第26章 五人の選択
午前九時、全校召集。
制度遵守観察・全員出席必須。出席は課金目的で記録されます。
中庭に五人が並べられていた。競合企業への就職応募を、学校の監督配送網で送った学生。学校公式より正確な債務相談を無許可営業した学生。外部組織の諜報員だったのに、送った報告の大半が食堂献立だった学生。労働環境改善要望書を八百四十七語で書き、十一部署へ転送され、全員から「誰か対応すべき」と言われた学生。面接で企業忠誠について、
「債務条件によります」
と答えた学生。免田逸郎が整列を確認した。フランチェスコが来た。グミを食べていた。寮区分と同じ色。
「はい。今日は宇宙的に頭の悪い順に話す」
一人目。
「転職はいい。人間は転職する。問題は、お前が『監督配送網』を使ったこと。名前を読め。監督。配送。網。全部書いてある」
二人目。
「お前は制度より正確だった。普通なら採用する。この制度では、公式が間違っていると認めるか、有益な学生を処罰するかの二択になる。能力だけで法務を詰ませた。立派だ。学生としては困る」
三人目。
「諜報員。火曜の献立は諜報じゃない。少なくとも金を払う側がそう判断した」
四人目。
「八百四十七語。正しい。正しいから誰も処理したくない。苦情じゃなく証拠にした。そこが職業的には正しくて、制度的には致命的」
最後。
「忠誠は条件付き。正しい。全員そう。だが暗黙の運用原理を試験官の前で口に出すな。異適院で何を学んだ」
観客が笑った。五人は笑わない。フランチェスコはグミを一つ食べる。
「前期の学生。原簿番号も袋の裏にある。戻す核は、加工前に処理している」
近くの学生が、袋の番号を見て顔を伏せた。
「残留か、核を含めた部材化か。戻るまでに決めろ」
去った。律が隣で書いていた。
「八百四十七語」
「そこ?」
「全文読んだんだと思う」
私は五人を見る。昔なら、全員を同じ「被害者」に入れたかもしれない。今は違いが見えた。監視規則を読まなかった。制度矛盾を作ったが出口を作らなかった。依頼者が何を価値とするか読まなかった。正しい記録が証拠になることを理解した。暗黙知を明示した。学校の評価を理解できる。それが、少し気持ちよかった。そこが一番悪かった。
五人は残留を選んだ。一人だけ、意思表示が強制下にあると追記した。追記料は四十単位だった。払い終わるまで、彼は列から出られなかった。
結は私の隣で、留めた右袖を見ていた。




