6 気持ち悪くないですか? ~レディの決意はかたいのよ~
最初にお友達になるのはネズミさん達です。
さてさて、どうやって仲良くお話しができるようになるのでしょうか。
今回のお話を読めば、聞き耳カチューシャの秘密が解っちゃいます。
むかし、むかし、あるところに、赤いずきんを被ったシャルマントと言う女の子がパン屋の主人に抱き着かれ藻掻いていました。
ピコッ!
(え? なに?)
頭の中で声ではない何かの音が聞こえると、その音が何だったのかを考えて藻掻くのを止め、じっと抱き着かれています。
しばらくして、パン屋の主人はシャルマントを放すと、秤が本当に狂っているのかを確かめようと自分の店へと足早に入って行きました。
それからすぐでした。パン屋の主人が店から出てくると、その手には幾つものパンを持っているではありませんか。
「ありがとう、お嬢ちゃん。これ、お礼に持って行ってくれ。」
そう言ってシャルマントに渡しました。
「はぁ、あ ありがとう。」
そう答えながらもシャルマントは思います。
(コレって、バターが足りないパンでしょ。どうせなら、直した秤で作った香ばしいパンをくれないのかしら。)
(まあいいか、少しだけ味見したら屋根裏のネズミさん達にあげようっと。)
(それより、あの音は何だったのかしら。)
シャルマントは家に帰って来てもなお、例の音の事を考えていました。
その夜。
いつも聞いていたネズミ達の通り道にパンの入ったカゴを置き、天井を見上げ彼等の会話を聞きます。
「キイテ キイテ チューチュー。」
「キク キク チューチュー。」
「キイタラ ワクワク。」
「キイタラ ワクワク?」
「おいおい、お前もパン食べたか?」
「おー、食べた食べた。」
「あんな所にパンが有るなんてラッキーだね。」
「そうそう、遠くまで探しに行かなくて良かったからな。」
「あの味はやっぱりアインズ・パン屋のだろ。香ばしさが足りなかったからな。」
「そうそう、残念だけどさ、まぁ俺たちゃ喰えれば良いからさ。」
「そうだね、腹いっぱい喰えたから良いよね。」
「そうそう。」
「あんな所に置き忘れてくれた人間に感謝だな。」
そんな会話を楽し気に聞いていたシャルマントは布団にもぐり小声でしゃべりました。
「いえいえ、ネズミさん達へのお礼ですから。」
その時です。ネズミ達が慌てたように駆け出しました。
「おいっ! 今、何かの声が聞こえたぞ。」
「おー! 何処からか聞こえた。」
「どこだ、どこだ!」
「捕まるんじゃないか?」
「逃げろ! 逃げろ!」
天井はネズミ達の走り回る足音があちらこちらでしています。
「どこから聞こえた?」
「分からない、分からないよ。」
「いいから、ここから逃げろ!」
すぐでした。
シャルマントの見つめる天井からは、ネズミ達の気配が一切消えてしまったのです。
それからいく晩続いたのでしょうか、シャルマントが天井を見つめてもそこにネズミ達はやって来ませんでした。
さらにいく晩がたったのか、その夜もネズミ達の居なくなった天井をシャルマントは寂しそうに見つめています。
その時でした。
「キイテ キイテ チューチュー。」
「キク キク チューチュー。」
「キイタラ ワクワク。」
「キイタラ ワクワク?」
「お前、無事だったか?」
「ああ、誰も捕まっていないみたいだ。」
その会話を聞いたシャルマントはとても嬉しくなりました。
しばらくネズミ達の話しを聞いていたシャルマントは、思い切って話し掛けます。
「ネズミさん・・」
すると、あの時と同じ様に天井裏を走り回るネズミ達の足音が響き渡りました。
「大変だ、大変だ、まだ何かがいるぞ。」
「捕まったら食べられちゃうぞ。」
「逃げろ! 逃げろ!」
あっという間でした。天井裏からはネズミ達の足音が消え、以前よりも静かな夜になってしまいました。
それから数日、シャルマントは毎晩静かになった天井を見つめています。
(ネズミさん達、帰って来てくれるかなー。どうやってお話しをしたらいいんだろう。)
そんな事を考えながらじっと天井を見つめているのでした。
そんな夜をいく晩か過ごしていると、再び天井裏から小さな声が聞こえてきました。
シャルマントはネズミさん達の礼儀に従って話し出します。
「キイテ キイテ チューチュー。」
するとどうでしょう、今度はネズミ達は驚いた様子も無く、話し始めました。
「おい、どこからか話し声が聞こえるぞ。」
「お前じゃないのか?」
「いや、俺じゃない。」
「どこからだ?」
シャルマントは再び話し掛けます。
「キイテ キイテ チューチュー。」
すると、ネズミから返事が有りました。
「キク キク チューチュー。」
シャルマントは嬉しくなって話しを続けます。
「キイタラ ワクワク。」
返事が返ってきます。
「キイタラ ワクワク?」
「私、シャルマントって言います。」
「・・・・」
「今、ネズミさん達の下にいます。」
「・・・・」
シャルマントの言葉にネズミ達からの返事は有りません。
しばらくして天井に有る木の節がコトコトッっと動き始めると、キュッキュッっと小さな音をだして回り始めました。そして木の節がポコッと持ち上がると、そこにできた穴から二匹のネズミが顔を出したのです。
シャルマントは話し掛けます。
「こんばんは、私、シャルマントって言います。」
「驚いたなー、人間が俺達と話しが出来るなんて。」
「ゴメンね、驚かせちゃって。」
「この前の声もお前か?」
「そう、ネズミさん達とお話しがしたくって声を掛けたの。」
「どうして俺らと話しができるんだ?」
「う~~ん、私にもよく分からないけど、きっとこのカチューシャのせいね。」
そう言って、シャルマントはネズミ達に取れなくなったカチューシャを見せました。すると、
「なんだ、俺達と同じ耳が付いてるじゃねえか。」
「本当だ、良い耳付いてんじゃねえか。」
と、ネズミ達は穴から顔を除き出して見ています。気が付くと、天井のあちらこちらの木の節の穴から多くのネズミ達が顔を出していました。
「ネズミさん、この前はアインズ・パン屋の話をありがとう。お店の人に秤が壊れているからって教えて上げたらすごく喜んでいたよ。」
「そうか、あそこにパンを置いたのお前だったのか。」
「うん、そう。お礼にね。」
「ありがとうな。美味しかったぜ。」
「どういたしまして、パン屋さんから頂いたものだから、ネズミさん達に上げたかったの。喜んでくれたのなら良かったわ。」
「また頼むよ。楽してゴハンが食えるなら嬉しいからな。」
「ふふふふ、分かったわ。」
そんな話しをしばらくして、
「私、眠くなっちゃったから、今夜はこれでね。」
「おお、じゃあな。おやすみ。」
「おやすみなさい、ネズミさん達。」
と話を終えると、ぽっかり開いていた木の節々はキュッキュッっと小さな音を立てて、元どおりに節がはまり、いつもの天井へと戻っていました。
(あ~~~楽しかった。明日の夜もネズミさん達とお話しができるといいな~。)
そんな事を考えながら、シャルマントは再び眠りに着きました。
シャルマントは真夜中に行うネズミ達との会話が楽しみでなりません。
今夜も早々に布団へと潜りこんで、夜中に目覚めるのを楽しみに待ちます。シャルマントはそこでふと思いました。
(あれっ? 夜中はネズミさん達とお話ししているけど、他の生き物の声はまったく聞こえないわよね。)
(どうしてかしら?)
(あれっ? これがオリビア様が言っていた集中って事なのかしら。)
(だとしたら・・・・)
シャルマントは色々と思いを巡らせます。
(ネズミさん達とお話しする時は、必ずあいさつの言葉から始まるから・・)
(その言葉が呪文のようになって、ネズミさん達の声に集中できるのかしら。)
(だとしたら・・・・)
そんな事をあれやこれやと考えていましたが、その途中で眠ってしまいました。
そしてその日は夜中に起きる事も無く、深い眠りの中、森で会った魔女オリビアとの事がよみがえって来たのです。
~~夢の中~~
「ねえ、オリビア様、このカチューシャってもう取れないの?」
シャルマントは涙ぐみながら聞いています。
「う~~ん、確か・・・そうじゃ、取れるぞ。」
「え? 本当? 本当なの?」
「うむ、わしの記憶だと、そのカチューシャで聞いた生き物の会話で、何か良い事をすれば “良い事したねポイント” が貯まって、それが栄養分となりカチューシャの耳が伸びるのじゃ。そう、どんどんポイントを貯めてどんどん耳を伸ばし、長くなって重くなったらぽろっと耳が落ちる。そうするとカチューシャも頭から取れる。」
「うぇっ、耳が落ちるのですか?」
「そうじゃ、ぽろっとな。」
「気持ち悪くないですか? 落ちた耳って。」
「スッキリするじゃろ。大きな耳が落ちるのじゃから。頭も軽くなるぞ。」
「いやいや、耳ですよ。それも大きな耳ですよ。傍に誰かいたら絶叫モノですよ。」
「それもカチューシャのイタズラなのじゃよ。」
「うぇっ。魔女のイタズラって・・。 ところで、耳はどの位大きくなったら落ちるのですか?」
「そうじゃな、これくらい・・」
そう言ってオリビアはシャルマントの頭の上の所に手をかざして見せた。
シャルマントはその手を見上げて言います。
「大体、ウサギさん位の長さですか・・・」
「ああ、そうじゃな。うさ耳くらいじゃ。」
「さっきの“良い事したねポイント”ってどの位貯めればいいのですか?」
「分らん! わしはそれを着けたことが無いからな。」
「え~~~、ひどくないですか~~、知らないなんて。」
「何言っとる。それはわしが着けたのじゃないじゃろ。」
「そうですけど~、同じ魔女として無責任すぎませんか~。」
「だから、アイツは悪い魔女だって言ったじゃろ。わしゃ違う。」
「ひどい、ひどい。魔女ってひどい。」
「そんな事言われても、知らないものは知らん。取れる方法を教えただけでもいいじゃろ。」
「・・・・」
朝になり、シャルマントは夢で見た事を寝ぼけた頭の中で思い返していました。
(ほんっとに魔女って・・・)
(ポイントで耳が伸びるって・・・)
(そう言えば、この前のパン屋さんの時・・・・・・、何処からか“ピコッ!”って聞こえたのよね。)
(あれが “良い事したねポイント” って事?)
そんな事を考えながらカチューシャの耳に手をあてて思います。
(な~んだ、全然大きくなってないじゃない。一体うさ耳になるまでどの位ポイント貯めなきゃいけないのよ。)
そんな事を考えていると、何だかシャルマントはむしゃくしゃしてきました。
(ほんとアイツには腹が立つわ。)
シャルマントは拳を握りしめ、目の前に浮かんだ悪い魔女の姿に向かってその拳を何回も突きだしました。そして、心に強い決意を持ちます。
(必ずポイント貯めて、うさ耳にしたらあのにっくき『グロルのむらさき魔女』、『ヒェルン・マーダリー』に見せ付けて、その場で、ぶっ飛ばしてやるんだから!)
(そうよシャルマント。負けてなんて居られない、泣いてなんて居られないわ。)
(必ずぶっ飛ばす。そうよ、これが私の生きる道なんだ。)
主人公とお友達になる小動物って、童話ではたいていネズミさん達ですよね。
楽しい会話と、登場のしかたが重要です。・・・うん
それと、童話のお話では、夢の中に重要なことが進んでいくのですよね。
私は起きるとほとんど夢の話は忘れちゃうんですけれど・・・残念。




