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15話「どうなる?紙芝居」

ついに――

あのセレナが、笑いました。

そして物語はここから、少しずつ形を変えていきます。

紙芝居当日が来てしまった。

その時――!!

「オゥ、レイン、ミレア」

「ドウシタ?」



隣国から来た学生、ジョンが立っていた。

ジョンに紙芝居の語り手を相談してみると、

「オレ、ヤルデ。ダイジョブ」



(……本当に大丈夫か?)

一拍。

……たぶん。いや、わからん。

「任せてくれよ」という意味だろう。

二つ返事で引き受けてくれた。



(……本当、いい奴だな)



ミレアはずっと言っていた。

「私できるよ?」

レイン

「とりあえず一度、ジョンに任せてみよう」



そう言って、その場を収めた。

でも――

正直、少し不安だった。

教会の庭に、子供たちのざわめきが広がっていた。



セレナは腕を組み、紙芝居の枠を見ている。

表情は変わらない。



だが――

その視線が、ゆっくりとこちらに向いた。

(……なんであなた達じゃないの?)

何も言っていないのに、

そう言われた気がした。



(……ここで失敗したら終わりだ)

レインは小さく息を吐いた。

ジョンが一歩前に出る。



子供たちの前。

セレナの視線の中。

紙芝居の前に立ち――

一瞬、間があった。



そして。

「エート……」

ジョンは語り出した。



一枚目の紙を見て、にこっと笑った。

「セイギノミカタ……ツルリマン」



少し沈黙。

「ハハッ」

「ユデタマゴ、ジャン」

「タベルノ?」

「イミ……ワカンネー」

子供たちがざわついた。



ジョンは気にせず紙をめくる。

「ワルイコト……ユルサナイゾ」

「ナンカ……シタンカ?コイツラ」



誰も笑わなかった。

 


レインは思った。

(……任せるんじゃなかった) 

じわっと脂汗が滲む。

(終わった)



その時だった。



子供の一人が、そっと手を挙げて言った。

「あの、サリアお姉ちゃんは?」

「サリアお姉ちゃんの方が面白い」

子供たちが小さくざわつく。



(しまった……)

レインは慌ててスケッチブックに大きく書いた。

(ジョン!感想いらない!そのまま読んで!)

必死にそれを掲げる。



ジョンは親指を立てる。

「オゥソーリー、ソーリー!オーケー!」

そしてまた紙を見る。



「エート……オレタチハ、ソルトアンドペッパー?」

首をかしげる。

「チョウミリョウノ、カイジンデスカ?」

「ハハハッ」

手を叩いて笑うジョン。



その瞬間。

セレナの声が低く響いた。

「……ふざけているなら帰りますよ」



空気が凍りつく。

レインの背中に冷たい汗が流れた。

(やばい……これは本当に追い出される……)

すると。



ミレアが勢いよく前に出た。

「もういい!」

「やっぱり私が最初からやればよかったの!」



レインは思わず言い返す。

「お前すぐ虫追いかけるだろ!」



ミレアはむっとする。

「虫じゃない!」

「昆虫だから!」

「バァちゃんとジィちゃんに謝って!」



レイン

「おかしな名前つけやがって」

「バァちゃんってなんだ?」

「今はそこじゃないだろ!」



次の瞬間。

二人は取っ組み合いになった。

子供たちは面白がって歓声を上げる。

レインはミレアの腕を押さえながら顔をしかめた。



「うわっ!」

「臭っ!」



ミレアはてへっと笑う。

「さっきカメムシ触っちゃった」


レインは顔をしかめる。

「なんで今カメムシなんか触ったんだ?」



ミレアはむっとした。

「いいでしょ別に」

「それに、“なんか”って言わないで」

「カメムシにも謝って」



レインは即答した。

「あんな臭い虫は無視だ」

ミレアは腕を組む。

「面白くないもん」



その言葉の瞬間。

セレナが――

「……はっ」



一瞬、言葉を失った。

口元を押さえる。

「……ふ、ふふ……」

こらえきれなかった。



肩が震え始める。

「ハハハハッ!」

「本当に、くだらないわね」

笑いすぎて、セレナの目にはうっすら涙が浮かんでいた。



子供たちは――

ぽかんと、セレナを見ていた。

誰も声を出さない。



セレナが笑っている。

あのセレナが。

しばらくして。

一人の子供が、くすっと笑った。



それにつられるように、

「ぷっ」

「ははっ」



笑いが広がる。

次の瞬間。

子供たちは一斉に笑い出した。

教会の庭に、

この国では久しぶりの大きな笑い声が響いた。



その時。

トーマは森の影から、その様子をずっと見ていた。



子供たちの笑い声が広場に広がっていく。

トーマは口元をゆるめた。



(やりおったな、小僧とお嬢ちゃん)

少し前のことを思い出す。

あの時、自分はただ言っただけだった。



――試してみろ。

それだけで、あの二人はここまでやった。

トーマは小さく笑う。

「……大したもんだ」

そして空を見上げた。



「さて」

「ここからが本番だな」



しばらく笑ったあと、セレナは咳払いをする。

「……こほん」

そして、いつもの厳しい表情に戻った。

「まったく……」

(……何を、笑っているの私は)

(こんなものに)



セレナは子供たちを見渡した。 目を輝かせる顔。 今にも声を上げそうな空気。

その熱を確認してから、静かにう。



「放っておけば、また勝手に集まるのでしょう」 「それでは余計に面倒です」

一瞬、空気が止まる。



「今後は――週に一度だけ」 「聖堂側の監督下で行いなさい」

子供たちがきょとんとする。

セレナは眼鏡を押し上げた。



「場所、時間、参加する子供の把握はこちらでします」

「内容も事前に私が確認します」 「少しでも問題があれば、即座に中止です」



静まり返る、 だが次の瞬間――

「やったー!」

子供たちが一斉に歓声を上げた。

レインは胸をなで下ろす。 (……助かった)



そして一歩下がった。

ミレアの手に触れないように。

カメムシの臭いが、まだ残っているからだ。



ミレアは満面の笑みで拳を上げていた。

その日の帰り道。

レインとミレアが森の小屋へ向かっていると、見慣れない二人の姿があった。



サリアとカイだ。

サリアはにこにこしながら手を振る。



「面白いことやってるって聞いたんだけど?」

カイは腕を組み、冷めた顔で言った。

「……くだらなかったら帰る」



レインは少しだけ目を逸らした。

「……悪かったな」

「お前ら、巻き込んだ」



サリア

「え?なにそれ」

「別にいいよ〜、面白そうだし!」

カイ

「……結果出してるなら文句はない」

(少しだけ目を細める)



ミレアは嬉しそうに近づく。

「カイ!虫見せてあげよっか!」

「私のペットのプップちゃん」

ミレアは、てんとう虫を指に乗せて見せた。



カイの顔色が一瞬で変わった。

「やめろ!!」

そして顔をしかめる。

「……それ、なんか臭うんだが」



ミレアは首をかしげる。

「ちょっと観察したら逃がすよ」 

カイ

「逃がすなら最初から捕まえるな!」



ミレアは平然と言う。

「だって死んだら絶滅しちゃうでしょ」



カイ

「一匹で絶滅するか!!」

サリアは吹き出した。

「ちょっとカイ、顔すごいことになってるよ?」



カイ

「誰のせいだと思ってる!!」



サリアはくすくす笑いながらミレアを見る。

「プップちゃんだっけ?」

「名前は可愛いのにね〜」



ミレアは誇らしげに胸を張る。

「でしょ!」

カイ

「そこじゃない!!」



レインはひとまずほっとした。

(……なんとかなったか)



その隣で、ミレアが言う。

「ねえレイン、プップちゃん触る?」



レインは即答した。

「断る」



森の小屋に、また笑い声が広がる。

隣国から来た学生――ジョン。

日焼けとは違う、深い褐色の肌をした青年だった。



ジョンは、にこっと笑った。

「ミンナ、イイカオシテタネ」

レインは少し驚く。



「……さっきあんなに滑ってたのに、よく言えるな」

ジョンは肩をすくめた。



「ダイジョブ、ダイジョブ」

「ワラワレタラ、カチダヨ」

レインは思った。



(……こいつ、ポジティブすぎるだろ)

ジョンは紙芝居の束を軽く持ち上げる。

「コレ、オモシロイネ」

「デモ、チョットムズカシイ」



「難しい?」

「ウン」

「コトバ、ツヨイ」



レインは眉をひそめた。

「強い?」

ジョンは頷く。

「ナガイ」

「ミナイヒト、ワカラナイ」



レインは黙る。

ミレアが横から口を出す。

「さっきみたいにやればいいじゃん」

「さっきみたいに?」



ミレアは腕をぶんぶん振る。

「こうやって!ドーン!って!」

カイが呆れた顔で言う。

「それで全部通るわけないだろ」



ジョンは笑った。

「デモ、イイネ」

「カンジ、ツタワル」



レインは紙芝居を見る。

(……見せる、か)

(言葉じゃなくて)

(動きで)

(……その方が、伝わる)



サリアが一歩前に出る。

「じゃあさ、今度は私もやってみていい?」

にこっと笑う。

「もっと面白くできる気がする」



カイはため息をつく。

「……またくだらないことに付き合わされるのか」

だが、その口元は少しだけ緩んでいた。



レインは小さく笑った。

(……仲間、増えたな)

(しかも、悪くない)

ここまで読んでくれてありがとう。

新キャラ、ジョンが登場しました。

ジョン(17)


「笑われたら勝ち」と考える留学生。

言葉は不慣れだが、そのズレが――笑いになる。

そして今回、

セレナを笑わせることに成功し、

紙芝居は正式に認められました。

サリア、カイも再び加わり、


“遊び”は少しずつ“形”になっていきます。

さらにジョンの一言で、レインは気づきます。

「見せる」ことの大切さに。


言葉だけじゃなく、動きで伝える。

ここから、娯楽はもう一段進みます。

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少しずつ、三カ国の全貌が見え始める。 『笑い』『選別』『価値』が交差する異世界ファンタジー。 (※執筆・画像すべてスマホ1台で制作しています)
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