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ArchAngel/harem night  作者: 鳥居なごむ
第四章
34/41

002

 ホームタウンを初期位置から変更してなかった俺は、鉱山都市コークスの広場に瞬間移動することになった。滞在期間は一番長かったのだが、随分久しぶりというか、懐かしい気持ちにさせられる。


 幸いチグリスとの合流までには時間がある。

 俺は見慣れた街並みを眺めながら釣り場へ向かう。

 あっさり再会できると考えていたのだが、どうやらそう上手くはいかないらしい。

 以前なら港で必ず釣りをしている時間帯にも関わらず爺さんの姿はなかった。

 先にギルド結成の手続きを済ませることにした俺は、以前に見かけたことのある専用NPCのもとを訪れる。簡潔な手順を踏むと即行でギルドエンブレムを発行してくれた。この辺は仮想現実の利点というか、証明書一枚に何十分も待たされる、現実世界の役所とは大違いである。もっとも単純に比較するのは酷かもしれないけどな。



【ダンゲロス:ギルドマスター】

 REN:換装士Lv35

【右手】 グレートクロスボウ

【左手】 ボルト<アシッド>

【頭】  レザーバンダナ

【首】  猛獣の首飾り

【耳】

【胴】  シェイドハーネス

【両手】 バトルグローブ

【指】

【背】  影王の長外套(マント)

【腰】  レザーベルト

【両脚】 シェイドトラウザ

【両足】 シェイドレギンス


 生産スキル

【彫金】88 【鍛冶】56 【裁縫】0 【錬金術】45 【革細工】0

【木工細工】40 【硝子細工】42 【調理】0 【釣り】28


 アリア:弓銃士Lv∞

【右手】 アサルトブレスト

【左手】 

【頭】  ヘッドフォンW

【首】  ヘッドフォンB

【耳】

【胴】  エプロンドレス

【両手】 黒のアームウォーム

【指】

【背】

【腰】  

【両脚】 黒のニーソックス

【両足】 ブーツ



 改めてステータスを確認すると、ここ最近の生産スキル上げは微妙だ。

 もちろん数字が高くなるに連れて一つ上げるだけでも大変になるのだが、心血を注いでいた初期の頃に比べると、まるで初心を忘れて当選することが目的になった政治家と変わらない。俺は眼鏡を世界に広めたくて生産職を選んだんじゃないのか?

 それなのに今は眼鏡を金策の道具にしか利用していない。

 そして稼いだジュエルで魔物を倒す武器ばかり購入している。

 

「一体なにをやってるんだ俺は……もっと生産した眼鏡に語りかけてあげないと駄目だろ。それどころかアンダーリムやナイロールのフレームがないところを撫で回す時間も取れていない。当時の情熱を取り戻そう……そうしなければ眼鏡に合わせる顔がない」


 決意を改めた俺は競売所へ向かう。

 七都市巡りに必須の花束と眼鏡の素材を大量に仕入れておく。

 各地を旅しながら眼鏡の素晴らしさを広めていこう。

 

 早速、データ化された地図を確認する。

 以前に爺さんから地図をもらっているので七都市周辺の地形が表示された。七都市で購入可能な地図とクエストで入手する地図、それらを組み合わせることで世界地図は完成するため、空白部分はあるが事前入手の利便性は計り知れない。


 各都市の配置上、大陸の外周を回ればいい。

 選択肢があるとすれば、右回りか左回りか、精々それくらいだろう。

 とりあえず今日は鉱山都市で一泊して、明日、もう一度爺さんがいないか確認しよう。眼鏡を広めるための七都市巡りはそれからでも遅くない。先に宿の確保を済ませてから俺は港へ向かい遊覧船で釣りを楽しむことにした。


【恵比寿の釣竿】SSS

 ――――――――――――――――――――――――――

 七福神恵比寿が使用したとされる伝説の釣竿

 伝説級の獲物に対してボーナスを得る

 競売不可/譲渡可能/複数所持不可

 ――――――――――――――――――――――――――


 もちろん最大の関心事はSSSランクの釣竿である。

 俺は汽船の甲板から静かに糸を垂らした。仮に魔物を釣り上げたとしても、今の俺なら余裕で倒せるだろう。しかしレベリングは考えていないので、忠実の天使アリアを召喚しておく。最近は便利キャラクターというか、愛犬を散歩させるような、不真面目な理由で呼び出している。とはいえ召喚しないと拗ねられるのでどうしようもない。


 釣りの基本は狙っている獲物に対応した餌を選ぶことだ。

 どんなに高級な竿と餌を用意しても、知識が正しくなければ結果は伴わない。

 そこには眼鏡と置き台である顔との相関関係に等しいものを感じる。どんなに素晴らしい眼鏡もそれを引き立てる場所がなければ魅力は半減するからな。

 高尚な思考を巡らせながら釣りを楽しんでいると背後から声をかけられた。


「えらい珍しい釣竿使ってるやん。どこで手に入れたん?」


 振り向くと金髪のボブカットに褐色肌のギャルが立っていた。

 本来なら最も関わりたくない種類の人物だが、赤縁のアンダーリム眼鏡をかけているとなれば、このまま無視を決め込むわけにもいかないだろう。


「たまたま運が良くて入手できたんだよ」

「ふーん。おっぱい触らしてあげるから頂戴」

「ぶっ!」


 俺は盛大に吹き出してしまう。

 初対面の相手に躊躇のない下ネタ発言――この女間違いなくビッチ・オブ・ビッチである。そう考えると眼鏡も性的興奮を煽るための道具しか見えなくなってきた。


「冗談に決まってるやん。あんたと同じでうちにも相方がおるからね」


 どうやらアリアを俺と恋人と勘違いしているらしく、断られることを前提に下ネタを振ってきたのだろう。なんにせよ感心できるようなことじゃないけどな。


「ところであの格好ってあんたの趣味なん?」

「違う。最初に出会ったときからあの格好だったんだよ」

「なんやオンラインで知り合ったん?」

「少年が戸惑っているじゃないか? もう少し質問に配慮したらどうだい?」


 ギャルの相方には似つかわしくない生真面目そうな青年が歩み寄ってくる。

 外装を金髪碧眼に変えているみたいで、異国の好青年という印象を漂わせていた。


「僕はストラトス。こっちがライザだ」


 後衛系の衣装を身に纏った青年は自己紹介を済ませる。

 こちらも俺とアリアの名前を伝えておく。二人は各地を転々としながら『ベッフェロークラウン』という魚を探しているらしい。なんでも釣りにおける「特殊生産技術Ⅲ」の修得に必要とのことだった。


 正直なところ驚きを隠せなかった。

 確かに釣りはスキル上げと金策を並行して行えるが、それでも「特殊生産技術Ⅲ」の修得はまだ先と考えていた。本当に現状維持では衰退するばかりなのである。眼鏡職人として最前線に立ち続けたいなら、抜本的な意識改革が必要なのかもしれない。


「蓮も生産職なのかい?」

「わかるんですか?」

「特殊生産技術と聞いて表情が変わったからね」

「なんの生産してるん?」

「ここからは男同士で話すからライザは『ベッフェロークラウン』の情報収集を頼むよ。実践を試すなら疑似餌じゃなく生餌で挑戦してほしい」

「はいはい。休憩交代の時間やし、生餌で挑戦してみるわ」


 ギャルを見送りながら青年は俺を一瞥する。


「悪い奴じゃないんだが、苦手なタイプだろう?」

「わかりますか?」

「エプロンドレス姿の相方を連れている少年にライザは合わないからね」

「アリアの格好は別にしても……確かにその通りですね。ただ赤縁のアンダーリムは目を見張ります。あれがなかったら会話をする勇気さえ持てませんでしたよ」

「ほう……それは意見を聞かせてもらいたいね。一見するとオンラインゲーム参加者を軽蔑していそうな褐色ギャルが、赤縁のアンダーリムをかけているだけで、童貞にもいろいろ教えてくれそうな印象を与えているということかな?」

「そんなアダルトビデオ的な展開は期待してませんよ。ただ赤縁のアンダーリムをかけることで刺々しさを和らげる効果はありますね」

「実に興味深い」


 ストラトスと名乗った青年が話に乗ってくる。

 俺としても眼鏡談議に花を咲かせることはやぶさかではない。

 とはいえ俺を童貞扱いしたことは許し難いけどな。


「巨乳や爆乳という言葉を聞いたとき、大半は谷間や下乳などの、メインディッシュを連想してしまう。しかしそれはコース料理の楽しみ方を知らない素人だ。大きな胸こそ身体の線がわかるセーターやニットを着てもらうべきだろう?」


 初対面の俺にいきなり性癖を語り出す変態野郎だが、ストラトスの真剣な面持ちには、ついつい話に聞き入らせてしまう魅力と雰囲気があった。


「視姦の重要性ですか?」

「その通りだ。ぴったりした服装こそ胸の大きさを強調できる。このオードブルを逃してメインディッシュに飛び付く安易さは頂けない。まずはセーターやニットを着た状態で鞄を斜めにかけたときの半端ないエロさを堪能すべきだ」


 巨乳という言葉を聞いて最初に思い浮かべたのは天音だった。

 先輩と懐いてくれていたことが遠い昔の出来事のように感じる。

 どういうわけかストラトスとは気があって、それから長い時間をかけて意気投合した。何週目かの遊覧を終えて港へ到着したとき、ライザが血相を変えて駆け寄ってくる。その口から紡がれた内容を聞けば、その表情も納得するしかなかった。


「新しい魔導書が発見されたらしいで!」

「なっ!」「なっ!」


 俺とストラトスの驚きが見事に被ってしまう。

 それを見たギャルは腹を抱えて笑い始めた。



 ヴァルハラ攻略スレ★225


 125:八宝

  なんか新しい魔導書の発見って久しぶりじゃないか?

  まとめは把握してる奴に任せるね。


 【慎重の魔導書(グリモア)】SSS

  ――――――――――――――――――――――――――

  天使シャムネルを召喚するための魔導書

  慎重な態度が「強欲」を抑制する

  競売不可/譲渡可能/複数所持不可

  ――――――――――――――――――――――――――


 126:はがない

  テンプレ用にどうぞ。

  希望:帝都で皇帝に謁見

  忠実:レビアの泉に規定回数硬貨投入

  知恵:カラハル沼の主を撃破

  慎重:


 127:ZEEK

  取得の経緯はなにも判明してないっぽいな。

  デメリットは食欲と疲労の発生で確定なのか?


 128:ララポート

  疲労が溜まるようになったことは間違いない。

  VIT依存とか細かいことはなにもわからないけどね。

  食欲は今のところ検証が難しい。ただ半日も経てば嫌でもわかるかな?


 129:まどか

  徐々に笑えなくなってきたね。

  七つの大罪と対峙するときにどうなってるのか考えたくもない。


 130:ビビット

  なにもしないという選択肢を馬鹿にできなくなってきたな。

  特に家族連れや恋人と参加してる奴は攻略どころじゃないだろ。

  宿と食料を人数分確保するなんて並大抵のことじゃないからな。


 131:ハルク

  すでに自給自足で暮らす生活みたいなスレも立ってる。

  若い女の子は状況がはっきりするまで頼れる男の傍にいたほうがいい。


 132:ラローシュ

  野良の可愛い女の子なんていないだろ?

  大抵はギルドに所属してるか連れがいるかのどっちかだよ。


 133:天宮

  競売だけなら怖いけど、NPC食料店もあるよね?

  安価で購入可能なんだから、そこまで心配しなくても?


 134:ZEEK

  食欲を充たすとなれば結構な量が必要になるだろ?

  豆料理とか安価な食品で腹を持たせるのは絶対にきつくなるぞ。


 135:天宮

  言われてみると……結構きついかも。

  自給自足で暮らす生活みたいなスレで勉強しとこうかな。


 136:ハルク

  >>135

  俺んとこ来ないか?


 137:天宮

  >>136

  お断りします。

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