第八章(1):異世界からの告白
ローゼリアちゃんの宝珠が覚醒し、カスパール君(拗らせてる)も渋々ながら私たちの仲間となった今、いよいよルシアン様の元へと向かう四人での本格的な旅が始まる。
しかし、私は胸の奥で、大きな秘密を抱えていた。
私だけが、皆とは違う。
その秘密を抱えたままでは、本当の意味で彼らと心を一つにできない。そう感じていた。
特に、ルシアン様が「絆の試練」を仕掛けてまで、私たち四人の絆を試したことを知った今、この秘密を打ち明けるべき時だと確信していた。
そして、カスパール君が過去に囚われ、人間に不信感を抱いているのを見るにつけ、私が「勇者セラフィナ」として完璧でいようとすること自体が、彼と同じように心を閉ざしていることなのではないか、という葛藤が生まれていたのだ。
旅の準備が整い、いよいよ出発しようとする直前。
私は、アルドロンさん、ローゼリアちゃん、カスパール君の三人を前に、少し……いや、かなり緊張しながら、切り出した。
「あのさ……皆に、言っておかなきゃいけない、すごく大事なことがあるんだ。」
「なんだ、セラフィナ。急に改まって」
アルドロンさんが、不思議そうに私を見ている。
彼の表情は、賢者らしく、真意を探ろうとしているかのようだ。
ローゼリアちゃんも、心配そうな顔で首を傾げている。
「どうしたの、セラフィナちゃん? なにか、私たちに言いにくいことでもあるの……? それとも、旅について何か心配なことでもあるの?」
カスパール君は、相変わらずひねくれた表情。
「フン……今更、一体なんだってんだ。面倒なことじゃねぇだろうな。早く出発したいんだが。」
彼の言葉には、旅への焦燥と、少しの苛立ちが滲んでいる。
私は、ゴクリと唾を飲み込み、深呼吸した。よし、言うぞ! 覚悟を決めるんだ、私!
「あのね……実は……私、みんなと違って、この世界の人じゃないんだ。」
「……は?」
三人が、まるで示し合わせたかのように、同時に間の抜けた声を上げた。
その声は、驚きと、そして「何を言ってるんだ?」という困惑に満ちている。
「えっとね……私の元の世界は、日本っていう国なんだ。そこで、私は佐倉花っていう、ごく普通の日本の女子高生だったんだ。」
「……ニホンノ……ジョシコウセイ……?」
アルドロンさんが、完全に理解不能といった顔で呟く。
彼の賢者の頭脳が、私の言葉を処理しきれていないのが分かる。
ローゼリアちゃんは、海のような青い瞳を、最大限に丸くしている。
「ニホン……? ジョシコウセイ……? セラフィナちゃん……何を言っているの……? 」
彼女の声は、不安げに震えている。
カスパール君は、私の言葉を聞いて、明らかに私を馬鹿にしたような、そして軽蔑するような表情を浮かべた。
「はぁ? なんだそりゃ。馬鹿馬鹿しいにも程があるぞ。あんた、頭でも打ったか? それとも、長い時が流れて、前世の記憶が混乱でもしてんのか?」
彼は、私から、物理的に一歩距離を取ろうとしている。信じられないものを見る目だ。
「違う違う! 違うんだってば! 頭なんて打ってないし、記憶も混乱してない! 私、本当に、元の世界から、この異世界に、セラフィナとして転生したんだ!」
私は、必死に、身振り手振りを交えて説明する。
異世界転生について、私が知っている、あのオタク知識をフル活用して。
元の世界のこと。
日本のこと。
そして……!
そして……一番重要なこと。
私の人生の、そしてこの物語の、核となる事実。
「それでね……私の元の世界で、ルシアン様はね……」
私は、ここを言うのが、少し……いや、かなり照れくさかったけれど、心に溢れる、抑えきれない情熱を込めて告白した。
「ルシアン様はね……私が、全ての情熱を、魂を捧げていた……私の、『推し』だったんだ!」
「……オシ……?」
再び、三人が、今度は完全に理解不能な言葉を聞いたかのように、フリーズした。
沈黙。
そして、彼らの顔には、疑問符が浮かんでいるのが見える。
「お、お、オシって……なに?セラフィナちゃん……? 食べ物……? それとも……呪文……?」
ローゼリアちゃんが、恐る恐る、本当に恐る恐る、尋ねてきた。
ローゼリアちゃん、可愛い!
本当に天使!
でも、推しは食べ物じゃないよ!
呪文でもない!




