休日六日目
「うーん、どうしよう?」
お悩み中な僕です。悩みの種は何か、っていうと、
「…………いっぱい残っちゃったなー」
昨晩のメニューのフライドチキンとチキンスープの処理です。
昨日はオーナー以外もごたごたしてたっぽいんだよねー……特に自警団の皆さんが……うん、何か不穏だよね、探りを入れても教えてくれなかったし……まあ、でもオーナー達が僕に教えないことを選んだなら仕方ないよね? 大人が子供に隠し事をするのはままあることだもん。
つまりそういう訳で良く食べてくれる常連さん達が来なかったから夕べは料理がかなり残っちゃったんだ。シュークリームはお土産に持って帰ってもらいなんとかしたけど、さすがに料理まではねー……泊まりのお客さんに二食おんなじのは出せないんで朝食は一から作ったし……なんで、昼前の今、困ってんだなー……うーん、
………………あ、そうだ!
「忙しかった自警団の皆さんの差し入れにしよう!」
うん! 一石二鳥のナイスアイデアじゃない? ……じゃあ、
「……チキンスープは具とミルクを入れてトロミつけて……で、フライドチキンは……あ、甘辛ソースで和えてレタスとトルティーヤで巻こう!」
うん、うん、良いね、じゃあ……、
「作るぞーっ!」
やったるぞーっ!
* * *
「喜んでくれるかな?」
スープとラップサンドを載せたワゴンをカラカラと押している僕です。重いからね、僕非力だし、で、スープが冷めない距離のギルドホールに入って……あ、ちょうど良いところに、
「アランさん、ちょっと良い? これ、自警団の皆さんとギルド職員さんへの差し入れなんだけど……どこに置くべき?」
癒し系自警団員のアランさんを発見したんで尋ねます。……うん、置くのは決定事項だよ? 持って帰ってもしょうが無いし、
「え? あ、ありがとう? ……あ、じゃあギルドの休憩室に、が、良いと思う……かな?」
おっとりとして見えるけど結構腹の据わってるアランさんは困惑しながらももろもろを鑑みて判断し、ワゴンをギルド職員用の休憩室に運んでくれます。うん、頼りになるね!
「……っていうか凄い量だね? どうしたの?」
「んー、昨日皆さんが来なかったから……余ったし心配だし?」
恩は売り付けたいし? ……なんてね?
「……あー、なるほど……真心と打算か」
……わ、アランさん結構鋭いなー……ま、
「一番は心配だよ?」
建前は大切だよね!
* * *
あの後、アランさんと一緒に行った休憩室で、たまたまいらした凄腕窓口レディ──勤続十年のベテラン──に差し入れを託し、帰って来ました。
「……喜ばれてたら良いなー」
うん……じゃあ、さてと、とっといたのでお昼も食べたし、
「昨日使っちゃった矢を補充しよう!」
作るぞー!
「シャフトはどれにしようかな?」
迷宮素材の……しなり重視で魔竹? 軽さでアミウム? 丈夫さで黒玉柱? うーん……よしっ!
「イロイロ組み合わせてみよっ!」
作るぞー!
* * *
イロイロ作ったよ! だーかーらー、
「試し撃ちっ!」
を、結構広い白雨亭の裏庭でやるよ!
「……んじゃ、結界張る」
安全確保を先輩に頼んだよ! 二つ返事で頷いてくれたよ! 先輩ホントにいい人だよ! 後、
「……うん……では的を」
的も出してくれます! ……って心を落ち着けて……矢を……、
* * *
「……んー、アミウムは軽すぎて空気抵抗が……あ、迷宮なら良いかも……黒玉柱は飛距離出ないなー……硬い敵を近距離で、なら行けるか……でも基本は魔竹かなー? うん、魔竹中心で組み立てよう」
現在宿の横の通りに面した庭で先輩とお茶をしている僕です。可動式の布庇の下にテーブルセットを用意したんだー……先輩が、なんか僕の前に料理が出来る人が住んでた時にBBQをしたとか、
「……いたんですねー……料理人の先輩が」
例の先輩の方向音痴対策のトライアルアンドエラーを繰り返し、結局成功にいたらなかったお方でもあるそう…………助かりました!
「出てってそろそろ五年になる……帰って来るかも知れんが……お前のメシの方が美味いから譲るな」
ちょっと他の迷宮も探訪して来るよ! と、旅立った彼は、白雨亭を『帰る場所』だと語っていたそうです。……うん、わかります。
「……まあ、簡単に譲る気はありませんが……あ、このココナッツマカロンも美味しいですよ?」
ちなみに今日のおやつは昨日カスタードクリームを作ったさいに残った卵白でメレンゲ、ココナッツマカロン、ラングドシャクッキーを焼きました。濃いめの紅茶が美味いです。
「……美味い」
うん、本当に譲る気は無いよ!
厨房の主の座も、この可愛らしくサクサクしている男前の相棒の座もね!
『シャーロックの矢』
シャーロック愛用の矢。
用途に合わせて五種類ほどを常備。
普通の竹製や、木製もあるが、
最近は迷宮素材を使うのにハマっている。
鏃にイロイロした品もあります。




