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24話「動いた理由」

同じ動き。

同じ笑い。

それでも、どこか“違う”。

レインは、その違和感に手を伸ばした。

最初は、迷路みたいな森だった。

でも今は、誰も迷わない。



子供たちの声が、いつものように響いていた。

ミレアがぬいぐるみを掲げる。

「ズンチャン、こんにちはー!」

手でぬいぐるみを持って、口をぱくぱく動かす。



「こんにちは!今日は何するの?」

「えっとねぇ、ツルリマンごっこ!」



「今度はツルリマンか」

カイが呆れたように言う。



ミレア

「ツルリマンVS綿あめマン」

ぬいぐるみを並べて、話し出した。



ツルリマン

「うわぁ~ベタベタだぁ」

ツルリマン倒れる。



綿あめマン

「甘いぞ!」



カイ

「意味が違うだろ」



声が飛び交う。

笑いが起きる。

――でも。

レインは、その中に入らず、少し離れた位置に立っていた。

(……同じだ)



同じ動き。

同じ声。

同じ笑い。

(……足りない)



そのとき。

「レイン、やらないの?」

ミレアが振り返る。

「……少し、いいか」



レインは、小屋の隅にあった布を手に取った。

それを、テーブルにかける。

即席の“舞台”みたいに。

「え、なにそれ?」 



カイが眉をひそめる。

レインは答えない。

布の向こうに、手を入れる。



そして――

ぬいぐるみを、そっと持ち上げた。

見えているのは、ぬいぐるみだけ。

手は、見えない。

「……ズンチャン?」



ミレアが首をかしげる。

一拍。

ぬいぐるみの頭が、ゆっくりと動いた。

「……え?」

空気が、止まる。



もう一度。

ぬいぐるみが、ゆっくりと振り向く。



まるで――

自分で動いたみたいに。

「今……動いた?」

誰かが、そう言った。



レインの指が、わずかに動く。

ぬいぐるみが、こくりと頷く。

「……っ!」

誰も、声を出さなかった。



――でも。

次の瞬間。

ぬいぐるみの動きが、わずかに遅れる。



腕が、不自然に揺れる。

「……なんか変」

ぽつりと、誰かが言った。

空気が、崩れる。

「さっきの方が……」



言葉は、途中で止まる。

レインの手も、止まっていた。



ミレア

「もっとこのズンちゃん自身が話してるような感じがいいのに」

「これだと両手使うから、1人二役できない」

「紙芝居なら何役でも絵があればできるのに」



サリア

「そうね、絵の後ろで話すからね」



カイ

「つってもどうすりゃいいんだ?」



布の向こうで、指が止まる。

(……違う)

ぬいぐるみを見る。

(……さっきは、動いてた)



一拍。

(……いや)

(……動かしてたのは、俺だ)

ゆっくりと、ぬいぐるみを下ろす。



布を外す。

――ただの、布と綿の塊だった。

(……足りない)



胸の奥に、はっきりとした違和感が残る。

(……見せ方じゃない)

小さく、息を吐く。

(……中身だ)



外では、風が木々を揺らしていた。

小屋の中は、少しだけ静かになっている。



その中で。

レインだけが、次を考えていた。

トーマは、その様子を見ていた。

(……悩んでるな)


ぬいぐるみは、ただの布と綿。

それでも――一瞬だけ、“生きているように見えた”。

でも、それは続かなかった。

何が足りないのか。


どうすれば、“動いている”から“生きている”になるのか。


レインの試行錯誤は、ここから少しだけ変わっていきます。

次は、“中身”の話です。


次回も読んで頂けると嬉しいです。

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少しずつ、三カ国の全貌が見え始める。 『笑い』『選別』『価値』が交差する異世界ファンタジー。 (※執筆・画像すべてスマホ1台で制作しています)
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