第六話「回避」
目が覚めた。
「…………」
また、いつもの天井だ。
もう何度目だろう。
俺はベッドに寝転がったまま、これまでのことを考える。
同じ時間に家を出れば、車に轢かれる。
時間をずらして車を回避すれば、階段から落ちる。
さらに慎重に行動して駅まで辿り着いても、今度は大型トラック。
その時間すらずらしたのに、結局別の車に轢かれた。
「……待てよ」
つまり、俺が時間をずらしても必ず死ぬなら――。
「海に行かなきゃいいんじゃないか?」
そうだ。
そもそも美月たちと海へ行こうとするから事故に遭うんだ。
だったら今日は家から出なければいい。
それに、俺が駅へ向かわなければ、美月たちが事故に巻き込まれることもない。
「そうと決まれば連絡だ」
俺はスマホを手に取り、美月に電話をかけた。
数回の呼び出し音のあと、美月が出る。
『もしもし?』
「よう、美月。今日ちょっと家の用事で行けなくなった。すまん!」
『え〜! 楽しみにしてたのに』
「本当にごめん! また今度行こうぜ!」
『……分かった』
「じゃあ、またな」
電話を切る。
「よし」
これでいい。
今日は家から出ない。
海にも行かない。
駅にも近づかない。
「これでアイツらも俺も死なない」
俺はベッドから立ち上がった。
焦る必要もない。
ゆっくり部屋を出て、慎重に階段を下りる。
一段。
一段。
無事にリビングへ辿り着いた。
「腹減ったな……」
そういえば朝から何も食べていない。
俺は冷蔵庫を開ける。
すると――。
「あっ、アサリ」
俺の好物だ。
ちょうどいい。
今日は海にも行けなくなったし、せめて好きなものでも食べよう。
俺はアサリを茹で、皿に盛る。
「いただきます!」
一つ口に入れる。
「うまっ」
やっぱりアサリは最高だ。
もう一つ。
そして、もう一つ――。
「……ん?」
その瞬間。
俺は――。
死んだ。




