第24話 じいさんの特訓開始!? その代償は飯三食!
「レオン、お前は気を読む能力が杜撰すぎる」
朝食を食べ終えたゴウエンが、偉そうに腕を組んだ。
「……朝っぱらから喧嘩売ってんのか、じいさん」
「喧嘩ではない。事実を述べておるのだ」
「じゃあ、じいさんは俺の何が分かるんだよ?」
「昨日の晩飯を食べすぎたせいで、今朝は腹が減るのが遅い」
「それは気じゃなくて胃袋の話だろ!」
イグニスが涼しい顔で茶を飲む。
「レオン。確かにお前は、気配を感じ取るより先に拳が出ることがあるな」
「お前まで!?」
「昨日も影に向かって突っ込んでいったではないか」
「お前を助けるためだろうが!」
「うむ。そこは感謝している」
「なら、もう少し俺の味方をしろ!」
ゴウエンは、ふむふむとうなずいた。
「特にイグニスに関しては、力任せだな」
「何だと?」
イグニスの目が細くなる。
「竜の力は強大じゃ。だが、強い力を振り回すだけでは、いつか自分自身を傷つける。呪いを抱えているなら、なおさらじゃ」
その言葉に、イグニスの表情がわずかに変わった。
ゴウエンはレオンに向き直る。
「お前も同じじゃ。気を読む前に動く。相手の力を感じる前にぶつかる。料理の腕は見事じゃが、気の扱いはまだまだ未熟!」
「……つまり?」
「わしが鍛えてやろう!」
ゴウエンは胸を張った。
「おお、珍しくまともなことを言ったな」
「その代わり――」
ゴウエンの目がキラリと光った。
「毎日、わしに飯を作れ!」
「やっぱり飯かあああっ!」
レオンの叫びが森に響いた。
ヒカルが首をかしげる。
「ゴウエン、おなかすいてるの?」
「もちろんじゃ! 修行には栄養が必要じゃからな!」
「じいさん、今、朝飯食ったばかりだろ!」
「成長期じゃ!」
「七十八歳の成長期って何だよ!」
ゴウエンは指を一本立てた。
「まずは朝昼晩の三食。できれば間食もつけてくれ」
「修行じゃなくて食堂の契約だろ!」
イグニスが真顔で口を挟む。
「レオン、私の分も頼む」
「お前まで便乗するな!」
「私も力の制御を学ぶ必要があるのだろう?」
「……ぐっ」
正論だった。
ゴウエンは満足げに笑う。
「決まりじゃな。わしが二人をじっくり鍛えてやる!」
「俺はまだ了承してない!」
「では、昼飯は抜きじゃ」
「よろしくお願いします、師匠!」
レオンは即座に頭を下げた。
「早いな、お前!」
イグニスが呆れ、ヒカルがケラケラ笑った。
ゴウエンは満足そうにひげを撫でる。
「よし。では、さっそく第一の修行じゃ!」
三人が身構えた。
ゴウエンは厳かな声で告げた。
「目を閉じ、周囲の気を感じるのじゃ。風、草木、土、仲間の気配……すべてを感じ取れ!」
「分かった!」
レオンは目を閉じた。
風が頬を撫でる。草木が揺れる。イグニスの気配も感じる。
そのとき――。
ぐうううううううっ。
ゴウエンの腹が鳴った。
レオンは目を開けた。
「……じいさんの気配、腹からしか感じないんだけど」
「それも立派な気の読みじゃ!」
「絶対違うだろ!」
「では、昼飯は肉たっぷりの炒飯で頼む!」
「修行の話に戻れえええっ!」
こうしてレオンたちは、最強(自称)のじいさんによる特訓を受けることになった。
ただし、レオンにはひとつだけ決めたことがある。
絶対に、じいさんの食事だけは大盛りにしない。
……その決意が、昼飯の時間まで持つかどうかは別の話である。




