第三話「現実」
そして――目を覚ました。
「…………」
まただ。
見慣れた天井。
見慣れた部屋。
俺はゆっくりと身体を起こす。
「これは……夢じゃない」
もう分かる。
俺は、同じ時間をループしている。
部屋を見渡した。
机の上に置いてあるスマホ。
脱ぎっぱなしにした服。
カーテンの隙間から差し込む光。
何もかもが、さっきと同じ。
窓の外を見る。
天気も同じだ。
雲の形まで同じに見える。
このまま準備を済ませて、家を出れば――。
俺は死ぬ。
「なんで……?」
意味が分からない。
「どうしてだよ……」
俺はただ、友達と海に行きたいだけなのに。
夏休み初日に、みんなで遊びたい。
ただそれだけなのに。
……いや、待てよ。
「すぐに家を出たのが悪いんじゃないか?」
そうだ。
同じ時間に外へ出るから、同じ車に轢かれる。
だったら時間をずらせばいい。
「一時間後くらいに出よう」
簡単なことじゃないか。
俺は海へ行く準備だけ済ませ、窓の前で待つことにした。
しばらく外を眺めていると――。
「あっ」
あの車だ。
間違いない。
二度も俺を轢いた車。
その車が家の前を通り――。
そのまま走り去っていった。
何も起きない。
俺は生きている。
「…………」
思わず自分の身体を見る。
どこも痛くない。
当然だ。
車はもう行ったんだから。
「やった……」
助かった。
「やった!」
これでもう死なない!
俺は急いで荷物を持つと、部屋を飛び出した。
美月たちが待っている。
早く駅に向かわないと。
そのまま勢いよく階段を駆け下りようとした――その時。
「あっ」
足を滑らせた。
身体が大きく傾く。
「え――」
そのまま俺は階段から転げ落ちた。
そして――。
死んだ。




