第15話「視線の変化」
レインは探偵兼記者・ルカと共に、 初めて“人を見る仕事”をすることになる。
ルカはレインを見る。
「……金いるんだろ」
レインの動きが少し止まる。
「図星か」
「別に」
「まぁいいじゃん」
「一人より助かるし」
「なんか見どころありそうだしな」
ルカは軽く笑った。 「レイン君」
「それに」
「ちょうど人手欲しかった」
「簡単な調査」
「手伝うなら少し払う」
「……何をするんですか」
「浮気調査」 ルカはあっさり言った。 「まぁ、よくあるやつ」
ルカは依頼内容を説明した。
「この男を調査する」
写真を見せる。 どこにでもいそうな男だった。
「この人が浮気を?」
「あぁ」
「真面目そうだろ?」
ルカは軽く笑う。
「でもな」
「人って、見た目だけじゃ分からない」
レインはもう一度写真を見る。
「……見つけたら?」
「すぐ教えろ」
「あと」 「誰と会うか」
「どこへ入るか」
「周囲をどれだけ気にしてるか」
ルカは指を折りながら言った。
「人間、隠し事してる時は」
「視線が変わる」
レインは小さく頷いた。
「……わかりました」
――その日の夕方。
レインはルカと並んで、繁華街の端に立っていた。
「……これ」
「本当に意味あるんですか」
「ある」 ルカはパンをかじりながら返す。
「浮気する奴ってな」
「“隠してるつもり”になるから分かりやすい」
「分かりやすい?」
「あぁ」
「目線、歩幅、店の選び方」
「人間、後ろめたいと動き変わる」
レインは少し黙る。
「……観察してるんですね」
「仕事だからな」 ルカは笑った。
その時だった。
「あ」 レインが小さく声を漏らす。
「ん?」
「左」 「帽子の人」
ルカが視線だけ動かす。
「さっきから」
「ガラス使って後ろ見てます」
「あと」
「歩く速度、一定じゃないです」
「少しずつ速くなってる」
一拍。
「尾行、気づいてるかも」
ルカは少しだけ目を丸くした。
「……マジか」
男は角を曲がる。
ルカが小さく舌打ちした。
「ビンゴだ」 「普通の人間はそんな歩き方しない」
レインは黙ったまま男を見る。
「お前」 ルカが少し笑う。
「やっぱ見えてるな」
男を追いかける。
レインとルカは、通りの物陰へ滑り込むように身を隠した。
しばらくして。
一人の女が現れる。
男は周囲を気にするように視線を動かした後、 女と並んで歩き始めた。
「……ビンゴ」 ルカが小さく呟く。
二人は、そのままホテルへ入っていく。
ルカは素早くカメラを向けた。
「よし」
シャッター音。
「後は、出てきた所を撮れば終わりだ」
ルカは壁にもたれながら息を吐く。
「ここからが長いんだよ」
「仮眠取りながら、交代で見張るぞ」
レインはホテルを見る。
派手なネオン。 笑い声。 酔っ払い。 呼び込み。
夜になっても騒がしかった。
ルカは「現実を知ってる大人」ポジションとして書いています。
綺麗事だけじゃなく、 でも完全に冷たい訳でもない。
レインの“ズレを見る力”と、 ルカの“人間観察”が噛み合い始める回でした。
次回も読んで頂けると嬉しいです。




