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14話「どう笑わせる?」

真面目な紙芝居。

――そして、盛大な転倒。

「つまらない」と「爆笑」は、紙一重でした。

レインは、その“違い”に気づき始めます。

(これでダメなら、もう諦めるしかないか)



子供たちが来る前に、レインとミレアは教会に行き、セレナに頼み込んだ。




「1度だけでいいので、紙芝居をみて下さい」

「お願いします」

レインとミレアは頭を下げた。



セレナは淡々と言った。

「ダメです」

「子供たちに必要なのは、娯楽ではなく勉学です」



「大人になればいくらでも娯楽は楽しめるでしょう」  

ミレアは言った。

「でも、全然楽しそうじゃないよ」



「黙りなさい、あなた達もこんな所にいないで、勉強なさい」

セレナは強めに言って、そのままドアを閉めた。



レインは言った。

「流石だな、規律神官、手強いな」



ミレアが落ち込みながら言った。

「それ聞こえたら怒られるよ?」



レインは真面目に言った。

「いや、見たまま言っただけだ」

「だが、俺は諦めない」

「このまま終わって、たまるか」



教会の庭には、いつものように子供たちが集まっていた。

「――あのバカバカしい紙芝居のせいだわ。

子供たちは『紙芝居をやってほしい』とせがんだ。

……仕方なく、セレナは用意した。」

そして、紙芝居の枠を立てる。



「では始めます」

「楽しい日常」

ぱたん、と一枚目をめくる。

そこには、手を洗う子供の絵が描かれていた。

子供たちは嬉しそうに言った。

「どんな楽しいことが起きるのかな?」



「悪者がドバァーってきて、バゴーンって倒すんだよ!」

期待に胸を躍らせる子供たち。



「子供は家に帰ったら、まず――

うがいと手洗いをしましょう」

次の紙をめくる。

机に向かう子供。

「そして予習、復習、宿題」



次。

家の手伝いをする子供。

「お手伝いも大事です」

次の絵。



風呂に入り、歯を磨く子供。

「お風呂と歯磨きを済ませて」



最後の紙。

ベッドで眠る子供。

「早く就寝しましょう」

絵の中の子供は、すやすやと眠っていた。

紙芝居は終わる。

しばらく沈黙が流れた。

そして。

子供がぽつりと言う。

「……つまんない」



別の子供も続いた。

「またそれ?」

「いつも同じ」



セレナは腕を組む。

「当たり前です」

「大切なことですから」

子供たちはぶーぶー文句を言い始める。



「もっと面白いのがいい!」

「レインのやつみたいな!」

「虫の話とか!」



セレナの眉がぴくりと動く。

「娯楽は人を堕落させます」

「変わり映えのしない日常こそが幸せなのよ」



その時だった。

石につまずく。

「あっ」

次の瞬間。



セレナは盛大に転んだ。

「イデッ」



――静止。

紙芝居の紙が空に舞う。

レイン

(……イデッ?)

一瞬の沈黙。



そして。

「ぷっ」

「アハハハ!」

子供たちが爆笑した。



セレナはすぐに立ち上がる。

顔が少し赤い。

「……笑うところではありません」

「あのおかしな紙芝居のせいで、大切な子供たちに悪影響が出てしまったわ」



子供はまだ笑っている。

「でも面白かった!」

「すごい転び方だった!」

セレナは紙を拾いながら言う。



「今のは事故です」

「面白くありません」

それでも子供たちは笑っていた。



その様子を、少し離れた場所から見ている影があった。

レインだった。

隣でミレアがくすくす笑う。

「今の、めっちゃ面白かった」



レインは真剣な顔でセレナを見ていた。

そして小さく呟く。

「……なるほど」

ミレアが首をかしげる。

「なにが?」 



レインは言う。

「笑いって」

「こういう所から生まれるのか」



さっきの出来事を思い出して、ミレアがまた笑い出す。

「ぷっ……あはは!」



「セレナ先生の転び方すごかった!」

レインは腕を組んだまま、教会の方を見ている。

「……そういうことか」

ミレアが首を傾げる。 



「なにが?」

レインはゆっくり言った。

「笑いは」

「必ずしも“作る”ものじゃない」

「さっきみたいに――」

「偶然でも生まれる」



ミレアは考えてから言う。

「でもさ」

「トーマのおじさんは“セレナを笑わせろ”って言ってたよ?」



レインは少し眉をひそめる。

「あの人は笑ってない」

「子供は笑ったけど」

ミレアは頷く。



「確かに」

「セレナ先生、転んだあとめっちゃ真面目な顔してた」

レインはため息をつく。

「難しい相手だな」



ミレアは急に元気な声を出す。

「じゃあ!」

「変顔!」

レインは即答する。

「却下」

ミレアが抗議する。

「えー!」



「変顔って面白いよ!」

レインは冷静に言う。

「セレナは真面目だ」

「変顔は“怒る”」



ミレアは少し考える。

「じゃあ……」

ポケットを探る。

そして取り出す。

小さな虫。

「これ!」



レインは真顔で言う。

「それはもっと怒る」

ミレアがむっとする。

「虫は可愛いよ!」



レインは首を振る。

「セレナは虫嫌いだ」

「ポケットに入れておくものじゃないしな」 



ミレアは腕を組む。

「うーん……」「虫が苦しそう」

少し沈黙が流れる。



レインは地面に枝で何かを書いている。

ミレアが覗き込む。

「なにそれ?」



地面には人の絵が描かれていた。

丸い頭。

マント。

変な顔。

ミレアが言う。

「ヒーロー?」



レインは少し考えながら言う。

「いや」

「まだわからない」

ミレアが聞く。

「でもさ」

「どうやったら笑うんだろ」 



レインは教会の方を見る。

さっきの紙芝居。

真面目な話。

規律。

そして――転倒。

レインは小さく呟く。

「……ズレ」



ミレア

「?」

レイン

「真面目なものが」

「ちょっとズレると」

「人は笑う」



ミレアはぽかんとしている。

レインは立ち上がる。

「試してみる」

「なにを?」

「セレナを笑わせる」



ミレアはにやっと笑った。

「面白くなってきた!」

――そして次の日。



レインとミレアはまた教会に来ていた。

「一度だけでいいです!」

「お願い先生!」



セレナはため息をついて言った。

「最近、子供たちが紙芝居の話ばかりしています」

「放置する方が問題です」

「ならば一度、私の管理の下で見届けます」

一拍。

「――許可したわけではありません」

「三日後、森の広場で行いなさい」

「……その上で」

「不適切だと判断した場合、即刻禁止します」



セレナは心の中で思う。

この国では娯楽は禁止されている。

それでも大人たちは、こっそり楽しんでいることがある。



それを見て、羨ましいと思ったことが――

正直、何度もあった。

だからこそ。



セレナは、笑わない。

一拍。

(間違っているはずがない)

(だって、あれが“正しい”って教えられてきた)

一瞬だけ、視線が揺れる。



だが――

(……正しくないものは、排除される)

――そう教えられてきた。

……“考えないようにしていること”もある。



レインとミレアは顔を見合わせる。

「やったぁ!」

「頑張ろうね、レイン!」



レインは少し照れながらうなずいた。

「あぁ、そうだな」



練習を開始した。

一日目。

レインはセリフを忘れた。

ミレアは虫を観察していた。



二日目。

レインはめくるタイミングをミスる。

ミレアは虫を捕まえていた。

「バァちゃん、仲間増えたね」

虫に話しかけている。



三日目。

レインは観客の反応を気にして止まる。

ミレアの虫は、さらに増えていた。

(なんであいつだけ順調なんだよ)



そして――今日が本番だ。

(……どうする、全然上手くいかない)

ここまで読んでくれてありがとう。

今回、レインは「笑いはズレから生まれる」と気づきました。


紙芝居の練習は、全然上手くいかない。

果たして、うまくいくのか。

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少しずつ、三カ国の全貌が見え始める。 『笑い』『選別』『価値』が交差する異世界ファンタジー。 (※執筆・画像すべてスマホ1台で制作しています)
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