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転生したら推しが魔王様になってた件~①三千年の時を超えて会いに行きます!  作者: 銀文鳥


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第七章(5):ルシアンの仕掛けた絆の試練


聖裁騎士団の妨害もあったけれど、カスパール君のおかげで、私たちは、宝珠覚醒の旅を続けることができた。


カスパール君が破壊行為をしているのかどうかは、私たちには分からない。もしそうだったとしても、彼にはきっとそうするだけの理由があるはずだ。

その真相はまだ不明だが、それでも彼が私たちの仲間であるという確信は、もう揺るがない。



私、セラフィナの赤い宝珠が聖剣ヴォーパルブレードに宿り、その力が完全に覚醒し、アルドロンさんの緑の宝珠と私の赤い宝珠が放つ光は、まるで導きの糸のように、私たちを次の目的地へと誘う。


次は、ローゼリアちゃんの宝珠が覚醒する番だ。





宝珠の光が示す次の場所は、かつてローゼリアちゃんが身を置いた、光溢れる花咲く庭園の跡地だった。


今は荒れ果て、かつての輝きはないものの、そこには確かに、彼女の温かい思い出と、人々の心を癒やした慈愛の力が深く刻まれているのを感じた。



「ここが……ローゼリアの縁の地か……」



アルドロンさんが感慨深げに呟いた。

彼の杖の先の緑の宝珠も、この場所の穏やかな気配に呼応するように、優しく輝いている。


しかし、庭園の奥に進むにつれて、妙な違和感を覚えた。空気は澄んでいるはずなのに、どこか視界が歪み、空間そのものがねじれているような感覚に襲われる。



「これは……結界……? でも、敵の仕業とは違うような……」



私が聖剣に収まった赤い宝珠を翳すと、宝珠から放たれる光が、空間の歪みに吸い込まれていくように見えた。

その歪みは、私たちが前世で経験したヴェクスの魔力とは異なり、もっと根源的な、世界の法則そのものに触れるような不穏さを感じさせた。



「これは……ルシアンの魔力だ……! しかし、なぜこのような試練を……」



アルドロンさんが、空間に張り巡らされた複雑な術式を解析し、驚きに目を見開いた。


どうやら、この歪みはルシアン様が宝珠の覚醒のために、この地に仕掛けた「試練」らしい。

だが、それは勇者たちの力を試すだけでなく、内面の弱さを暴き出し、精神的な混乱を引き起こすような性質を持っていた。



突然、あたりを花びらが舞い始めたかと思うと、その花びらが鋭い刃となって私たちに襲いかかってきた。


物理的な攻撃ではないのに、心臓を抉られるような痛みが走る。



「くっ……!これは……私たちの心の迷いを……!」

アルドロンさんが苦悶の表情を浮かべる。

彼の杖から放たれる魔法も、空間の歪みに吸収され、威力が半減してしまう。


私の聖剣も、その刃が花びらに触れるたびに、心が千々に乱れるような感覚に陥り、剣筋が鈍っていく。



「私……私は、どうしたらいいの……っ」

ローゼリアちゃんは、その場に膝をつき、苦しそうにうずくまった。

彼女が大切に握りしめている桃色の宝珠は、覚醒の兆しを見せているものの、この試練によってその力が抑え込まれているようだった。


彼女の心に、かつての無力感や、大切な人々を救えなかった悲しみが、幻覚となって押し寄せていたのだ。





***


その頃……


庭園の端にある、古びた石の鳥居の陰……カスパールは、ローゼリアの宝珠覚醒の様子を見に来ていた。



(チッ……ルシアン様、また面倒な真似を……)



彼は、勇者たちがルシアンの試練に苦しめられている様子を冷静に観察していた。


ルシアンが仕掛けた試練の真意を理解しようと、彼は自身の禁忌の知識を巡らせる。


そして、この試練が、四人の勇者が協力しなければ解けないように仕組まれていることを、ルシアンの魔力の残滓から読み取った。



(馬鹿げてる……ルシアン様、俺が素直に協力するとでも思ったのか……?ったく、面倒なことばかりさせやがって……)



カスパールは内心で毒づく。


彼は、ルシアンが自分の拗らせた性格を予想し、あえてこのような試練を仕掛けたことを理解した。


宝珠の導きに従い、ルシアンの元へ辿り着くためには、ローゼリアの宝珠の覚醒は不可欠だ。


そして、この試練は、四人の勇者が力を合わせなければ乗り越えられない。





勇者たちは苦しんでいた。


ローゼリアは幻覚に囚われ、アルドロンとセラフィナも、この精神的な攻撃には手も足も出なかった。


彼らが限界に達しそうになった時、カスパールの心に、ある感情がよぎった。



それは、ルシアンへの揺るぎない忠誠心と、そして……ほんのわずかな、仲間への、いや、ローゼリアへの、見捨てられないという思いだった。





その時、庭園の入り口から、新たな影が現れた。


それは、きらびやかな鎧を身につけた騎士団と、彼らを率いる厳めしい騎士団長……「正義」が顔に書いてあるような例の男だった。


彼らは、この世界の秩序を護る、ガイアに忠実な「聖裁騎士団」だ。



「これ以上、世界の秩序を乱すは許さん!創造神ガイア様の命により、勇者たちを捕縛する!」


騎士団長の声が響き渡る。


彼らには、ルシアンの仕掛けた試練の影響がないため、勇者たちに攻撃を仕掛ける。


物理的な攻撃と、精神的な攻撃の二重苦に、三人はさらに追い詰められる。



(チッ……ガイアの奴め、また余計なことを……!このままでは、ローゼリアの覚醒が……!)



カスパールは苛立ちを募らせた。


ガイアが勇者たちの旅を妨害することを予想はしていたが、まさかこのタイミングで、しかもルシアンの試練の最中に現れるとは。



「チッ……仕方ねぇ。後悔させてやる……!」



彼は悪態をつきながらも、ついに鳥居の陰から姿を現し、庭園の中央へと足を踏み出した。


***





ローゼリアちゃんが、辛うじて顔を上げた。


アルドロンさんと私も、動きを止める。


やっぱり来てくれたんだね。


私たち三人は、カスパール君が絶対に来てくれると信じてたから。こんな状況でも、私たちは顔を見合わせて笑ってしまった。



カスパール君は、少し顔を赤らめながら呆れたように言った。


「お前ら! なに、ニヤついてんだよ!」


「いつまでボサッとしてやがる!これは四人で協力しねぇとクリアできないように設定されてんだよ!」


そう言い放つと、私たちと聖裁騎士団の間に入り、自らの従属魔物たちを騎士団に向けて放った。



彼の紫の宝珠はまだ珠のままだったが、その手から漆黒の魔法が迸る。虚空から現れた鋭い氷の槍が、騎士団の兵士たちを容赦なく打ち払っていく。



同時に、彼は私たちを苦しめるルシアン様の試練の術式を解析し、その弱点を突き始めた。

彼の禁忌の知識は、ルシアン様の仕掛けた試練の裏側を暴き出す。



彼は、私たち勇者に具体的な指示を出し始めた。



「アルドロン!その幻覚の核は、精神の『迷い』を糧にしている!お前の緑の宝珠で、己の知識とルシアン様の教えを信じろ!」


「セラフィナ!お前の聖剣は、魂の『情熱』を宿している!その情熱を歪みにぶつけろ!物理的な攻撃じゃない!」


そして、ローゼリアちゃんへ。


「ローゼリア! テメェの宝珠は、『慈愛』の力を宿している!その光で、心の闇を払い除けろ!過去の悲しみに囚われるな!」



覚醒の光、そして新たな一歩。



カスパール君の指示に従い、私たち三人はそれぞれの宝珠の力を、新たな意識で使い始めた。


アルドロンさんは、ルシアン様から授かった知識を信じ、精神の迷いを振り払う。


私の聖剣は、ルシアン様への情熱を燃やす。


そして、ローゼリアちゃんは、カスパール君の言葉と、仲間たちの存在に励まされ、自らの持つ慈愛の力で、心の闇を浄化し始め、周囲を護る光の壁を生み出した。



カスパール君は、自らの禁忌の魔法で、ルシアン様の試練の術式に干渉し、私たち勇者たちの宝珠の共鳴を促す。


彼の紫の宝珠もまた、私たち三人の宝珠の光と共鳴し、かつてないほど強く脈動している。





聖裁騎士団は、カスパール君の魔物と魔法、そして私たち勇者たちの反撃に押され、次第に後退していく。



そして、ローゼリアちゃんが大切に握りしめていた桃色の宝珠が、眩しさとともに、純粋な愛のエネルギーとなって輝きを増す。


珠の表面が柔らかく振動し、そして、まるでローゼリアちゃんの首へと導かれるように、その形をゆっくりと変え始めた。


珠には小さな輪が生まれ、ローゼリアちゃんが転生前からずっと肌身離さず身に着けていたシンプルなチェーンネックレスに、自然と収まった。


桃色の宝珠が、ペンダントとして、ローゼリアちゃんの胸元にポロン、と、愛おしそうに収まった。


それは、ルシアン様がかつて意図した、大僧侶ローゼリアのための宝珠の形。


宝珠がペンダントとして完全に装備されたのだ。



「っ……!この感覚……!温かい……!」



ローゼリアちゃんが、驚きと喜びに満ちた声で呟いた。


彼女の瞳の奥に、かつての慈愛の輝きが、戻ったのが分かる。



「ローゼリアちゃん! 宝珠が……! ペンダントに……!」


私が感動で声を震わせた。私の赤い宝珠も、アルドロンさんの緑の宝珠も、彼女の覚醒を喜ぶかのように強く光っている。



「これで、私たち三人の宝珠が覚醒したな。ルシアンの意図した通りに……」



アルドロンさんが、安堵と確信の表情で頷いた。


試練が解除され、庭園を覆っていた歪みが消え去ると、聖裁騎士団は、状況不利と見て撤退していった。



カスパール君は疲れたようにため息をついた。



「チッ……全く、面倒なヤツだぜ、ルシアン様は」


「どこまで俺を操るつもりだ……!」



彼は悪態をつきながらも、ゆっくりと私たちの方へ向き直る。

彼の紫の宝珠が、まるで彼の決意に応えるかのように、より強く輝いている。



アルドロンさんが言う。


「お前は、ルシアンが宝珠に仕掛けた真の意図を理解しているはずだ!我々の宝珠が覚醒した今、お前の宝珠も覚醒の兆しを見せている。だが、それは四つの宝珠が共鳴し、四人の勇者が一つになることでしか、完全な力を発揮しない。ルシアンは、我々の絆を強固にするために、この試練を仕掛けた。そして、お前が必ずや、我々と共に行動せざるを得ないように、全てを見越していたのだ!」



「……仕方ねぇ。あんたらが足を引っ張らないように、俺が見張っててやる。ただし、俺は俺のやり方でルシアン様を探す。邪魔はさせねぇ」



カスパール君はそう言い放ち、従属魔物たちを連れて、私たちのすぐ傍に並び立った。彼の言葉は相変わらず棘があるが、その瞳には、かつてのような完全な拒絶の色はなかった。



「カスパール君……!」



ローゼリアちゃんが、涙を浮かべて微笑んだ。


アルドロンさんも、静かに頷いている。


ルシアン様が仕掛けた試練は、彼を勇者たちの元へと引き戻した。



四人の勇者、そして四つの宝珠が、今、再び一つの場所に集まった。


ルシアン様への道は、まだ遠い。


だが、四人の勇者の絆が、ここから始まるのだ。

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