表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/82

第4話「観客のいない拍手」

「うるさい部屋」から見て回ることになったレインとエイル。

そこにあったのは、賑やかさとは少し違う――“それぞれの形の娯楽”だった。

レイン

「一番うるさそうなとこから行くか」


エイル

「うるさそうって……アリアのこと?」



一拍。



レインはドアを軽く叩いた。

コンコン。

「入るぞ」



アリア

「今日は皆ありがとー!」

手を振りながら、誰もいない客席のように空間を見渡す。



「あれれ、声が小さいぞー?」

自分で笑って、自分で頷く。



一歩、前に出る。

「うんうん、聞こえてるよー!ありがとう!」



孤児二人は顔を見合わせる。

「えっと……」

言葉が出ない。



一拍。

「……全部です」



アリアはぱっと顔を輝かせた。

「いいね!“全部”って最高の褒め言葉!」

くるりと回る。



満足したように、ひとりで拍手をした。



レインは少し離れた位置で見ていた。

(……成立してるのか、これ)


(誰もいないのに)


視線だけで部屋を一周する。

(……いや)

(いらないのか)

観客が。


レイン

「別の部屋も見に行こうか」


エイル

「うん、わかった」



シオンの部屋。

トランプが、指の間で滑る。

無駄に綺麗な動き。



シオン

「好きなのを一枚取って」

「二人で見たら、戻していいよ」

後ろを向く。



振り向かない。

――時間を、与えている。

カードが戻る。



シオンは振り返る。

シャッフル。

迷いがない。



一枚。

すっと浮き上がる。

パチン。

指を鳴らす。

「君の選んだカードは――これ?」



孤児

「はい、そうです」



間髪入れず、シオンは笑った。

「ほらね」



髪をかき上げる。

「俺、凄くない?」



孤児二人は、少し遅れて拍手する。

「すごーい」

声が平坦だ。



驚きは、ない。



レインは、その様子を見ていた。

(……わかってる顔だな)

(最初から、全部)

シオンの視線が、一瞬だけ孤児をなぞる。



――反応を、確認している。

(当ててるんじゃない)

(作ってる)

(最初から、“反応込みで”)



「あ、はは」

レインは軽く笑って、目を逸らした。

「次、行こうか」

(……これ、毎日か)



エイル

「うん、マジックショーだったね」



ヴァンの部屋。

ヴァン

「お前は上に乗れ」



孤児1

「はい」



「ふっふっ」

孤児1を背中に載せて、腕立てしている。



孤児2

「いち、に、さん……えっと……」

と途中で迷っている。



レイン

「うわぁストイックだな」

(こいつらマジ、ここでの生活、なんだと思ってんだ?)



エイル

「うん、何か競技目指してるのかな?」



レイン

「いや、違うと思うな」

「次の部屋行こうか」



エイルは頷いた。



その後もいくつか部屋を見て回った。

どの部屋でも、孤児の方が先に合わせていた。

レイン

「ここが最後だ」



孤児だけの部屋。

孤児A

「じゃあ、そろそろ寝よう」



孤児B

「うん、明日も朝早く起きて、植物の水やりと、動物達の餌やりと、掃除しなきゃね」



孤児C

「そうだね、ずっと起きてると、電気代もかかるし、寝よう」



レイン

「ここ、いいんじゃない?」

「……ここしかないけど」



エイル

「ティアって、ああいう感じだけど

 本当は優しいところ、ちゃんとあるんだよ」

エイルは、微笑みながら言った。

「だから――このままでいいよ」

「今日は、ありがとう」



レイン

「そうか」

「……わかった」



視線を少しだけ逸らす。

(……それでいいのか?)

誰もいなくても成立するもの。

最初から反応まで作られているもの。


ただ生きるために繰り返されるもの。

同じ“行動”でも、意味はまるで違う。

レインはまだ答えを持っていません。


けれど、違和感だけは、少しずつ積み上がっていきます。


ここから、そのズレがどう広がっていくのか――

ゆっくり見てもらえたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少しずつ、三カ国の全貌が見え始める。 『笑い』『選別』『価値』が交差する異世界ファンタジー。 (※執筆・画像すべてスマホ1台で制作しています)
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ