第33話「自由参加」
笑いは、そこにあった。
けれど――
その先に進むかどうかは、別の話だ。
「選ぶ」ということは、
思っているよりも、ずっと重い。
リゼルが去ったあとも、誰もすぐには動けなかった。
掲示板の前には、
まだ人が残っている。
けれど、レインたちの周りだけが、妙に静かだった。
風が吹く。 貼り出された紙の端が、かすかに揺れた。
「……行こう」
最初にそう言ったのは、
トーマだった。
軽い声だった。
いつもと同じように。
けれど、その軽さが逆に不自然で、誰もすぐには返事をしなかった。
トーマは森の方を親指で示す。
「あっちだ。話すなら、ここじゃない」
一拍。
「来たい奴だけ来い」
「来なくてもいい」
言い方はいつも通りだった。
けれど、それは“自由”というより、
“選ばせる”声だった。
ミレアが、すぐに頷いた。
「行く」
カイは舌打ちしそうな顔のまま、短く言う。 「……俺も」
サリアは掲示板をもう一度見たあと、小さく息を吐いた。
「私も行くわ」
ジョンだけが、周囲を見回しながら首を傾げていた。
「ナンダ?」
「ミンナ、カオ、クライ」
誰も答えない。
トーマはそれ以上何も言わず、
先に歩き出した。
子供たちの何人かも、不安そうに顔を見合わせながらついてった。
来ない子もいた。
その場から動けず、ただ立ち尽くしていた子もいた。
自由参加。 けれど、それは“どちらもいい”という意味じゃない。
この場から先に進むかどうかを、自分で決めろということだった。
ノヴァリス。 普通は、行けない場所。
でも今は、その先に何があるのかを知りたいと思っている。
そして同時に、ここで生まれたものを、消したくないとも思っていた。
森の空気は冷たい。
小屋の中には、まだ少しだけ熱が残っていた。
それは、焚き火の名残じゃない。
笑いと、声と、時間の残り火だった。
レインは、それを見ていた。
消えかけているのに、確かにそこにあるものを。
「……行くんだな」
後ろから、声。
ここから、少しずつ空気が変わっていきます。
“自由”という言葉は、やさしく聞こえますが、
実際には「自分で決めること」を突きつけてきます。
進むのも、残るのも、どちらも間違いじゃない。
でも――どちらも、何かを選んでいる。
レインたちは、このあと、その意味を知っていきます。
次回も読んで頂けると嬉しいです。




