表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
26/63

第七章(3):カスパールの沈黙と別離


カスパール君の姿が闇に消えてから数日が経った。


私たちは、彼が残した魔力の痕跡を辿り続けていたが、その道はますます複雑になり、私たちの困惑は深まるばかりだった。


世界中あちこちで派手な破壊行動は更に頻繁に起こっており、さすがの創造神ガイア様も、修復が追い付かず、いらだち始めているという話も耳にした。


私たちの道中も、魔物の残骸は散見されるものの、幸いにして人々の直接的な被害は相変わらずなかった。


彼が意図的に村を襲ったという明確な証拠は掴めず、彼の行動は依然として謎に包まれていた。





夕暮れ時、私たちは深い森の中で、カスパール君の魔力を強く感じ取った。

彼の紫色の宝珠が放つ微かな光が、木々の間から漏れ、私たちを誘う。

しかし、その光は、かつての友を求めるかのように優しくも、同時に、決して近寄らせない分厚い壁を感じさせた。



アルドロンさんが、慎重に言葉を選んで声をかけた。

「カスパール! 無事だったか。我々は君を探していた。君の真意を……」



木陰から現れたカスパール君は、私たちに背を向けたまま、何も言わない。

彼の肩には、相変わらずピンクのウサギが乗っており、その小さな体が、彼に寄り添うように揺れている。


「カスパール君……どうして、私たちと一緒に行動してくれないの……?」


ローゼリアちゃんが、悲しそうに、そして少しだけ懇願するように尋ねた。

彼女の桃色の宝珠が、カスパールの背中に向かって、温かい光を投げかける。



すると、カスパール君がゆっくりと振り返った。彼の紫色の瞳は、冷たく、そしてどこか遠くを見つめているようだった。



「フン……。俺は、あんたらとは目的が違う。馴れ合うつもりはねぇ」



彼の言葉は突き放すように冷たい。

しかし、彼の視線がローゼリアちゃんの顔をかすめた時、その瞳の奥に、ほんの一瞬だけ、複雑な感情の揺らぎが見えたような気がした。


「でも、ルシアン様は私たちに宝珠を託してくれたんだ。一緒に力を合わせれば、きっと……」

私が説得を試みる。



「余計なお世話だ。俺は俺のやり方でやる。あんたらは、あんたらでさっさと宝珠を覚醒させろ」

彼はそう言い放つと、再び私たちに背を向けた。


その言葉は、彼が私たちとの協力を拒否しているだけでなく、ルシアン様が私たちに託した宝珠の導きとは異なる、彼自身の道を模索していることを示唆していた。



「カスパール! 待て!」

アルドロンさんが、その名を呼んだが、カスパール君は立ち止まらない。

彼は、一瞬で黒い風のように、森の奥深くへと消えていった。

彼の紫の宝珠の光は、あっという間に闇に溶け込んでしまった。





カスパール君が去った後、再び沈黙が私たちを包んだ。


彼の言葉は、私たちの中に残っていた、彼へのわずかな希望を打ち砕くものだった。



「やはり……カスパールは、我々とは道を違えたか……」

アルドロンさんが、悲しげに呟いた。

彼の賢者の杖が、力なく地面に打ち付けられる。



「どうして……カスパール君は、あんなことを言うのかしら……」

ローゼリアちゃんが、目に涙を浮かべ、今にも零れ落ちそうだった。

彼女の桃色の宝珠は、その深い悲しみに呼応するかのように、微かに輝きを失ったように見えた。


(彼には、私たちにはまだ理解できない、もっと大きな目的があるのだろうか?)



「でも……私は、カスパール君を信じるわ」

ローゼリアちゃんが、震える声で言った。

「彼は、きっと、悪い人じゃないわ。私を助けてくれた時のうさちゃんの光も……あの時、カスパール君がくれた安心感も、嘘じゃなかった」


アルドロンさんは、ローゼリアちゃんの言葉に、ゆっくりと顔を上げた。その瞳には、再び確かな決意の光が宿っていた。

「……そうだな。彼の言葉の真意は掴めぬが、彼がルシアンの行方を追っていることだけは確かだ。そして、彼もまた、ルシアンが託した宝珠を持つ者。我々は、我々の信じる道を往くのみだ」



私たちは、カスパール君の真意を完全に理解することはできなかった。

しかし、彼がルシアン様を探しているという共通の目的がある限り、いつか、再び道を交える日が来るだろう。



私たちの旅は、ルシアン様の行方を追うだけでなく、カスパール君という謎多き魔導士の真意を探る、より複雑なものへと変化していた。

彼は、果たして私たちにとって敵なのか、味方なのか。

彼の行動が、この先、私たちに何をもたらすのか。


ルシアン様……あなたは、このことを全て見越していたのですか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ