割り込んだ。

「その前に飯じゃ!」

「今それを言う!?」

「腹が減っては親探しもできん!」

「それはそうだけど……」

レオンはため息をついた。

そのとき、ヒナが突然、ヒカルの頭の上に飛び乗った。

「ピィ!」

ヒナの小さな角が、淡く金色に光る。

すると、掲示板に貼られていた一枚の古い紙が、ふわりと浮かび上がった。

レオンが手に取る。

そこには、かすれた文字でこう書かれていた。

『東の森で、光る瞳を持つ子供を見た者は知らせてほしい』

「……これって」

ヒカルの瞳が揺れた。

紙の下には、見覚えのない紋章が描かれていた。

レオンの手の甲にある金色の印が、かすかに反応する。

イグニスが低い声でつぶやいた。

「偶然ではないな……」

そのころ、町から遠く離れた森の奥。

黒い外套の人物が、一枚の紙を見つめていた。

「光る瞳の子供……ついに手がかりを見つけたか」

人物は静かに笑った。

「だが、その子を誰にも渡すわけにはいかない」

ヒカルの親探しは、思いがけない方向へ動き始めていた。

そして一行は、東の森へ向かうことになる。

ただし、その前に――。

「レオン! 飯じゃ! わしの腹が限界じゃ!」

「分かったから、引っ張るなあああ!」

新しい町でも、ゴウエンの食欲だけは絶好調だった。

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