第27話「バラバラでも、動き出す」
揃っていない。
完成もしていない。
それでも――動き始める瞬間がある。
森の奥、小屋の前。
レインは、膝の上のぬいぐるみを見つめていた。
白いウサギ。
ミレアが大事そうに抱えていたもの。
(……動かせるか?)
そっと手を入れる。
指を曲げる。
ぴくり。
――ぎこちない。
もう一度。
今度は腕を振る。
ぶん。
「……変」
ミレアが吹き出した。
「あはは!なにそれ!」
レインは無言でウサギを見つめる。
(……でも)
(動く)
その時だった。
「この子も出す?」
ミレアが、ポケットから何かを取り出した。
虫のぬいぐるみ。
「いやそれはやめろ」
即答したのはカイだった。
「絶対子供泣くぞ」
「えー、かわいいよ?」
ミレアは虫をぶんぶん振る。
カイ
「どこがだよ」
「振り回してる時点で違うだろ」
それを見て、サリアが笑った。
「……でも、動きは面白いかもね」
レインは、そのやり取りを見ながら呟く。
「……足りないな」
「何が?」
カイが聞き返す。
「登場人物だ」
「勇者も王様もいない」
沈黙。
「……じゃあ作るか?」
カイが言う。
レインは首を振った。
「時間がない」
「今から増やしても、成立するか分からない」
その時だった。
「オレ、ヤル」
声が割り込んだ。
振り向く。
ジョンが立っていた。
「オレ、ユウシャ」
胸を叩く。
どや顔。
「……大丈夫か?」
レインが言う。
ジョンは親指を立てた。
「マカセテ」
一拍。
(……本当に大丈夫か?)
ミレアがぱっと顔を上げる。
「じゃあ王様は?」
「これでいいじゃん!」
ミレアは、作りかけの木彫りのツルリマンに、大きな葉っぱを張り付けた。
「王様っぽくない?」
カイが呆れる。
「雑すぎるだろ」
「いいのいいの!」
「謎めいてて強そうでしょ」
サリアが笑う。
「子供たち、絶対こういうの好きよ、きっと」
ミレアは虫を持ち上げた。
「じゃあ敵はこの子ね!」
「却下だ」
「えー!」
騒がしい。
まとまっていない。
ぐちゃぐちゃだ。
それでも――
レインは、小さく息を吐いた。
(……揃ってなくてもいい)
ウサギを動かす。
ぎこちなく。
でも確かに、動く。
(むしろ)
(足りない方が――)
ミレアが笑う。
ジョンが変なポーズをとる。
カイがため息をつく。
サリアが手を叩く。
(……動く)
レインは顔を上げた。
「……やるぞ」
「人形劇だ」
最後まで読んで頂きありがとうございます。
ぐちゃぐちゃで、まとまっていないはずなのに、
なぜか成立してしまう。
この回は「足りないこと」がそのまま“面白さ”に変わる瞬間を書いています。
レインは気づき始めます。
揃えることより、大事なものがあると。
次回も読んで頂けると嬉しいです。




