第八話「必然」
目が覚めた。
「…………え?」
見慣れた天井。
俺は慌ててスマホを手に取る。
日付を見る。
「…………」
昨日だ。
俺が死んだ日の――前日。
「嘘……だろ?」
俺はようやく理解した。
俺は同じ一日を繰り返していたんじゃない。
死ぬたびに――。
昨日へ戻っていた。
俺はベッドに寝転がったまま、今までの死因を確認する。
車。
階段。
大型トラック。
別の車。
アサリ。
そして――また、階段。
「……意味分かんねえよ」
何かを回避するたびに、新しい問題が起きる。
車を避ければ階段。
階段を避ければトラック。
海へ行くのをやめればアサリ。
何もせず部屋にいれば、死なずに明日を迎えられた。
それでも――。
結局、俺は階段から足を滑らせて死んだ。
「一体どうすればいいんだ……」
何かをすれば死ぬ。
何もしなければ、明日までは生きられる。
でも――。
結局、俺は死んだ。
「……夕方から外に出てみるか」
昨日は夕方まで何も起きなかった。
だったら、その時間まで待ってから外へ出ればいい。
俺は美月に今日も行けなくなったと連絡し、そのまま部屋で時間が過ぎるのを待った。
そして――夕方。
「ちょっと出かけてくる」
家族にそう伝え、玄関を出た。
何も起きない。
「……よし」
自転車に乗る。
何も起きない。
車も来ない。
トラックも来ない。
「コンビニまで行こう」
俺は近くのコンビニへ向かった。
無事に到着する。
「何も起きない……」
少し安心しながら店内へ入る。
すると――。
「あ……」
見覚えのある顔がいた。
美月だ。
「あれ? 湊?」
美月も俺に気づく。
「何やってんの?」
「あ、いや……アイス買いに来たんだよ」
「そうなんだ。用事は終わった?」
「うん、もう終わった」
そんな他愛もない話をしていた――その時だった。
「お前たち、動くな! 手を挙げろ!」
「え?」
店内に怒鳴り声が響いた。
振り向く。
男が立っていた。
その手には――銃。
「強盗……?」
男は周囲を見回すと、俺のところへ近づいてきた。
そして――。
「来い!」
「うわっ!」
腕を掴まれ、そのまま引き寄せられる。
銃口が俺に向けられた。
「動くな! 動けばこいつを殺す!」
「湊……!」
美月が俺を見る。
「動くな、美月!」
頼む。
何もするな。
動いたら――。
だが。
美月が、一歩動いた。
――パンッ!
乾いた音が店内に響いた。
「…………」
胸が熱い。
力が抜ける。
俺はその場に崩れ落ちた。
そして――。
死んだ。




