夏風邪
八月二十二日土曜日曇り
朝起きた時から、なんとなく身体がおかしかった。頭が重い。喉も少し痛い。身体の奥に熱がこもっているような感じがする。昨日の夕立に濡れたせいだろうか。それとも、ここまでずっと歩き続けていたからだろうか。どちらにしても、風邪をひいたらしい。起き上がろうとすると、身体が少しだけふらついた。大したことはない。そう思って立ち上がったものの、頭がぼんやりしている。窓の外を見る。昨日の雨のせいか、空は薄い雲に覆われていた。蝉の声もいつもより遠く聞こえる気がする。朝ご飯をどうしようかと考えたが、家の中にはろくなものがない。掃除をした時に冷蔵庫の中も見たけれど、食べられそうなものはほとんど残っていなかった。買いに行くしかない。財布とスマートフォンだけ持って外へ出る。近くの店までなら、それほど遠くない。そう思って歩き始めた。けれど、昨日までなら何とも思わなかった距離が今日はやけに長く感じる。足が重い。身体が熱い。道を歩いているだけなのに疲れてくる。途中で何度か立ち止まった。こんなところで倒れたら笑えない。なんとか店に着いて、適当に食べられそうなものを選ぶ。おにぎりとゼリー、それから飲み物。薬も買った。何を選べばいいのかよく分からなかったので、店員に聞いて風邪の時に飲むものを買った。会計を済ませて外へ出る。太陽が出ていないのに暑い。夏の湿った空気が身体にまとわりついてくる。帰り道は行きより長く感じた。家に着いた頃には、もう何もしたくなくなっていた。玄関を開けて、そのまま居間まで歩く。荷物を置いて、畳の上に座る。買ってきたものを袋から出す。おにぎりの包装を開けるのも少し面倒だった。ゆっくり食べる。味はちゃんとする。でも、いつもより薄く感じる気がした。ゼリーを食べて、飲み物を飲む。薬を飲んで、しばらくそのまま座っていた。頭がぼやぼやする。眠い。けれど、薬を飲んですぐ寝ていいものなのか少し迷った。そんなことを考えているうちに、まぶたが重くなってきた。布団を敷く。昨日までなら何とも思わなかった作業なのに、今日はそれだけで疲れる。横になると、身体が急に重くなった。天井を見る。ここに来てから、色々なところを歩いた。山にも行った。海にも行った。祭りにも行った。神社にも行った。貴女の知らない夏を見つけようと思っていたのに、いつの間にか自分がその夏の中を歩いている。貴女なら、こんな日にまで出歩こうとするだろうか。きっと「せっかくの夏なのに寝てるの?」なんて言う気がする。そんなことを考えて、少し笑った。笑ったら喉が痛かった。やっぱり今日は大人しくしていよう。明日になれば少しは良くなっているかもしれない。そう思って目を閉じる。窓は開けたままだった。涼しい風が入ってきて、カーテンを揺らしている。蝉の声が聞こえる。遠くで車が走っている。ぼやけた意識の中でそれらを聞きながら、僕はそのまま眠った。




