23話「笑いは、動きじゃない」
放課後の小屋。
ぬいぐるみで遊ぶ子供たちの中で、レインはある“違和感”に気づく。
動かせばいいわけじゃない。
同じことをしても、同じようには笑わない。
――それが、次の一歩になる。
放課後。
授業が終わると同時に、子供たちは一斉に席を立った。
向かう先は、決まっている。
森の小屋だった。
その日も、子供たちはぬいぐるみを手に遊んでいた。
ミレアがぬいぐるみを持ち上げる。
「こんにちは」
ぬいの頭と体を持って、口をパクパク動かす。
「おおー!」
子供たちの声が上がる。
ミレアは少し得意げに続けた。
「ズンチャンだよ!」
口が動く。
声が出る。
「手も動いたらいいのになぁ」
カイが呆れたように言う。
「お前は子供か?」
サリアはくすっと笑って、子供たちに声をかけた。
「はいはい、みんなも遊ぼう」
小さい子を膝の上に乗せて、サリアもぬいぐるみごっこを始めた。
子供たち
「可愛い!」
「うん!」
「両方ほしい!」
レインが反応する。
「両方?」
女の子
「お口あーんする子!」
「どっちもほしい!」
男の子
「僕も」
ミレアが笑う。
「欲張りさんめ」
ぬいぐるみの口を開けて、子供の頭にぱくっとかぶせる。
「あはははっ!」
小屋の中に笑い声が広がった。
カイがぽつりと呟く。
「なんかさ」
少しだけ視線を逸らす。
「こいつらが楽しそうにしてると、もっと楽しませたくなるんだよな」
「理由はわかんねぇけどさ」
「カイ、昆虫にもその優しさ分けてあげなよ♡」
カイは、露骨に視線を逸らした。
ミレアは笑って言った。
子供
「お兄ちゃん虫苦手なの?」
――次の瞬間。
子供が、トンボをひょいと持ち上げた。
「ほら」
(うっ……子供にまで……)
カイはわずかに固まる。
「お兄ちゃんだって平気だ!」
サリアはぬいぐるみを作りながら、
それを見て笑った。
「ハハハッ」
レインは、その様子を黙って見ていた。
――一拍。
ぬいぐるみを手に取る。
腕を持ち上げて、動かす。
ミレアは楽しそうに遊び出す。
「ズンチャンだよ!」
「あら素敵なお名前ね」
「私はカジキよ」
三体ぬいぐるみを並べて、セリフを付けていた。
口も動かす。
声も乗せる。
――一瞬。
「ははっ!」
笑いが起きた。
――軽い。
カイ (カジキって名前のセンスがいつも変なんだよな)
レインの目がわずかに動く。
(……いける)
もう一度。 少し大きく。
少し速く。
――でも。
「……」
今度は、誰も笑わない。
「なんか変」
誰かがぽつりと言った。
「さっきの方がよかった」
ミレアの手が止まる。
「え? なんで?」
カイ
「さぁな」
レインは、ぬいぐるみを見たまま固まった。
(……違う)
(……さっきは、勝手に笑ってた)
(……動けばいいわけじゃない)
一拍。
(……同じだ)
胸の奥に、あの違和感が残る。
(……足りない)
小さく、息を吐く。
視線が、ノートに向く。
(……どうやって)
ぬいぐるみを見る。
(……何をすれば)
答えは出ない。
ただ一つだけ、はっきりしていた。
(……このままじゃ、だめだ)
トーマはレインを見ていた。
(……始まったな)
外では、風が木々を揺らしていた。
小屋の中には、まだ笑い声が残っている。
その中で。
レインだけが、少し違う場所に立っていた。
今回は「再現できない笑い」の話です。
さっきまで笑っていたのに、同じことをしても笑わない。
これって現実でもめちゃくちゃある現象で、ここが結構大事なポイントになります。
レインはここで初めて、
「笑いは動きそのものじゃない」っていう壁にぶつかりました。
この笑いをどう扱うかで、
娯楽のレベルが一段上がっていきます。
次回も読んで頂けると、嬉しいです。




