第28話「役割」
沈黙の中で、 次に動くべきものが、ゆっくりと形を持ち始める。
――どうやってやるか。
レインの言葉だけが、 まだ部屋に残っている。
“置いていかない方法を探すしかない”
シオンが小さく息を吐いた。
「……で?」
「具体的には?」
レインは少し考える。
「まず」
「本当に地下に繋がってるか確認する」
「監視人数」
「巡回時間」
「搬入の頻度」
「出口がどこに繋がってるのか」
低い声。
「分からないことが多すぎる」
ティアが壁へ背を預ける。
「調べるだけでも危険よ」
「だから分ける」
「監視のルールの穴を見つける」
レインは言った。
空気が少し変わる。
シオンが目を細める。
「……へぇ」
「どうやって?」
レインは続ける。
「一人で動くから見つかる」
「逆に言えば」
「役割を分ければ、監視は誤魔化せるかもしれない」
シオンが壁に保たれて聞いた。
「役割?」
「あぁ」レインは頷く。
「監視を見る役」
「情報を集める役」
「動線を確認する役」
アリアがすぐ顔をしかめた。
「最後嫌なんだけど」
「向いてる」 シオンが即答する。
「どういう意味よ!?」
少しだけ空気が緩む。
けれど、 レインは笑わなかった。
「問題は」
「誰を信用するかだ」
静か。
その言葉で、 空気がまた現実へ戻る。
ティアが淡々と言う。
「失敗したら終わり」
「誰か一人でも喋れば、全部崩れる」
エイルが不安を紛らわすように、ぬいぐるみを指でなぞる。
「もし……喋ったら」
「どうなるの」
誰もすぐに答えない。
シオンが代わりに笑った。
「さあな」
「でも、自由な未来ではないだろうね」
ティアが困惑しながら言った。
「怖いこと言わないでよ」
「脅してない」 シオンは返す。
「現実を言ってるだけ」
静か。
その時、 アリアがぽつりと言った。
「でもさ」
「なんか今、ちょっとだけ」
一拍。
空気が止まる。
ティアが顔をしかめる。
「……アリアは緊張感ないわね」
「そう?」
シオンが吹き出した。
「はは」 「台無し」
少しだけ。 ほんの少しだけだった。
部屋の空気が軽くなる。
レインはその光景を見る。
価値観は合わない。
考え方も違う。
でも今、 全員が同じ方向を見始めていた。
レインだけが、前を見る。
「……明日だ」
短く。
それだけで、十分だった。
“考える”は終わり、 “動く”へ変わる。
計画は、もう始まっている。
次回も読んで頂けると嬉しいです。




