第十五話:人妖大戦
かつて、魑魅魍魎を率いた不死身のシユウという強敵を前に、人と妖怪は協力し、黄龍によってシユウはついに倒され、五体は分断されたのちに封じられた。
力を使い果たした黄龍は眠りにつき、四龍が同士討ちで滅びたことで、覇者であった龍の時代が終わり、人は栄えた。
しかし、干ばつや水害に悩まされ、お互いに共通の敵がいなくなったことで、とうとうつかの間の平和は終わり、人と妖怪の戦いが勃発する。
この大陸の中央に位置する中原は、災害がなく豊穣が約束された、恵まれし土地だった。その中原をめぐっての争いが人と妖怪の間で長らく続き、疲弊した人々はついに大きな戦いを仕掛けた。
それが「人妖大戦」である。
東西に分かれたこの戦争により、両者の盟主として表立って戦った二者は、四龍をなぞるように相打ちで倒れた。
人妖は、ともにおびただしい死傷者を出し、人の主要国であるタイヤンは西に、妖怪の領域であるタイインは東に後退するという、痛み分けの結果となった。
それでも、中原をめぐる戦いは、ときには人同士、妖怪同士でも起き続けている。やられたらやり返す、その連鎖は止まらなかった。
東西南北の守護者だった四龍の代わりに、四神と呼ばれる者たちが、シユウの封印の守護者となった。
東は青龍、西は白虎、南は朱雀、北は玄武である。
四神は封印術を駆使し、争いを鎮めて暴れる者たちを封印した。
しかし、時が経って廃れ、継承する者はいなくなりつつある。
陰陽の気を高度に均衡させながら扱える者は稀で、いたとしても大きな責任と危険が伴う封印術師を選ぼうとはしない。
継承に血筋は問われないが、乱用を防ぐために一子相伝ならぬ、一者相伝だということも、それに拍車をかけた。
四龍はいなくなったが、生まれ変わるようにその力を持つ者が出現するようになった。それは人であっても妖怪であっても関係がなく、力を発現させることがある。
龍の強大な力は権力の象徴になるほどであり、その力を持った者は否応なく戦いに巻き込まれ、力に溺れたり利用するために狙われたりして、強大な力の代償かのように、短命に終わるとささやかれるようになった。
北の地には四神の一人、玄武がいるという。
四神の中でも最上位であり、陰の神でもある。
白龍であるセイランの暴走は、怒りで急激に膨らんだ陰の気によるもので、暴走を防ぐためには、より陰の気を制御するすべを学ばなければいけない。
その教えを乞うために、険しい山々と極寒に守られている北へ、向かうことになった。ユウロンは冥界という言葉を呟いたが、何を秘めているのだろうか。




