7 今はネズミの耳? ~レディの悩みは誰に相談すればいいの?~
むかし、むかし、あるところに、赤いずきんを被ったシャルマントと言う女の子がシャドーボクサーの様に鋭いパンチを何回も何回も繰り出していました。
シャルマントはその動きを止め、ブツブツと独り言を言います。
「あー、でも、“良い事したねポイント”を早く貯めなきゃ。」
「このカチューシャで生き物の声を聞かないといけないのよね。」
「う~~ん、ネズミさん達の声は聞けるようになったけど、他の動物さん達の声はどうやったら聞けるのかしら。」
「ネズミさん達のようにそれぞれのあいさつ言葉があるのかな~。」
「少し怖いけれど、他の動物の声を聞きに行ってみようかしら。」
そう思ったシャルマントは、昼を少し過ぎてから家を出て、動物の声を聞くために歩き出しました。
いつでも聞けるように、そして多くの声が聞こえないようにとカチューシャの耳はリボンではなく、赤いずきんの上から手でしっかりと押さえ付けています。
しばらく歩くと、木の枝にハトがとまっていました。
シャルマントはじっと見つめて、集中力を高めます。そして、心の中で、
(ハト、ハト、ハト、ハト、ハト、ハト、ハト、ハト、・・・・・・・)
と何度も念じ、この時とばかりに押さえていた手を離し、
「ハトッ!」
と叫びました。
その瞬間、
「いや~~~~!、きゃぁぁぁ~~~~!」
突然シャルマントは大声を上げ、慌てて離した手でカチューシャの耳を元のようにしっかり塞いでうずくまります。そうです、シャルマントの頭の中に多くの生き物の声が響き渡って来たのです。
「むり、むり、むり、むり、やっぱりむり~~~!」
シャルマントは少し涙ぐんでしまいました。それでも、
(こんな事じゃダメ。絶対にアイツ(悪い魔女)をぶっ飛ばすんだから!)
そう心の中で強く叫んで立ち上がりました。
ふと木の上を見上げると、幹の後ろ側から小さなリスがちょこちょこっと可愛い動きで現れました。シャルマントはそのリスに向かって念じます。
(リス、リス、リス、リス、リス、リス、・・・・・・・)
そして、赤いずきんの上からカチューシャの耳を押さえていた手をそっと開きました。
瞬間、
「いや~~~~!、きゃぁぁぁ~~~~!」
またです。シャルマントは大声を上げ、慌てて離した手を戻し、カチューシャの耳をしっかり塞いでうずくまってしまいました。
「むり、むり、むり、むり、やっぱりむり~~~!」
また少し涙ぐんでしまいましたが、シャルマントは強い視線を遠くに向け、唇をギュッと噛み締めて堪えています。
そんな事を数回繰り返し、しょぼくれたシャルマントは家へと戻って行きました。
夜になり、シャルマントは天井に向かって話し掛けます。
「キイテ キイテ チューチュー。」
返事はすぐでした。
「キク キク チューチュー。」
すると、天井板の木の節がポッコリと開いて、2匹のネズミが顔を出しました。
シャルマントはネズミのあいさつを続けます。
「キイタラ ワクワク。」
ネズミ達からも返事があります。
「キイタラ ワクワク?」
そこで、シャルマントは昼の事を話し始めました。
しばらく話しをしていましたが、シャルマントはネズミ達ともっと近くでお話しがしたくなり、
「ねえネズミさん、私のそばまで来て?」
するとネズミ達はお互いの顔を見合わせて言いました。
「捕まえない?」
「捕まえないよ。それに、ネズミさん達の方が素早くて逃げちゃうでしょ。」
「何か食べ物あるか?」
「そうね・・・、あっ、おやつのクッキーが残ってるわ。」
「おお、それくれよ。」
「いいわよ。」
シャルマントがベッドから立ち上がり、カゴからクッキーを取り出して振り返ると、もう既に床には2匹のネズミがちょこんと座っているではありませんか。天井を見上げると開いていた木の節も元通りに閉じられていました。
「早~~い!」
シャルマントは驚いて呟いてしまいます。
「へへへ、どうだ! 凄いだろう~。」
一匹のネズミがその尖った鼻を天井に向けて偉そうに言います。
「どこから出てきたの?」
不思議に思ったシャルマントが聞きました。
「それは秘密さ。俺達皆の通り道だからね。」
シャルマントはベッドに腰かけ、床に居るネズミ達にクッキーを渡して話し始めました。
「ねえ、ネズミさん、ネズミさんは他の動物さん達とお話しができるの?」
「ああ、出来るぞ。」
「ほんと? じゃあ、いっぱい、いろいろな動物さん達の声が聞こえるの?」
「まあな。」
「それで頭とか痛くならないの?」
「うん、ならない。雑音程度だからな。お前もいろんなヤツの声が聞こえるのか?」
「うん。でもね、すっごく大きな声で頭が痛くなっちゃうの。」
「そんな人間見た事ねえな。」
「これなんだけど。」
そう言ってシャルマントはネズミ達に例のカチューシャを見せました。
「本当だ、耳が付いてるぞ。 おお~~! 近くで見ると俺達と同じ耳だ。」
「ほんとだ、同じだ。可愛いじゃねえか。」
ネズミ達は元々丸かった目を更に大きな丸目にして見ています。そして、
「なあ、触らせてくれよ。」
と頼まれたので、シャルマントはネズミ達をベッドに上げ、横になって触らせました。
「ほんと、俺と同じ耳だ。」
「この耳で聞いているのか?」
ネズミ達は耳を触りながら話します。
「うん、これを付けられてからいっぱい聞こえる様になっちゃたの。」
シャルマントも頭から離れないカチューシャを触りながら答えました。
「いいじゃねえか、色んなヤツの声が聞けて、俺達とも話しが出来て。」
「そうだよな。俺達だって人間と話しができるなんて思わなかったもんな。」
「そうそう、いっつも隠れて逃げて、見つからないようにってひっそりと暮らしてたのに、お前と話せて楽になったぜ。」
ネズミ達は楽しそうに話しています。そんなネズミ達にシャルマントは聞きました。
「ねえ、ネズミさん。どうやったら、わ~~~~って来る声を止めて、聞きたい声だけに出来るのかな~。」
ネズミ達はお互いを見合わせて小さく首を傾げました。
そして、
「う~~ん、分かんねぇ。」
「そうだな、分かんねぇな。俺達、困ってないからな。」
そう、あっさりと答えました。
「そんな~~~。」
シャルマントはしょぼくれて言います。
「ねえ、何とかならないの?」
「そんな事言われてもな~。」
しばらく、沈黙の静な時間が流れます。そしてシャルマントは聞きました。
「ねえ、ネズミさん。ネズミさん達の最初にする挨拶っていつもやってるの?」
ネズミ達は揃って答えました。
「ああ、そうさ。あいさつだからな。他のヤツじゃなくって、目の前にいるヤツに向かって言うんだ。礼儀だろ。礼儀は大切だろ。」
シャルマントはぼーっと壁を見つめて呟きました。
「そうか~、礼儀か~。」
その後は、色々な話しをしてそれぞれの眠りにつきました。
朝です。
シャルマントの部屋にも朝日が差し込んできました。
シャルマントはベッドから飛び起き着替えを始めます。昨夜のネズミ達との話で何かを掴めた感じがして、身体がうずうずして、朝に、朝日が差し込むのが我慢できずにずっとベッドの中でモジモジしていたのでした。
着替えを終えるとすぐにブツブツと呟き始めます。
そう、カチューシャも多くの生き物たちの目覚めで、それに付いている耳から声が襲って来ないようにと、しっかりとリボンで結んでありました。
シャルマントは目を閉じ、心の中で呟きます。
(そうね、やっぱりあいさつは必要なのよね。)
(ネズミさん達も礼儀だって言っていたし・・。)
(私なりのあいさつを考えればいいのよね。)
(・・・・・・。)
そしてシャルマントはネズミ達のあいさつを呟きます。
「キイテ キイテ チューチュー。 キク キク チューチュー。
キイタラ ワクワク。 キイタラ ワクワク?」
(コレをどう変えようかしら・・・。)
シャルマントは何度も何度も言葉を変えて呟き続けています。
遠くからお母さんの声が聞こえました。
「シャルマントーー、朝ご飯よーーーー。」
そうなんです、童話では色々なことを子供たちに教えているのですよね。
今回は、「あいさつ」は大切ですよってね。
会った最初は、「おはよう」「こんにちは」・・・などなど




