↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラチサ  作者: 藤ノスエ
PR
5/33

5. 小学6年 秋-1 抜毛

 実はわたしは中学入学してから、心療内科にかかっている。

 きっかけは抜毛。

 小学6年の9月くらいから始まった、と思う。なんでかはわからないけど、引っ張って抜ける瞬間のプチッという感覚が心地よかった。

 心配事や不安が髪と共にスッと抜けていく感じがよかった…と思う。

 初めは母も気が付かなかったようだ。対面キッチンで料理の最中に、テーブルの椅子に座って、テレビを見ている私を見て、地肌がよく見えるのに気づいた。それで毛を抜いてるのかなぁと観察して、抜いているのがわかり、なんで抜いてるか聞いてきた。

『うーん、なんとなく?』

なんて答えた。

 母は、今は髪が結えるから、なんとか隠せるけど、これ以上進むと、まわりの人が気づくよ。それか、もう気づいている人もいるかもよ。と言った。

 そうは言ってもついついやっちゃう。気づくとまわりに毛がいっぱいだったりする。だからベッドと壁の隙間に落としたりしちゃう。それで、それが見つかって怒られる。


 それで、まあ、当然、父も気づき皮膚科に連れて行かれた。

 会社の同僚が教えてくれたとか言ってね。

 クリニックは大きくて古そうだったけど、患者さんはいっぱい待ってた。事前に母が問い合わせたら、予約はないのでいつでもいいと言われたが、そういう所ってすごく待つよね。

 でも、コミックスがいっぱい置いてあって、読んでたから苦でもなかったけど。この時魔法使いだって気づいてたら、時間を操れたかもなあ。

 医師はおじいちゃんで、すっごくハキハキしてて、声が大きい。

『育毛剤ね、出すからぁ、すり込むようにね。自分でできるかなぁ?ママにやってもらってもいいからね。髪の毛引っ張っちゃうと抜けちゃうからね。やっちゃダメだよ』

と小さい子に言うみたいに言う。

 それから

『薬なくなったら来てね。それと、ママねぇ、心療内科紹介するからね、そっちも行ってみたほうがいいよ』

と言った。

 シンリョウナイカってなんだ?

 呪文みたいに聞こえた。


 会計待ちの時、母に聞いたら、

『髪の毛抜いちゃうような人が行く所』

と言った。うっすら笑っているように見えて、なんとなく、あまり行かないほうがいいような所なのかなと思った。母の微笑が、仕方ない微笑に思えた。笑うしかないな、みたいな…


 電話で予約してから行ってくださいと会計の時言われて、父が電話したら、16歳以上だと言われたとか。

 仕方なく翌日、母がまた皮膚科に行くと、医師は

『うっかりしてたぁ、子どもみないのかぁ。いつもあそこにお願いしてたからさぁ。大人ばっかりだったっけ?』

と言われても…

『あのさぁ、キサラギクリニック知ってる?ムツキ市の。僕も知り合いってわけじゃないんだけど、最近よく聞くからさぁ。どうかなぁ。聞いてみてくれる?事情話せば、それ持ってっても大丈夫だと思うよ』

と前のクリニック宛ての紹介状をそのまま返された。

 『もしダメだったら、小児科聞いてみて、それくらいの情報は持ってると思うよ、だってさ』

と母は医師の口マネをした。すごく似過ぎて笑える。


ムツキ市駅の駅前ビルの4階にクリニックはあった。

 シーンとしていて、クラシック音楽のBGMが流れていて、待合室はちょっと薄暗い。受付の人もすごくゆっくり静かな口調で、別クリニックの紹介状を出しても、優しい。


 医師は3人くらいいるみたいだったけど、私をみてくれたのは、やっぱりおじいちゃん。

母が事情を話すと

『大丈夫ですよ、気にしないでね』と言い、

『いろいろあるよね、生きてるとね』と私に言った。

 思い当たることを聞かれて、母がいろいろ答えてたけど、ちょっと違う感じだなと聞いてた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。