32. 中学2年 10月 雑談
志賀先生との面談と小倉先生とのカウンセリングの日は爽涼を休むことにした。
小倉先生とは相談センターで会う。相談センターは爽涼の2階だ。カウンターでぐるっと囲まれた職員室みたいなところで、他に待合室がある。奥に相談ルームがいくつかある。
母は中学の3人のカウンセラーのうちの1人で広瀬先生が担当だ。広瀬先生はカンナ小も担当している。
毎週木曜日はカウンセラーは相談センター勤務だそうで、面談やカウンセリングをしている。学校でもできるけど、相談センターを希望した。
カウンセリングは月1回で、45分間だ。
小倉先生は小学校の頃から顔見知りなので、緊張はしなかった。
9月の初回は趣味の話とか、先生方の“悪行”の話をした。“暴言書き込み”の平野先生のことは、以前、母から聞いて知っていたので
「今年度はどう?」
どうと聞かれても、会ってないし、普段のプリントや夏休みの宿題もやってないから、接点がない。
「横本先生は?どう?」
「横本先生は国語だから、教わってないんです」
「あっ、そうだね、志賀先生だもんね」
夏休みの宿題を持って行った時のことを話した。
「印象変わった?」
「うーん…心配してくれてるのかなぁって感じ?」
「なるほどね」
小倉先生はニコニコしながら聞いてくれる。ペンとバインダーを持ってはいるが、書いたりしていない。
10月になったけど、あんまり話すことない感じ。
「爽涼はどう?だいたい、一月通ったけど」
「まあまあですかね」
ほぼほぼ行けてる。朝、どうしても起きれなくて、休んじゃうこともあるけどね。
「森さんと通ってるの?」
「いや、別々です」
タキちゃんが歩ってると言ったら驚いていた。1回だけ、帰りに歩ったけど、かなり疲れた。毎日は無理だ。たまにはいいけど、朝は無理だな。
それにタキちゃんは、休みも多いし、帰りにムツキ市に行くことが多い。ムツキ市にあるライブハウスに行くらしい。
詳しくは知らないけど、さっつぁんや他の3年生によると、ライブハウスと言うより、地下アイドルみたいなこととらしい。ブリブリファッションはそのためで、それ以外の時は制服だ。
「森さんが?アイドルやってるの?」
小倉先生がけっこう驚き、それにわたしもびっくりしたけど、追っかけてるほうだと言うと、ホッとしたような表情だ。だけど、追っかけもどうなの? まだ中学生だしね。
今日もペンとバインダーを持ってるけど、書いていない。ただの雑談だから、記録しておくほどじゃないのかな。
母に話したら
「広瀬先生もそうだよ。後で書くんじゃない?」
「えーっ?忘れちゃいそうじゃん」
「技があるんじゃない?スキルってやつよ。メモってばかりで、こっち見ないのも、なんか感じ悪いしね」
「録音してんのかな」
「どうなんだろうねぇ、でも、それはなさそう。録音するなら、事前に言うと思うよ。隠し録りになちゃうじゃない」
小学校の頃の個人面談の時に担任が、メモを取る時がありますと事前に言われたことが何度かあったとか。そのようなマニュアルがあるのかな。
今のところ雑談だから、これから核心に入っていくのかな。
核心。不登校からの脱却。毎日、学校に通う。
部活に行くためにって割り切っちゃおうかな… あー、無理だって。1年したら引退だよ? また宿題とか同級生でウジウジ考えるのも嫌だ。テストだって受けてないし、提出物も出してない。どうせ斜め線だし…こんなんで、高校行けるのか?
高校行くの? 高校だって中学と同じじゃない? ヒエラルキーあるよ。秋田グループみたいのだって絶対ある。ないところなんてないよ。
どんなすごい進学校だってあるよ。どんなすごい進学校やお嬢様お坊ちゃん学校だってあるよ。些細な差を見つけて、有意に立とうとするの。
そう、有意に立ちたいんだ、あいつらは。いい気持ちになってんの。
“わたしたちは仲の良い学年です”
昨年の音楽祭のとき、1年代表の女子が言ってた。思い出しただけで、イライラする。
どの口が言う。思ってもいないことを口にするな。それとも、本気で言ってたの? わたしの周りは仲良しです、他の人は知らないけどとか? 知らんぷりするな。ウソを吐くな。恥を知れ! 恥を! 自分のコンプレックスを隠してる。見て見ないふりをしてる。自分のために人をおとしめてる。
いい加減にしてよね、っていうわたしも大概ですがね。
人のせいにしているわけじゃない、いや、してる。こんなんで大丈夫なのーっ! わたしって…
カウンセリング受けて、爽涼行って…で、いいのかわからない。




