白猫の功名ー3
ことわざっぽい所から続いてます!
よろしくお願いします!
2階、3階へと上がっていく。
勿論移動はエレベーター。
これもシュルフタル製らしい。なんとまあ、すごいことなんだろう。
何をどうやってだとかは、僕にはさっぱりわかりやしないけど。
「「「……」」」
小さい箱の中に流れる静寂の音。
4の文字で止まり、そのまま扉が開いて、この中の空気と外の空気が混ざり合う。
人工呼吸のように、詰まった息を吹き返した。
そのまま奥へと歩いていく。
今、この家の構造のどこにいるのか、さっぱりわからない。
どこにいるんだ僕は。
窓から見えるのは、夕焼けが差す草のガーデニング。
そのまま進んでいって、端に来た。
「こちらです。ディナーの際はお呼びいたしますので、ごゆっくりお寛ぎください」
手の先には2つの部屋。
「ん」
ルーナが手前の扉を開いて中へと消えていった。
僕は壁端の方の扉を開いて、中へと入る。
広々とした部屋に、煌びやかさと落ち着きを兼ね備えた丁度の良い装飾品と家具たち。
右には広々としたトイレと風呂、しかも別。
何より目に入るのが、堂々と佇む蚊帳のついた大きなベッド。
ロゼルが寝っ転がっても余裕そうなくらいに大きいし、分厚い。
この蚊帳は閉めれるのかな。
そして机の上に置かれたカバンが、僕の部屋であることを証明している。
「うわぁ……」
圧巻の風景に目と心を奪われる。
「ふふふっ」
後ろからメイドさんの笑い声。
それに僕は顔を熱くする。
「す、すみませんはしたなくて」
「いえ、私は可愛らしいと思いますよ」
「そ、そういってもらえると助かります」
無意識に頭を掻く。
「じゃあ、失礼します」
「あ、はい」
その声とともに、扉が閉まった。
さすがに、ここを土足で踏みしめてしまうのは申し訳ない。というかもったいない。
せっせと靴を脱いで、絨毯のない所に置く。
「ふんふんふ~ん」
机の引き出しを確認。
アメニティ……じゃないけど、何かないかな。
うちのホテルだと大体コーヒーのパックとか入れてるけど……
「ん?なにこれ?」
目隠し……のようだけど、耳を挟むような紐。それにすごく温かい。
それに、見たことのない器具。
これも紐のようなものが出てて、先に2つうさ耳のように飛び出している。
ちょっとかわいい。
適当にこの 無、温風、セット、冷風って書いてるレバーを上下。
何も起きない。
“風”って書いてるくらいだから風が出るのかと思ったけど、違うみたい。
それを持ってぶらぶら歩く。
どこにもそれっぽい場所は……
トイレを開く。
鏡と洗面台、歯磨きと歯磨き粉。
それに、何かついてる。
穴……このでっぱりと似てるな。
「刺せばいいのかな」
それを手前に持って、穴に───
「えいっ」
突き刺した瞬間、この機会が音を立てて風を吹き出した。
「うわっ!」
どうすれば止まるんだ。
「えと、えと……あっ」
この無って書いてるとこに───下げる。
止まった。
一応抜いておこう。何か刺してるだけで見たいなのあったら怖いし。
それを持って机に向かった僕は、そのまま引き出しにしまった。
こわい。僕の手には余る。
そして、その右にある引き出しを開く。
コーヒー豆とかか。
その下は……袋詰めのお菓子かな。
一番下を開いた。
「ん?なにこれ
」
何か、薄いゴムのような……
でも何か、既視感のような不思議な感覚。
どっかで見たことある。
「あっ」
そうだ、この前読み友のあの人に無理矢理教えられたんだ。
───「お前よぉ、もしも女とヤるってなったらこういうの使えよ」
「え?やるって何をですか?」
「何をってお前───」
───「確かこれって避妊の……」
顔が熱くなる。
ダメだ、これこそまだ早い。
まだ責任をとれる年齢じゃないんだ。
急いでゴムを棚に戻し、息を整える。
全く、一人で何してるんだろう僕は。
「……ふう」
顔の熱気が引いていく。
疲れたし、ゆっくり休もう。
「お風呂入ろっかなj」
僕は服を脱いで、風呂へと向かった。
◇◇
杖を次元にしまって、ベッドに寝転ぶ。
包まれるようでいてしっかりと支えられるような……
きっと、私でなくとも誰でも好きだ。
ロゼルも、ガレドも、アラトも。
「ふぅ……」
そうだアラト。隣の部屋にいるはず。
帽子を脱いで、耳を壁に押し当てる。
足音。靴を脱いでいるのか聞こえにくい。
引き出し……何かを取り出してる。
通り抜けんとばかりに、身体を押し当てる。
もっと、もっと近く……
その時。
ノックが鳴る。
「ルーナさん?」
体を戻し、何もなかったかのようにベッドに座る。
「ここにいらっしゃると聞いたのですけれど……」
扉越しのこもった声。
「いる」
「失礼してもよろしくて?」
「いい」
扉が開く。
嬉しそうにこっちを見ているマリアとさっきのメイド。
扉が閉まる。
中に入ったマリアは私をまじまじと見つめて……
「あら、獣人さんでらしたのですね」
「そう」
「可愛らしいですわ!」
甲高い声をあげながら、私に小走りしてくる。
耳が自然と動く。
心をどこに置いたらいいのかわからない、不思議な気持ち。
「何しに来た?」
「あっそうでしたわ!」
「敬語いらない」
「ほんとですの?ありがとうルーナ!」
「ん。友達」
体を弾ませながら、私の隣に座る。
平べったく倒れ込むドレス。その両端を抑えるように手を置いた。
「友達……私、貴族以外の友達は初めてなの!よかったら、あなたのお話聞かせて!」
「おーけー。なんでもかもん」
「ホント!?なら、小さい頃は何してたの?」
「小さい頃……学校」
頭に冴えわたるあの時の光景。
友達はアラトと2人以外はいなかったけど。
でも、アラトがいてくれただけで……
きっと2人そう。
「学校行ってたのね!私も貴族学校に通ってるのよ!」
「ん。偉い」
マリアの頭に手を置いて、左右に動かす。
長い髪、艶やかに光を反射している。
少しだけ赤くして、言葉にならない声を漏らすマリア。
「それ以外はどうしてたんですの?」
「アラトと本読んでた」
「まあ!殿方と一緒に……素敵!まだお付き合いはされていないようですけれど、やっぱり……?」
確かめるように、私の眼を覗き込む。
鼻が触れるほど近い顔。
ラベンダーの香りが鼻を通り抜ける。
「そう」
「やっぱり!どおりで恋の匂いがしたわけね!」
跳ね上がるような声を出し、両手を合わせる。
貴族は、もしかするとこういう話が好きなのか。
でも、悪い気はしない。
「アラトさん、素敵な顔立ちでしたわ。背は低いですけれど、それを差し引いても有り余るあの人懐っこさ……やはり、敵は多くて?」
「ん、いる」
「やはり!これは燃えますわね。私はルーナの味方よ!頑張って!」
流れるように私の手を掴んだ。
小さいけど力強い。
「ありがとう、マリア」
「ふふふっ当然よ!」
自慢げに小さく笑った。
「そういえば、ルーナは冒険者よね?」
「そう」
「杖を持ってらしたけど、魔法使いなの?」
まっすぐ見つめたまま私は頷く。
「まあ!どんな魔法が使えるの?」
私をまっすぐ見つめる。
その目にはさっきとは違った光を放っていて、まるでおとぎ話に夢中な子供のよう。
「ほとんどなんでも使える」
「?私、学校で人には“魔法適性”があって、それ以外は使えないって聞いたけれど?」
「だから、私はすべてに適性がある」
「えぇ!ほんとうですの!?」
真ん丸とした黒目。
大きく見開いた口。
それを手で覆い隠すマリア。
「ホント。なんでもできるすーぱー魔法使い」
「すごい!」
「でも、これはアラトのため。だから、ややこしいことに巻き込まれたくない」
「わかったわ」
お互い、片足をベッドに預けて向かい合う。
「ルーナと」
笑ってる。
マリアだけじゃない。
「マリアだけの」
きっと私も───
「「秘密」」
笑ってるんだろう。
人差し指を口元に立てて、誓い合った。
その時。
「ルーナ様、ディナーの準備が整いました」
扉の音とともに、奥からメイドの声が聞こえた。
次回へ続く!




