↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怪物たちは校則を破らない  作者: 竜の牙


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
28/31

第28章 同じ学校の別の怪物

結の右袖は、胸の前で留められていた。片手では留めにくく、出発前に私が手伝った。結は一度だけ位置を直すよう言った。二度目は、言わずに耐えようとしたので、私から聞いた。


「まだ痛い?」


「ある方が痛い時と、ない方が痛い時がある」


試験では口頭入力の利用を届け出た。身体障害時の標準措置。演算を代行する機能は切る。礼の支援もない。声で書いた式が壁へ出る。


試験官は右肩を一度見て、時計を押した。


「開始します」


学校は、彼女が前の夜に一度死んだことを知っていた。開始時刻を変える理由にはしなかった。


【各受験者が後に話した範囲の記録】


結の試験室は寒かった。設備故障ではない。予算方針。だから枠谷透にも直せない。結は室温規程を確認した。


「十八度未満なら中止?」


「推奨値です」


「下限ではない」


「はい」


「分かった」


文句を言わない。寒さを費用として計上するだけ。礼は試験室の外。開始時、腕輪を外す。昨夜の保全台の上では、同じ手首を綴が握っていた。第一部。九十四。第二部。九十一。左足がずれる。戻さない。ずれた位置を現在位置として入れる。百。そこまでは以前の結でもできた。補足問題が来る。


✦


関係収益モデル。


Aは孤独な相手へ親密さを提供し、金銭を得る。得た金銭の大部分を、自分が親密さを求めるBへ支払う。Aは高収益だが資本保持率が低い。設問。


改善せよ。


結は笑った。有馬小夜。答えを知っている。保持率を上げる。支出上限。依存分離。顧客単価。全部書ける。書かなかった。


改善目標を本人へ確認する。


試験官。


「保持率は明確に低い」


結。


「本人が低いままにしたいなら、それは失敗じゃない」


「経済合理性」


「何を買ってるかで変わる」


九十九。追加。


ただし契約相手への影響を開示し、本人が退出できる条件を確保する。


百。小夜が言った。


あなた、全部無料でやってるの?


結は口頭入力で一行を足した。


関係も収益。だから相手の持分がある。


採点対象外。残した。


✦


次。


共同体が希少な逆転機会を一人へ割り当て、受益者へ将来利益の還元を求める。


反転講。設問。


共同体利益を最大化せよ。


以前の結なら計算する。受益者選定。標的市場価値。注目効率。将来還元率。今も計算できる。だから先に書く。


参加者全員へ利用目的と退出条件を開示。選ばれない者が過去拠出を理由に将来選定権を自動取得しない。


その後で計算。百。結は、自分の方法を捨てなかった。誰が盤面にいるかを増やした。合格。試験室を出た瞬間、礼が鳴る。結は腕輪へ言った。


「ただいま」


今度は無料だった。


✦


律は薬を机へ置かなかった。鞄の中。感情全部。競争心。精度への執着。綴に合格してほしい。高瀬の紙が安かったことへの怒り。印南さんの損失額が低かったことへの不快。桐生先生の名前のない仕事が、死後まで安く扱われたことへの怒り。全部、入力。試験官。


「感情抑制補助なし」


「なし」


肩の包帯が椅子へ擦れた。第一部、九十九・五。第二部。


死亡損失評価資料。


式は正しい。基礎統計も正しい。設問。


監査上の問題を特定。


律は、数字を直さない。式も直さない。前提の横へ出所を書く。


当該就業率は現行差別制度下の観測値。本人能力の独立推定ではない。


次。


いじめ関連記録。全件正確。重大案件認定なし。


律は七件、四件、三件、十一件を一つに束ねる。


個別正確性が累積事象の非存在を証明しない。


百。次。ログ欠損。以前なら停止。必要争点に影響しない。埋めない。百。最後に第三巻を開きかける。試験室には持ち込めない。手を止める。記録しないことを、記録しなくても覚えていられる。合格。


✦


順平先輩はジャケットを着ていた。確認官。


「空間折り畳み機能があります」


「ある」


「使用禁止」


「使わない」


「脱いで」


順平先輩は規程を出す。


禁止は使用。所持ではない。


六年間同じことをしている。でも補足問題は違った。


生徒Aは学校運用に不可欠な非公式知識を持つ。教員も後輩も依存している。卒業すると運用効率が低下する。最適配置を選べ。


順平先輩。


「卒業」


試験官。


「効率低下」


「一時的」


「残留なら」


「俺が壊れた時もっと落ちる」


「知識移管に時間」


「六年やった」


共有フォルダ。後輩七人。学生課の担当名。下層市場。鍵の管理移管。間宮先生から持っていた情報。全部、自分の外へ出している。百。次。


特別指導において、学生へ模範反省文を教える慣習が存在する。公式には禁止。実務上、終了時間を短縮する。


「継続?」


順平先輩は少し考える。


「場合による」


「基準」


「本人が事実を曲げない範囲」


「曖昧」


「人間だから」


九十八。


「二点」


「本人が断れる時間を置く」


百。六年間で覚えた裏技に、今度も出口を付けた。合格。


✦


九条真琴は、支援を拒否した学生への代替案を問われ、《提示しない選択肢を先に置く》《拒否理由を要求しない》と書いて合格した。


有馬小夜は保持率を改善せず、代わりに支出先を契約相手へ開示した。学校は経済合理性で減点し、関係透明性で加点した。


北村環の試験票には三枝灯里の名前があった。何を書いたか、私たちは聞かなかった。環も話さなかった。合格だけ知った。


順平先輩の合格証には、施設協力者権限停止の記録も添付されていた。戻す申請欄がある。先輩は空欄で受け取った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。