表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/11

8 キケキケピコピコ? ~レディの呪文は可愛くなくっちゃ~

 むかし、むかし、あるところに、シャルマントとおんな寝起ねおきのベッドでブツブツとなにかをつぶやいていました。


 そうです、シャルマントはカチューシャにいているみみからはいってくるおおくのこえなかからきたい相手あいてだけのこえにできるよう、気持きもちを集中しゅうちゅうさせる方法ほうほうかんがえていたのです。

 その方法ほうほうは、毎晩まいばんはなししているネズミたちとのはじめにおこなうあいさつのよう言葉ことばいとかんがえていました。


 そのから、何日なんにち何日なんにちもり出掛でかけてはおもいついた呪文じゅもんとなえてカチューシャのみみたててみたのですが、そのたび何度なんど何度なんどあふかえってくるおおくのこえなみだかべてしまいます。しかし、シャルマントはあきらめません。そんな時は、

(『グロルのむらさき魔女まじょ』、『ヒェルン・マーダリー』。おまえ絶対ぜったいにぶっばす。)

つよこころねんじるのでした。


 今夜こんや天井裏てんじょううらのネズミたち相談そうだんして、呪文じゅもんかんがえます。


 もういくばんになるのでしょうか、ネズミたちとはすっかりお友達ともだちになり、シャルマントがこえけるといつのにかそばにまでやってるようになっていました。

 そのなか一匹いっぴきいました。

「そうえばさ、ビエネッタばあさんがつえくしたんだってよ。」

「ああ、そうそう。おれいたぜ。」

 シャルマントがきます。

「ビエネッタおばあちゃん? あのおおイチョウのちかくにんでいる?」

 ネズミたちこたえます。

「そう、そのビエネッタばあさん。」

おれってるぜ。そのつえ。」

「なになに? たのか? いたのか?」

たんだ。ちょうどパンのキキにいに途中とちゅうでさ、ビエネッタばあさんがベンチでちゃっていてさ。」

「いつ?」

昨日きのうひる。」

「ああ、昨日きのう陽射ひざししがあたたかくて気持きもかったもんな。おれもお出掛でかけしてたぜ。」

「それでさ、つえたおれて地面じめんちてたところにハリネズミのモックがやってたんだ。」

「ハリネズミのモック? アイツはよるしか出歩であるかないんじゃないか?」

「そうそう、だからねむたそうで、ひかりまぶしかったみたいでさ、をつぶってあるいてたんだ。アイツさ、もそもそってあるくだろ。だから足音あしおともしないし、っかってもおとないからさ、そのへんあるいていてもだれ気付きづかないんだ。」

「ふんふん、それでそれで。」

「そのモックがさ、つえよこあるいてたときにさ、からだはりつえかっちゃって、それでもアイツ気付きづかずにもそもそあるいてやぶなかっちゃったんだ。」

「じゃあ、なにか? つえはそのやぶなかるってことか?」

「だろうな、やぶはいればモックのはりかっていたつえはずれるだろうからな。」

 そこでシャルマントがいます。

「じゃあぐにさがしておばあちゃんかえしてあげないと、きっと、すごくこまってるだろうから。」



 あさになり、シャルマントははや々とがると朝食ちょうしょくべずにいえします。

 もちろんあかいずきんはしっかりとかぶっていました。


 ネズミたちっていたベンチにき、そのうしろにひろがるやぶけてはいってきました。


 そしてそれはすぐにつかり、シャルマントはつえたか々とげ、さけびます。


「あった~~~!」


 それからすぐに、シャルマントはおおイチョウのちかくにるビエネッタおばあさんのいえへとかいました。くしたつえをおばあさんにわたすと、何処どこからともなくれいおとこえてきます。


ピコッ!


 ビエネッタばあさんからの感謝かんしゃ言葉ことばきながら、シャルマントはあかいずきんにんでカチューシャにいているちいさなみみをスリスリとさわりながらおもいます。

かった~。おばあさんもよろこんでくれるし、わたしにもピコッってなったし。)

(ミミ、すこおおきくなったのかな~? よくかんないわ。)

(そうだ、これからもネズミさんたちからいろいて、むらみんなたすければいいんだ。)

(そうすれば、ピコピコってこえて、このみみがズンズンびて、れるときるんだから。)

(あー、はやくウサギさんくらいみみにならないかしら。)


 そんなことおもっていたかえみち、シャルマントはなんとなくたのしいリズムでつぶやいていました。


「ピコピコ ズンズン ピョンピョン のびろ。

   ピコピコ ズンズン ピョンピョン のびろ。

     ピコピコ ズンズン ピョンピョン のびろ。」


 シャルマントはどんどんとたのしくなり、自分じぶんでもづかないうちに、両手りょうてあかいずきんのうえせ、そのみみのようにてながら、ぴょんぴょんとねていたのです。

 たのしさのあまり、ねながらいえまでかえってました。


 いえはい部屋へやなかでずきんをはずすと、ねていたせいかしっかりとむすんでいたリボンがいつのにかほどけ、カチューシャのみみがピンとっているではありませんか。かがみうつ自分じぶん姿すがたにピンとっているカチューシャのみみえます。そして、

(あれっ? ものたちのこえこえない・・・・。あさなのにしずかだ・・・。)

みみってるのに・・・・。)

そんなふうに不思議ふしぎおもいながら、そのちいさなミミを両手りょうてでさわさわとさすりました。



  ああ、しずかだ・・・

  動物どうぶつさんたちもみんな、もうきているはずなのに・・・


 シャルマントを静寂せいじゃくつつんでいます。

 こえてくるのは、台所だいどころ朝食ちょうしょくつくってくれている母親ははおやかなでるおと


   トントントン・・・  (包丁ほうちょうおとかな?)


   コトコトコト・・・  (スープなべおとかな?)


 つぎ瞬間しゅんかん。シャルマントのからはなみだがポロポロとこぼれちてました。


 ゆっくりとじ、なみだをぬぐいます。


 しばらくして、シャルマントはつよにぎった両手りょうてこぶし天井てんじょうかってげ、

「やったー! どうよ、あのクソ魔女まじょめ! わたしはやったわよ!」

出来できるのよ、そう、わたし出来できなの。ざまあみろ『グロルのむらさき魔女まじょ』。」

「あんたなんかのイタズラにはくっしないわ。」

「ついにこえなくしてやったわ~。」


「あ~~、しずかってホントに素敵すてきね~。」

「ホッとしたら、無性むしょうはらってたわ。『ヒェルン・マーダリー』、『グロルのむらさき魔女まじょ』、絶対ぜったいにぶんなぐるんだから。」

たけびにもおおきなこえしました。


 でも、しばらくすると、シャルマントは不安感ふあんかんおそわれます。

(もしかして、もうネズミさんたちとおはなしが出来できなくなっちゃったのかしら。)


 きゅう不安ふあんおぼえたシャルマントは、折角せっかくかえってたのに、ふたたあかいずきんをかぶなおしていえました。


 そして、ちかくののそばまでやってると、両手りょうてあかいずきんのうえせ、そのみみのようにててつぶやきます。


「キケキケピコピコ キクキクピョンピョン キイタラズンズン ハヨノビロ」


 そのあとに、えだまっているハトにかい、

「ねぇハトさん。」

つぶやきました。


 するとどうでしょう、

「おっは~。」

「おお、おっは~。気持きもちいいあさだね~。」

「もう、どっかであさメシってたか~。」

「いや、まだ。」

「そっ、じゃあ一緒いっしょいにこうか。」

「いいね~。どこく?」

ハトたち会話かいわひと会話かいわとしてこえてくるではありませんか。そして、ほかものこえはいっさいこえてはきません。


「うぉぉぉぉぉ~~ やったーーーーー!」


 シャルマントはさけごえげます。


 そのこえおどろいたハトたち一斉いっせいちます。まっていたえだばたいた羽根はねをぶつけ、方向ほうこう交差こうさ身体からだをぶつけ、いっそまあるいさらおおきな丸目まるめにし、くちばしをおおきくひらいてってったのです。


 そんなハトにはおかまいなく、シャルマントはさけつづけています。

「うぉりゃ、やったー! わたしはやったのよ!」

「ついに魔女まじょのイタズラにったわ! どうよ、クソ魔女まじょ!」

「『ヒェルン・マーダリー』なんかにはけないわ!」

「オラオラ、さあつぎはどのもの相手あいてかしら。なんでもいてやるわ。」

 何度なんど何度なんどもガッツポーズをし、むねまえつよこぶしにぎり、地面じめんかってんでいます。


 その地面じめんからかおげると、すこはなれたとおりのわき一匹いっぴきのキツネがあるいています。


 シャルマントはあかいずきんのうえ両手りょうてせて呪文じゅもんとなえました。


「キケキケピコピコ キクキクピョンピョン

    キイタラズンズン ハヨノビロ、 ねぇキツネさん。」


「・・・・・・・・。」

 なにこえてきません。

 シャルマントはもっと集中しゅうちゅうしようと、呪文じゅもんとなえました。


「ねぇキツネさん。」


 するとどうでしょう、ぴょこぴょこと軽快けいかいあるいていたキツネがピタッとまり、まわりを警戒けいかいするように見回みまわしたのです。

 シャルマントははなけます。


「ねぇキツネさん、どこへくの?」


 するとキツネは先程さきほどよりもはやくびって、まわりを見回みまわし、ひくくして警戒けいかい体勢たいせいになりました。そして、まわりにはなにも、だれらず、とおくにシャルマントだけをつけると、くびるのをめ、シャルマントをじっと見据みすえます。

 同様どうようにシャルマントもキツネをじっとています。


 おたがいに見合みあわせ、微動びどうだにしません。

 シャルマントはキツネとおはなしがしたくて、そこからこえてくるこえをぜったいにのがさないようにと。キツネはキツネで何処どこからともなくこえてくるこえもとさぐろうとして、見渡みわたしてはたものの、だれらず、唯一ゆいいつえているのがどうても人間にんげんだとこと混乱こんらんし、最上級さいじょうきゅう警戒けいかいをしてているのです。


 しばらくは、どちらも身動みうごひとつせず、じっとつめったままうごきません。


 そしてシャルマントはもう一度いちどはなけます。


「ねぇキツネさん、どこへくの?」


 するとどうでしょう、キツネはとてもおどろいて、おおきく見開みひらき、くちおおきくけ、一瞬いっしゅんうしろへとねたとおもったら、地面じめんくやいなやシャルマントからげるようはしってってしまいました。



 そこには、すこまるめ、あかいずきんのうえ両手りょうてをかざし、キツネがったあとをぼーっとながめているシャルマントだけがのこされていました。

準備が整いました。


呪いのようなカチューシャを何とかねじ伏せ、自分の意のままにできるようになったシャルマントは、再び森の中のおばあさんの家へと向かいます。


そう、これが本当の目的だったのですから。

次のお話からが、赤いずきんちゃんの冒険になるのです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ