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もてなしてくれるその気持ちが、一番のお土産だ

 そんなこんなで、調査は明日から行くことになった。

 今日は村長さん───の隣のおうちで、一晩泊めてもらう。いってしまえば、旅疲れを癒してねという村のやさしさ。


 隣のおうちというのも村長さんの息子さんのおうちらしく、夫婦2人で暮らしているとのこと。こっちもかなり広くて、庭で言えば向こうの方が広いし倉庫もあるから大きいので言えばあっちだけど、実際住むところともなればこっちの方が広そうだ。


 僕たちは、2階で泊まることになるらしい。しかも2部屋。

 そこに、今案内してもらう。


「その、一応2部屋あるんですけど……」

 案内してくれている奥さんのシーアさんだけど、何か躊躇ってる様子。


 扉を開けたところはとても広い部屋。タンス、クローゼット、ハンガーラック、姿見鏡。

 何ともおしゃれな部屋だ。家庭観もあるし、いい部屋。

 ただ、一つ言えるのは……


「ベッドがその……キングサイズ1つしかなくて」


 広さからして1人で泊まるようじゃないだろう。

 きっと2……いや、3人部屋といったところ。ベッドもキングサイズだし。


 いや、向こうの部屋がもしかしたら2人で寝れるのかもしれない。


「もう一つも見せてもらえますか?」

「も、もちろんです」


 そう言って隣の部屋へ。こっちは角部屋で安心だ。

 そうして扉を開いた先は、1人が快適に過ごすことを想定したかのような部屋。

 2人で過ごすのもできなくはないだろうけれど、ベッドはシングルベッドか……


「すみません……」

「いやいや大丈夫ですよ!泊めてもらう身ですし」


 こっちの人たちは全く悪くないのに、なんとしたことか謝らせてしまった。

 わざわざ依頼を受けたのは僕ら、もとい僕なのだから責任はこっちにある。


 とはいえ、どうしたらいいんだろう。

 この中で言えば一番大きいのはロゼル。

 この子くらい、大体190cmの大きさなら、シングルベッドはかなり狭いだろう。

 寝返りをうてばベッドからはみ出てしまう。

 だから、こっちに泊まるのは必然僕入れて他の3人になる。

 でも、そうなったら僕・ガレド・ロゼルでキングサイズのベッドに寝ないといけない。

 流石に男2は不安が残るだろう、たとえ幼馴染と言えども。何もしないとか、そういう話じゃないんだ。

 逆にルーナを一人にしても、ロゼルも嫌だろうな。


 ともなれば、僕が1になるのが賢明なのかな。

 というか、そっちが快適そう。なんなら1の方が良いまであるのかもしれない。

 キングサイズと言えども3人は流石に狭いだろうし。


「……ガレドこっち」

 疲れた様子のルーナがそう言った。


「俺?まあいいけど」「え」

「僕じゃないの?」

「アラトは小さい。だから向こうで少しでも広くする」


 たしかに。

 ルーナって普段使わないだけでちゃんと頭いいよね。


「わ、私もそれに賛成です!」

 食い入るように言った目には、何か急いでる様子にも燃えるような熱意があるようにも見える。


「そ、そうだね。そうしようか」

「すみませんほんと……」

「「いや全然!」」「大丈夫だって」「ん」


 まあ、仕方ないよね。旅にはこういうのもつきもの。


 何か、そう思うと旅してるみたいだ。

 実際してるんだけど。


「じゃあ、夕ご飯にしましょう。今日はお肉がたくさん入ったので、よければ皆さんもたくさんどうぞ」

「いいんですか!?」

「はいもちろんです」


 シーアさんは優しく笑って、僕たちをリビングに案内してくれた。



───夕食、もとい夜ご飯はとてもおいしくて楽しかった。

 村長の息子さんのブゥンさんによる、この村のグルメ話を聞いたり、ウシの色んな部位のステーキを食べたり牛すじ煮込みを食べたり……

 とにかく食べた。一番食べてたのはロゼルで一番申し訳なさそうだったのもロゼルだった。

 一番遠慮がなかったのはルーナだった。


 そして、あっという間に夜になった。


「いやあ、お風呂気持ちよかったね」

「そうですねぇ~~」「ん」


 月明かりが差す窓の向こうからは、コオロギや鈴虫、カエルからフクロウの声までが入り乱れ、混ざっているようにも合唱しているようにも聞こえる。

 そんな中、ロゼルの《聖なる盾(ホーリーシールド)》を使った快適化によって、夏の日差しと風呂によって火照った体を涼めていた。

 何と便利な神聖魔法。僕も使えたらいいけど、こんな芸当できるのは神聖魔法と親和性の高いエルフだからだろう。

 まあ、ルーナももしかしたらやろうと思えばできるのかもしれないけど。


「そう言えばルーナ……」

「?」

「耳、久しぶりに見たかも」

「そう?」「うん」


 パジャマ姿のルーナ、帽子と服はハンガーラックに吊るしたみたいだ。

 そのおかげで、頭頂部についているもふもふとした耳が露わになっている。


「やっぱり、かわいいね」

「……」


 ロゼルも、流石にパジャマまでは神官の格好はしないみたいだ。

 あれは少し寝ずらそうだし、何となくギャップがあるというか。

 こっちは見慣れてるけど、尖った耳を見るとやっぱりエルフなんだなって改めて思う。


「ロゼルも、何か新鮮だね」

「そうですか?」

「うん、あんまりパジャマで言うことじゃないけど、似合ってるよ」

「そ、そうですか」「うん」


 こういう時は褒めた方が良いよね。

 きっとそうだ。


 外の音がよく聞こえる。

 それは僕たちが静かだからだろう。左右にはブゥン夫婦とガレドがゆっくりしている。

 やっぱり、家の中というのは馬車よりも落ち着くな。


 何となく部屋を見回す。

 やることがない。そういえば、本持ってきてたはず。

 いや荷物はルーナが持ってるのか。そんな頼むほど読みたいわけじゃないし、やっぱりいいか。

 ならやることがない。

 というか、何かやりたいわけでもない。


「ふわっあぁあ……」

 ドでかい欠伸が出た。

 目が潤んで、腕で拭う。


「そろそろ寝る?」

 時計がなくて何時かわからない。田舎のいい所の一つである、時間に縛られないという所を体現化したかのよう。


「いいですね、そろそろ寝ましょうか」

「ん」


 僕たちは明かりを消してベッドに潜り込んだ。

 キングサイズのベッドは、流石といった具合に丁度良く沈み丁度良く弾く。

 布団も、全く暑苦しくなくてむしろひんやりと清涼感すらある。

 枕も、肩から支えるような物みたいで首への圧が全くない。


 ただ一つ、気になると言えば……


「僕真ん中なんだね」

「「……」」


 僕の問いに2人は目を瞑って答えない。

 静かに息を吐いて、吸っている。

 寝たらしい。


 僕も目を瞑る。

暗い中だとよく聞こえる、外からコオロギと鈴虫の鳴き声。

 そういえば、コオロギと鈴虫は、いやそれに限らないけど虫が鳴くのは求愛の意味が強いんだとか。

 それを僕たちは夏の風物詩と呼ぶ。なんだか……

 いや、いいや。


 今は……もう───



◇◇◇



(寝れるわけないじゃないですか!)

 アラトが目を瞑ったのを薄目で見送って、しばらくの後逆に私はゆっくりと目を見開いた。

 わずかに開いた口からは、薄く息を吐いて吸う一定のリズムが取られている。

 それに、私の荒い息が埋め尽くすかのようにかかる。


 外からは虫の鳴き声がよく聞こえるが、それを塗りつぶすように人の声。壁の奥からだ。


「あ、あなたダメよ。お客さんがいるわ」

「いいじゃないか、どうせっこんな夜だと聞こえやしないさ」


 蜂蜜のように甘い声が壁を越えて耳に入る。

 それは……いや、悪いことではないはず。仮にも泊めてもらっているのだし、正に行くのは大いに間違っている。

きっと……恋焦がれる、いや愛に燃える相手を目の前に聞いてしまう私がいけないのだろう。聞くならまだしも、こんな……こんな気持ちに……


 その声が激しく、愛を奏でるセッションが奏でられるにつれて私の息も荒くなる。

 頭の中……こんな妄想していいはずがない。


 小さい体のアラトを、「……だ、だめだよ。僕たちそんな歳じゃ」と優しく断る彼に

「いいじゃないですかっほらっ」なんて、無理矢理上に跨り彼を愛で塗りつぶして……


(落ち着きなさい……落ち着きなさい私)

私は神官。美の女神に仕える者。

愛に寛容でそのような行為も認められるとはいえ、無理矢理行うなど許されない。


 このままだと体が動いてしまう。頭のことを実現しようとしてしまう。


 鼻から吸うよう試みる。

 吸って……吐いて……


 落ち着きなさい。


 静かに眠る顔を覗きながら、アラトの体から出されたそれを取り入れるように深呼吸をする。

 ところが───


「んっ!」


 不意に声が漏れた。アラトの体が揺れる。

 腰には腕が巻き付いている。


 奥には、まるで一つになる様にへばりつき、そのまま体を……主に下腹部辺りをこすりつける猫耳を生やした女の姿。


「(ちょっと何やってるんですかルーナ!)」

「(んっんっロゼルは黙るべし)」


 何とけしからん品のない行為。

 しかも眠る相手になんて……


「(黙るとかじゃありません!やめなさいそれっ!)」


 動かす腰を掴んでそのまま引きはがす。


「(やめっ!離せ)」

 今にも戻ろうと力を感じる。

 しかし、私の腕力には敵わないみたいだ。


「(ダメです!ミラフィア様に対する冒涜です!)」

「(私は神を信仰してない。だから大丈夫っ離せ)」


 全く聞く耳をたてない。

 なんで、向こうが圧倒的に間違ってると本人もわかってるだろうになんでやめないのだろうか。


「(やめなさい!)」

「(もう少しだけっ)」

「(ダメです!)」

「(もう少しっ)」


「ん、んん?」


 間に挟まる彼が、僅かに目を開けた。

 寝ぼけてるのか急いで定位置に戻った私たちを見つめている。


「大丈夫?寝れない?」

「いえさっき起きてしまっただけですからぁ、あはは……」

「ん、さっき起きただけ、すぐ寝る」

「そう?やっぱり慣れないベッドだと起きちゃうよね……まあ僕もそのうちのっ」

 言いながらも欠伸をする。

 何と愛くるしくて可愛いのか。どれだけ技術が進もうともこの気持ちを理論化することは不可能だろう。この、胸が締め付けられるような、といってもこの感覚すら嬉しい今にも全身で表現したいこの衝動を表すことは。


 そしてまた、「おや、す……」と言いながら目を瞑った。


「「ふう……」」

 呼応するようにため息をついた。

 隣はまだ励んでるらしい。きっと来月には子供ができるだろうという具合に。


「(私たちももう寝ましょう)」

「(ん。《音の障壁(ノイズウォール)》)」

 

「(ありがとうございます……)」


 何か、無音になったら突然眠たくなってきた。

 大きな欠伸をしてしまうくらいに。

 頭の指示に従って目を瞑る。


 今はまだ妄想だけれども、いつかは本当に。

 そうなったら……私は───


読んでくれてっありがとー!!!

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