第九話「運命」
また、同じ天井。
「…………」
もう驚かない。
何度、この景色を見ただろう。
車。
階段。
トラック。
アサリ。
強盗。
何度も死んだ。
時間をずらしても。
外に出なくても。
海へ行くのをやめても。
一日中、何もしなければ明日を迎えることはできた。
でも――。
その先で死ねば、また昨日に戻る。
「……もう分かったよ」
俺は何をしようと、いつか死ぬ。
そして死ねば――また昨日に戻される。
何度明日へ進んでも、死んだ瞬間にやり直しだ。
だったら、もういい。
死なない方法を考えるのはやめよう。
どうせまた死ぬのなら――。
「伝えたいことだけ、美月に言おう」
俺はスマホを手に取り、美月に電話をかけた。
『もしもし? 湊?』
「あのさ、美月」
『ん?』
少しだけ緊張する。
何度死んでも、こういうのは慣れないらしい。
「実は俺、お前のこと昔から好きだったんだ」
『…………』
電話の向こうが静かになった。
そして――。
『急に何言ってんの!? は!? え!?』
「まあいいから、聞いてくれよ」
『いや、よくないよ! 急すぎるって!』
「俺……たぶん、また死ぬんだ」
『…………え?』
さっきまで慌てていた美月の声が止まった。
『死ぬ……? どういうこと!?』
「説明しても分からないよな」
俺自身、何が起きているのか分からない。
ただ、一つだけ分かっている。
「今日、お前たちと海には行けない」
『湊?』
「どう足掻いても……まともに辿り着けないんだ」
『ちょっと待って! ちゃんと説明して――』
俺は一方的に電話を切った。
「……これでいい」
言いたいことは言えた。
あとは、この部屋で待とう。
少なくとも、ここにいれば今日を越えられるかもしれない。
それから数分後。
――ピンポーン。
「……ん?」
インターホンが鳴った。
玄関へ向かい、ドアを開ける。
そこにいたのは――。
「美月……?」
「どういうことなの?」
美月だった。
俺はこれまでに起きたことを説明した。
死ぬたびに昨日へ戻っていること。
何度も死んだこと。
死因を避けても、別の原因で死んだこと。
そして一度だけ明日を迎えたのに、その日に死んで、また前日へ戻ってきたこと。
全部。
当然――。
「そんなの……信じられないよ」
理解してもらえなかった。
そりゃそうだ。
俺だって逆の立場なら信じない。
すると美月は俺の手を掴んだ。
「私がいれば大丈夫だから」
「え?」
そのまま俺を外へ連れ出す。
「あぁ……ダメだよ」
嫌な予感がする。
この場所。
この時間。
最初と同じだ。
「美月……車が来るんだよ」
――プップーーーー!!
「え?」
美月が振り返る。
俺も音のした方を見る。
そこには――。
見覚えのある車。
「あぁ……やっぱり」
結局。
何をしても――。
――ドンッ!!
身体に強烈な衝撃が走る。
そして俺は――。
死んだ。




